第107話 死があるから生がある

文字数 633文字

 これをもう一度、確認しよう。認識しよう。心に留めよう。
 死がなかったら、大変なことになる。人口の問題ではない。
 死がなかったら、生もない。頭の天辺から足の爪先まで、それは一体なのだ。
 それは循環している。血が巡るように、生命も循環している。
 ここの生命が死ねば──言葉では死というが──あっちの生命が生まれる。
 ()の生命が生まれれば、()の生命が絶える。
 これが自然なのだ。川の流れのように自然なのだ。

 人間がえばりくさっている知識とか、叡智とか、実にたいしたものではない。
 ちっぽけな、手のひらの隅の、ごみのようなものだ。
 それなのに人間は、最上の生物であるかのごとくに振る舞う。
 ちっぽけな地上、この小さな地球上で。
 宇宙の

、循環、生命の

、永遠のような生命の循環。
 この永劫、永遠の循環、この永遠の法則、普遍、一定でありながら定形でなく、定型でありながら一定でないという、この不変なるもの、この法則(というと規範、法規的だが、内実は単なる、それが自然というものだ)から免れられる、逃れられる生命はありえない。
 だれしもが、たれもが、ここにいる虫一匹さえもが── その輪から、はぐれることはできない。
 そうして循環する。まわる。めぐる。
 これが生命、と呼ばれるもの── その実体、実体、というほどの

も持たないのだが──となるだろう。
 生命に向かおう。
 ひとりひとりの、生命に向かおう。
 ひとつひとつの、生命に向かおう。
 すなわち、

に。

に!
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