第23話 自然治癒力

文字数 1,324文字

 思ったより回復が早い。こないだの月曜辺りから、右ヒジが曲がらなくなって、動かそうとすると激痛が。仰向けに寝ても、横になっても痛く、眠るのも難儀した。箸も持てず、よし持ったとしても、口までご飯が届かない。三日経って、いよいよ右腕、棒のようになった。
 マスクを付けるのもおぼつかず、外に出ることもできない。
 何となく座ってネットを見たり、寝床に行ってラジオを聞いたりしていた。
 庭にあるエゴノキの花が満開で、その綺麗さにはずいぶん慰められた。布団の上から、ちょうど窓の向こう、青空の下に白い小さな花々が映えているのが見えて。

 四日目に、家人と一緒に整体へ。
 約一時間、「手あて」を受け、整体師いわく「三、四日経って、良くなったら、また来て下さい」
 うん?
「良くならなかったら、もう来ないでいいんですか?」
「はい、ぼくのやり方と合わなかったということなので…」
 意外な応対に、ちょっと残念に思いながら、
「そうですね、この身体がどういうふうに反応するか、わからないですもんね…」みたいに僕が言う。
 近くのイオンに買い物に行っていた家人が、玄関の前辺りで待っていて、一緒に帰る。
「手ごたえが無かったんだろうね」
「うん。原因がわからないからなあ」
 でも、良くなるまで通院させて、お金を払い続けさせられるより、よほど良心的だと思った。誠実だし、潔い。あの整体師は、できる限りのことをした。これで良くならなかったら、ぼくにはムリです、と言ってくれたのだ。

 帰ってきて、少し横になった。症状は変わらない。だが、「おい、歩けよ」と身体が訴えてきた。天気もいい。無性に歩きたくなった。
 銭湯へ。往復一時間、歩いた。マスクは左手だけでも付けられる。途中、汗がにじむけど、拭けない。まあ、いいや。銭湯でも、身体を湯に浸けるだけ。タオルをしぼれないから、タオルは湯上りに拭くだけ。今まで、身体(局部)を洗わず、湯船に入って来る人を軽蔑していたが。
 ビールを買い、つまみも適当に軽い物を買って帰宅。
 翌日、ヒジが腫れてきた。何もしていなくても、ピキーン!という激痛が突発的に走る。でも、90度くらい、曲がるようになった。腕も、上にあがる。
 二日目、突然やって来る激痛が、鈍痛になる。腫れによる、何か異物がヒジにくっ付いているような異和感も薄くなる。
 そして今日、三日目。右手でマウスが操作できる。カーソルも両手で打てる。右手で、歯も磨け、コップの水も飲める。
 合ったんだな、と思う。

「かめさんは、どうして医者に行かないんですか」みたいに、整体師から訊かれたことがある。
「自分の今までの生き方を考えた時、医者に頼るのは違うな、って。一人一人が自分の身体を何とかする力を持っているはずだし、それをクスリや何かで、何とかされたくないです」みたいに答えた。
 自然に治癒する力、きっとあるんだ、と僕は信じたい。
 べつに、整体がイイのだ、などと、薦めたくて、こんな文章を書いているのではない。一人一人に

治療法があれば、それでいい。自分で選んだその方法で、極端な話たとえ死んでも、ああ自分が今までこうして生きてきた

なんだな、と納得できればいい。
 とまあ、こんな感じで生きています。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み