第93話 関東滞在記

文字数 1,172文字

 9月29日~10月2日まで。
 お墓参りを済ませ、実家へ。コロナ騒動以来、3年ぶり。
 兄70、少し小さくなった感じがしたが、元気そうだった。
 兄嫁も変わらず、元気そうでほんとうによかった。
 僕のツレアイと、4人で談笑。
 兄に、実存主義って何でしょう、と訊いたら、
「ご存知かもしれませんが、実存主義の最初は、…まぁ、ここにコップがある、と。このコップは、注がれるために作られた、と。モノは、みんな、そうですね。目的をもって、作られている。ところが、人間は、目的がなく、作られた。無目的な存在である、と。それが最初だった…」
 というようなことだった。

 やはり、兄にはまだまだ、いっぱい訊きたいことがある。哲学的な、こういう話ができる人が、僕の身近にはいない。
 ソクラテスから始まって、カント、ヘーゲル、キルケゴール、ニーチェ…
「哲学はそうやって進化してきたのかな。…進化なのかな」
「進化というより、変化でしょうね」
「うんうん」
 おかしな兄弟の会話を尻目に、兄嫁とツレアイは現実的な話?をしていた様子。

 残されている、ダンボールに入った僕の昔の物を整理中、亡父の手帳が出てきた。みんなで、父のことを、笑って懐かしむ。

 …翌日、ホテルを出て、ツレアイは従妹と会いに、僕は一人娘と孫に会いに。
 孫。
 初めての孫。よく、孫は可愛いと聞くが、どうなんだろう、と思いつつ、待ち合わせ。
 娘と会うのも10年ぶりぐらいで、ずいぶん可愛くなっていて、驚いた。
 彼女の家へお邪魔する。孫は、というか、朔太郎ちゃん、可愛かった。
 とにかくニコニコ、よく笑ってくれた。ほんとに笑ってくれた。本気で、可愛いと思った。

 娘が、しっかり、そしてやさしく、やっていてくれることに、こうして書いていても涙ぐんでくる。
 よかった。
 だらしのない父親だったけど、りっぱに育ってくれた。先妻にも、大感謝、ありがとう、ありがとう。

 午後に、ツレアイの姉が副社長?みたいなことをしている会社へ。面接室みたいな所で、3人で何か食べながら談笑。
 なんか僕、面接されてるみたいです、と言ったら、充さんは合格です、と笑われた。

 それから、ツレアイの実家へ。
 2日間、泊まって、翌朝、彼女は先に奈良へ。僕は40年来、つきあいをさせて頂いている元予備校講師と待ち合わせ場所へ。
 やはり3年ぶりぐらいに会ったが、ずいぶんコロナにナイーヴになられていた。とりとめのない、まとまりのない話(僕がひとりで喋っていた)をして、別れる。

 義父母は、相変わらず。母の認知症は、進んでいるように見える。

 しかし、これも天命だ。

 すべては、思い通りにならない。

 人間、ひとりひとり、それぞれの運命を生きるしかない。

 ひとりひとり、うまれ、いきて、しんでいく。

 ひとりひとり、ひとりひとり。

 まったく、いのちは、平等なのだ。
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