第174話 男と女の声がする

文字数 1,307文字

「しかし、オトコはエッチだよな」
「うん。オンナはどうなんだろう」
「どうも、よくわからない。個体差、なんていうと怒られちゃうな、個人差があるように思えるな」
「そりゃそうだろう。しかしオトコの場合、往々にしてエッチだ」
「まあ、たいていはエッチだよな」
「しかしオンナはどうなんだろう」
「経験上、といっても多くないが、ほんとに違う。オトコみたいに、平均的にエッチ、というわけにはいかない。年齢的なもの、それによる身体の変化、エッチな時期的なものと、そうでない時があるように思える。また、ほんとにエッチなひとは終生エッチのようにも思えるし、そうでないひとは、ほんとにそうでない。これはもう、そういうもので、そういうものでしかないと思えるな」

「でも、オトコにはエッチという、ほぼ共通の共通項があるように、オンナにも、オンナであるということで共通するものがある気がするなぁ。精神的というか思考回路的に、現実を見る目、物事の捉え方が、基本的にオトコと違うと思えるんだよなぁ」
「うーん。やっぱりカラダが違う、これはもう決定的、絶対的にそうだよね」
「オトコが社会でエバッてきたのだって、いわゆる『正常位』が原因かもしれない。しかし、その後『四十八手』にまでワザが増えた! 今や、われわれの想像もできない、とんでもないプレイが横行しているのかもしれない…」
「オトコは確かにちんぽを持っていて、オンナには確かに膣がある。どんなに『正常位』といって、オトコがオンナの上からモノにしているように見えても、実際はモノに

んだよね」
「うん、そうだ。入ったということは、包まれたということだ」
「包容されちゃうとシャクだから、あんな運動を始めるのだろうか。オトコのイゲンに関わる、とかいって、あれはオトコのおバカな抵抗なのかしら」
「んなわけないだろう。動物的に、コッケイなことしてるだけだろう」
「客観的に見たら、ほんとにイヤになるね。何やってんだと思う」
「しかしそうやって人類、続いてきたわけだからなぁ」
「うーん。何の話だっけ?」
「オトコはエッチだね、って話さ」
「なんかどうでもよくなってきたな」
「うん、どうでもよくなってきた」

「男にも個体差があるね」
「うん、ある。性欲のない男も、ほんとにある」
「かと思えば、死ぬまで発情してるヤツもいる」
「まあ、みんな、元気ならいいんじゃないか。女も男も、性欲があろうがあるまいが」
「そうだそうだ。よく寝て、よく食べる。性欲は、グリコのおまけみたいなもんでいいんだよ」
「あのおまけが、気になるんだよなぁ」
「何が入っているんだろう!?って?」
「そうそう」
「そういう好奇心が、人間を進化させてきたんだ」
「エッチは好奇心とは違うだろ」
「心であることには変わらんだろ。希望も欲望も、それが発祥の地だろ」
「感情とか本能は、違うんちゃうか」
「それをコントロール、調整することができるのが人間だろう」
「おれ、ずっと人間じゃなかった… 恥ずかしいよ」
「そんなことないよ。きみは場所をわきまえている。恥ずかしさを知っている。恥ずかしさを知らない、恥を知らない人間が、人間でないように思えるよ」
「人間って何だろう」
「うふふふ」
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