第306話 机上に向かえば

文字数 877文字

 科学や医学、機械技術が発展して、生活が便利になるのはいいよ。それは役に立つというものだろう、目に見えて。
 でもそれをするのは学者や医者、エンジニアといった、限られた人たちだ。

 医者なんて、なるまでにお金もかかるし、政治家もお金がないと選挙に出馬さえできない。
 専門的な学問に勤しむにも、学校に行くならお金がかかる。資格を取るにもお金がかかり、その資格があるかないかでその人への待遇さえ違ってしまう。

 不公平というか、おかしな「基準」ができあがっている。
 こういうシステムをつくったのも、限られた人たちで、われわれ「下々の皆さん」はそれに従うしか術がないかのようだ。

「こうなっているから仕方ない」をつくるものは何だろう?
 従順に、はむかうことなく、波風立たぬよう、おとなしく。

 皆さんの生きる世界はこうなっている。これに従うしかないんですよ、下々の皆さん。え? そうしないで、どうするんですか?

 そんな「社会」に向けて、私は何も言えない。せいぜい、自己発信できるところに書くぐらいが関の山だ。

「社会」? に向けて書けば、それこそ机上の空論になりそうだ。それに私は「社会」を知らない。
 知っているのは、職場にいろんな人がいたこと、住む場所にもいろんな人がいること、そんなことぐらいだ。

 でも、この「社会」に対して、いろいろ言いたいことがあるようだ。だってこのような形で、人と接する── 私の書いたものを誰かが読み、誰かの書いたものを私が読む── その接点は今を生きているということ、この世界の中で生きているということ、これが土台の中の土台ではないか。

 この「社会」に向けて発信するのだから、… 私に大切なのはこの「土台」をよく見つめ、考えて、書くことになる。

 こんなモノがある、こうすればラクになる、こうするといいですよ── そういう「役に立つ」記事、ニュース、媒体、それはまったくいい。
 ただ、そればかりに偏りすぎているように思う。

 私にはそういうものが書けないし、自信をもって「社会」に提示できるものは何もない。

 私は自分のことを書くことしかできない。
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