第314話 認めよう

文字数 571文字

 区別はいいが、差別はよくない、とする人がいる。言葉遊びだと思う。人間の眼、眼の中に、すでに差別の芽はあるのだ。
 認めよう。
 戦争は人類史からなくなったことがない。それというのも、人間が野蛮な生物であるからだ。残酷で、我欲の強い、人より上に立ちたい権力志向を持っているからだ。果てしない欲望! ここで、という区切り(・・・)もつけられない無限の欲!
 認めよう。

 わたしは弱い。接する相手が不機嫌そうであれば、すぐ、自分はダメな人間だと思う。自分のせいで、と思う。それだけ、我欲が強いのだ。自分の思い通りにしたいのだ。認めよう、「お前はそんな影響を、蚊の口先ほども持っていない」と。

 謙虚であれ、謙虚であれ。形だけでなく、心から、その底から謙虚であれ。
 なかなか、そうなれないことも認めよう。
 認めること、そこから初めて、一歩、すすめる。頭ごなし、一方的な横恋慕、イメージの頭は(うつつ)に打ち砕かれよ。

 そうして組み立てられる。組み換えられる、遺伝子が。〈 遺伝子組み換えでない大豆 〉
 たれのためでもない、個、()だけのために。

 認めよう、この私と称せられるものは、救いようのない大馬鹿者であることを。
 それから、恐いものがなくなったとしたら── そんなお前自身に、おびえて行くがいい。
 気弱な、どうしようもない臆病さに、大馬鹿者の冠をつけ、やっと、歩いてけ。
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