第260話 「過ぎる」について

文字数 938文字

 大体、「考え過ぎる」なんて、無いのだ。

 考えは無限だ。それを「過ぎる」も過ぎないもないのだ。

 それを「過ぎる」などといわせるのは、何の基準もない。

 考えることに、スピード違反も重量オーバーもないのだ。

「考え過ぎ」を「よくない」とする風潮。何も考えない猿の言い訳だね。猿に失礼だが。

 でも、そんな猿が多く、この世を闊歩しているよ。

 申し訳ないが、事実だと思う、これは。

「これはよくない」「あれはいい、それはわるい」そんな価値基準、本人が自分で考えて出したものではない。

 借り物、レンタル古着屋で着飾った、「これがいい」の価値観だよ。

 なぜそれがいいのか、考えもせず、「まわりがそうだから」着るだけの。

 さらに「同調意識」なんて言葉を羽織ってさ。なぜそんな意識が芽生えるのか、考えもせずに。

 そう、たったこれっぽっちのことを考えることも、「考え過ぎ」とするんだろう。一体、じゃあ、何を「考える」というのかね。

「考え過ぎ」の何がよくないのかね。

 考え過ぎはよくないよ、と優しいふりをしてアドバイスっぽく、さも分かったふりして寄り添ってくる人もある。

 偽善者っぽいね。いやらしいね。ほんとに優しい人はね、その人と一緒に考えて、一緒に悩むよ。それが、ほんとうに寄り添うってことだ。

 べつに、それを美化するつもりはない。でも、ただ何も考えていないに等しいような「ワタシは考えています」、「考え過ぎないで! あなたのためですよ」的な人が多い。

 何様のつもりかね。ああ、あなた様のつもりだね。そのあなた自身のことは、あなた、ほんとに考えているのかね。

 ワタシは資格を持っている? 精神鑑定医、泣く子も黙るカウンセラー様ですか。よかったね、おめでとう!

 どうぞ、世のため人のために、ご活躍して下さい。しっぽり稼いで、このおかしな世の中に、化学調味料でごまかしの味を注ぐがいいよ。

 考え過ぎないためのクスリでも処方して、薬剤業界との癒着を大切に、大手を振って歩くがいいよ。

 よくできてる世の中だねえ。

 何だっけ、ああ、「過ぎる」についてか。

 無限に考えられるヒトの性能、生まれた時から備わっている「考える」性能を、わざわざ放棄しなさんな。

 それだけが言いたかった。二、三行で終わる文章だったよ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み