第363話

文字数 576文字

 希望を見つけようとしないこと。燈明を探さぬこと!
 真っ暗闇、漆黒の中に、手探りで、でも足取りはしっかりと… 地に着けて… 生きること!
 これが生なのだとあきらめること。そこから始めること!
 落ちて来るものがある… そこから生じて来るものがある。
 それは至って自然に、何の手も借りずに。
 そいつがほんとうの希望ってやつだ… 策を弄するな。
 自ら欲しがり、それがなきゃやってられないとばかりに捏造、贋造した希望に、自らを貶めるな。
 闇を、そいつが現実だ、生活だ、生きてくことだ… 真っ暗な中を歩くうちに… そいつは生じる、ポッと、軽く、けむりみたいに、そいつは現れる。
 跳ぶな。危険だぞ。地を這え! そこから希望が現れる… 造り物じゃない、ほんとうの。
 偽造された希望に安住するな。自ら作った希望に幻惑されるな。馬鹿舌を愚弄する甘味料だ。
 つくるもんじゃない、つくられるもんじゃない、闇の中、歩いていくうち、水溜まりみたいに、自然発火したみたいに、オアシスみたいに、湧き水みたいに、fountain penみたいに、いきなり眼前に現れるものだ、見えるものだ、否応なく!
 だから闇の中を、望みの有無など考えず、あろうとなかろうと… 自分のするべきことをすること、先のことなど見えぬ、ただ今があるだけ… するべきこと、自分がほんとうと思ったことをすること…!
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