第60話 出せない手紙

文字数 748文字

 結局、どこに重きを置くか、が
 その人の人生みたいなものを決定づけるのでしょう

 ところが、ソクラテスはこう言っています、
「自分の中に学問はあるのだ」と。

 これは、申し訳ていどの頭をもつぼくには
「答は自分の内にある」と意訳可能か、と。
 もし学問が、答を見つけるための道程だとしたら。
 外にあるものは、内を知るきっかけにすぎないとしたら。

 すると、1000人には1000人の、違った重さがあることになります。
 そして1000人には1000人の、人生みたいなものがあることになります。
 すると、人生とは何ぞや? といった
 何か考え深そうな先人たちの大いなる問いは
 衆に向かうものでなく、個── 自己の内に問われていることになります。

 人生。たいそうな言葉です。
 自生、でいいのではないかと思います。
 何も、おおきくすることはない。それは虚勢とおなじです。
 人の生なんて、あなた、知りゃしませんよ。
 自分の生を、自分なりに、生きれば、いいのではないでしょうか。
 その足で。その根性で。
 誰の生でもありゃしません。

 ところが、その生── よくよく見れば
 何かもっと、おおきなものに包まれているようです。
 それは何とも、形容しがたいもので
 これに気づくには、ある種の何かが必要で
 困ったことに、気づいたからといって
 何がどうなるわけでもなさそうなのです。

 ですが、生き方に
 ものの見方、両極のものに、第三の場所のような
 ふわっとした空間を生み出すものであるようです。
 空き地。手つかずの、雑草だらけのサラ地のような。
 そこは風通しがよく
 ホッとできる 空間みたいです。

 そこから吹き抜ける 風を
 一緒に まどろんで 微笑み合える友達を
 探しているのですが

 もしかしたら
 ひとりで じゅうぶんなのかもしれません
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