第226話 某有名女優の不倫のこと

文字数 1,172文字

 思い通りにならないことを、思い通りにしようとするから苦しくなるんだよ。

 みんな、生きてんだ。思い通りにならない自分を抱えて、生きてんだ。

「自分は思い通りに生きてきた」なんて言える奴は、大馬鹿者だ。

 某有名女優が不倫(!)をしたとか。

 視聴率が伸びる、閲覧数が伸びると、ここぞとばかりニュース、ニュース。

 そんな記事を一瞬でも見てしまった自分が恥ずかしくなった。

 恥ついでに、この事件(?)について思うことをざっくばらんに書いてしまえば、何やら「緊急会見」を開いて「離婚したくない」と涙ながらに公に、メディアを利用して訴えた夫君が、情けない、何か卑怯な、ずるいように感じられた。

 当人どうしの問題ではないか。夫婦ふたりの問題ではないか。何マイクを持って、知らない、ハイエナみたいに飛びついてきたメディアの連中に「離婚したくない」などと言っているのか。

 だいたい、好きになり合って一緒に暮らし始めたのだろう。その片方の心が離れてしまったのならば、その暮らしも成り立たなくなって当然だろう。「好きになり合った」から一緒に暮らす。その一方が「好きになれなくなった」から一緒に暮らしたくないと言う。ごく自然な、自然すぎるなりゆきと思われる。

 有名になる、著名になるというのは、一つの商品になるようなものだ。某女優は、そうしてこれからも生きて行くとしたら、その足を引っ張るようなことを夫君はするべきではなかった。

「良い妻でした。良い女です。今回は、ぼくらふたりの問題で、こんなお騒がせして、申し訳ありませんでした。ふたりの問題です。ふたりの関係の問題です。彼女は、良いひとです。どうかこれからも、今回は悪いことをしたかもしれませんが、どうかこれからも、彼女を見守ってやって下さい。どうかよろしくお願いいたします」

 とでも言えばよかったのに。

 だが「お騒がせ」したのはこの夫婦ではない。メディアが喜んで飛びつき、またこんなことを喜んで見る、ワイドショー好きな需要があるから、やたらニュースや記事になってしまったのだ。

 いい大人なら、結婚した相手以外の異性に、心惹かれることがあったって当然だろう。そんな心情がわかるだろう。

 どうでもいいようなことを話題にして、こんなことを書けば、書いてるそばからどうでもいいということを実感する。まったく、ほんとにどうでもいい。

 ただ、どうでもよくないものは… 「人を好きなる」心情だ。有名無名に関わらず、この心情は誰でも持っているだろう。そしてこの心のために、ずっと苦しんだり、楽しんだりして、ずーっと繰り返してきたのがヒトだろう。

 倫理とは、そもそも何なのか。不倫だ何だと騒ぎ立て、それを面白おかしく見る心は何なのか。「それは悪いこと」と決めつける心理は何なのか。

 この点については、とてもとても興味深いと思っている。
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