第299話 死後の問題

文字数 1,374文字

 ここ二、三日、よく考えるようになった。死というものが、より身近に感じられるようになったからだ。
 まわりの死ではない。自分自身の死だ。
 今まで、特に何も考えていなかった。死ねば終わりだ、それまでだ、としか考えてこなかった。
 それが具体的に── 自分の死後、自分はどうされたいのか(・・・・・・・・)を考えるようになった。

 これは今、生きているうちにしか書けない。そして現実的に、最も、残された人(親族)に必要と思える、「言い残すべき言葉」であるように思えてならない。
 これをしっかり書いて、つまり遺言書として自分の死後はこうして欲しい、ということを残しておかないと、どうも落ち着かない。
「勝手にやってくれ」は、あまりに無責任と思う。
 葬式なんか要らないし、墓も維持費がかかる。おそらく私は「孤独死」する確率が高い。すると、かめ家の後継者、私の甥に、役所が私の戸籍などを調べて連絡が行くことになるらしいのだ。

 東京にかめ家の墓はある。しかし、どうも私がその墓に入るのは違和感がある。
 というのも、私と甥はほとんど、全く交流がないし、今後も深い関係になるとは思えない。彼は三人の子どもを養っている真っ最中だし、その奥さんとも私はほとんど喋ったこともない。私がもし、かめ家の墓に入るとしても、その場に立ち会う甥にとって、私は「知らない人」同然であると思える。

 そんなことを想像すると、いや、甥にそんな手間を掛けたくない。が、彼がまじめで、いい人間であることを私は知っている。一応かめ家の人間である私を、彼が引き取ってくれそうなところが、こちらとしてはよけいに苦しい。
 甥の手を煩わせることだけは避けたい。
 ここだけは、きちんと書いておかねばと思う。「身元引受人」として、彼に連絡が行っても、彼はそれを拒否することができる(ネットで調べた)。拒否して欲しいと思う。いや、それはその時の彼の判断だが、そう、今度会う機会があったら言っておこう。遺言書は… 今一緒に暮らしている人か、姪に渡しておくのがいいだろう。いや、嫌がられてしまうか。

 何か、こう書いていると、何を書いてるんじゃと思うが、いや、ほんとに大事なことだと思う。
 よく「宇宙葬」などを望み、死後は宇宙へ行く「予約」をする人もいるらしいが、そうする人の気持ちが初めて分かった気がする。死後、自分は宇宙へ行くのだと思えば、生きていても、夜空なんかを見上げてホッとできるのではないだろうか。
 死後、海へ散骨を望んだ人であれば、ああ死んだ後、オレは海になるのだ、とも思えるだろう。それは、生きるにあたって、かなり励みになるというか、慰めになるのではなかろうか?

 近年は「樹木葬」が流行っているらしい。
 しかし、何としてもお金をかけないものがよい。
 いろいろ調べたが、結局「共同墓地」というのがよさそうだという結論に至っている。
 ほとんど私はお金を残せないであろうから、でも、せめて甥や私のパートナーに負担させたくないから、火葬費やら埋葬費、最低限のお金は残しておこうと思う。調べたところによると、まあ20~30万というところか。手をつけず、しっかり貯金しておこう。

(しかし…「お手間不要、郵送でOK」みたいな葬儀屋もあって、面白かった。「〇〇プラン」とか、旅行か結婚式のプランか、と思えるのもあった。世の中、よくできてるよ)
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