第126話

文字数 352文字

 きみは容器にすぎない。
 まわりから、さまざまな価値観、理由、意義、考え方を埋め込まれ
 四角、三角、丸に(かたど)られた

 きみは容器にすぎない。
 だが、それを受け入れるだけの容器だったのだ。
 要らぬものは取り入れず
 この身体のように
 必要なものだけを取り入れた

 気に入らぬものを、きみは排他した。
 気に入ったものだけを、きみから(こぼ)れぬようにして。
 
 きみは世界を敵に回し
 きみ自身の主《あるじ》である前に
 きみの我欲の(しもべ)になってしまった

 きみは、特別な人間ではない。
 誰だって、きみなのだ。
 きみの我欲は、きみだけのものでなく、
 誰にでも備わっているものだからだ。

 きみの重大なあやまちは
 きみの我欲を滅せず
 ほかの人のそれを滅してしまったことだ。

 独裁者よ
 きみは独りでなかったのに
 きみは独りでなかったのに!
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