第127話 小学生らしさが抜けきらない
文字数 1,355文字
メインに言われて、ふっと、マルタの凍らせる魔法なら壁登りもできるかなと、宗平は連想した。少し前に想像した、氷による階段なんて考えなくても、靴裏を壁に貼り付けるだけで充分に事足りる……と、ここまで考えた宗平だが、かぶりを振った。魔法を使ったログがないのだから、マルタの魔法は事件とは関係ないんだ。ただ、無関係と承知していても、何となく気になる。それだけ、氷の魔法は使い勝手がいいという証かもしれない。
「今は……チェリーとマルタが戻って来るのを待って、被害者が急に取り立てを厳しくした理由について、情報をもらうのが先決だと思う。あと、当日の雨の降り具合も」
宗平の意見に、ヤーヴェが動いた。
「では、私が調べてきます。失礼してもよろしいですか」
「よろしくお願いします。僕達は三階の現場、侍従長の部屋に移動していると思います」
メインの返事によって、次の行動も決まった。
ヤーヴェが集団を離れ、メインを先頭にしてマギー王女を挟む形で、階下へ向かう。慣れない場所で歩き回るせいか、普段よりも疲れるのが早い感覚が宗平に起きていた。
(さっき、もっと飲み食いしておけばよかったかな。でも、筋肉が張っているのって、栄養を摂れば治るんだっけ? 違うような)
筋肉という単語が頭に浮かんで、自然と今回の事件の毒――エルクサムが連想された。(大きめの硬貨ぐらいって言うから、五百円玉サイズとして、そんな物を他人に飲み込ませるのは大変だろうな)
そういえば、大きさについては聞いていたが、色はまだだったと気付く。
「なあ、メインさん。王女様でもいいんだけど、教えてほしいことがまたできた」
「何かな?」
前を歩く二人ともに振り向いたが、声を発したのはメイン。
「エルクサムの色って何色だろうと思って」
「言われてみれば、教えてなかった。原則的に白だよ。もちろん、染めようと思えば好きな色に変えられるだろうし、粗悪な物は黒ずんだり黄色っぽかったりするそうだ」
「厩舎にあったのは?」
「さあ、そこまでは知らないな。マギー王女はいかがですか」
また歩き出しながらメインに問われ、王女は首を水平方向に振った。
「白だと思いますけれども、気に掛けて見たことがないので」
「動物用だとしたら、経費の節約の意味でも、粗悪な物を買い入れるのでは?」
「確かに支出の引き締めは、父が口を酸っぱくして常日頃から唱えていますが……エルクサムなんてそう頻繁に使う物でもないでしょう。城に納入する業者となれば、それなりの格も求められる訳ですし」
「なるほど。――ということだそうだけれども、満足の行く答だったかい、モリ探偵師?」
「うん。聞きたいことは聞けた。それに、今の王女様の話で、王女様の無実は証明されたんじゃないか?」
「え?」
一番驚いたのは王女自身のようだった。侍従長の部屋の前に到着し、王女は両探偵師の顔を交互に見た。
一方、メインは微笑を浮かべ、宗平の口から次の言葉が出るのを待っている風。またもや試されている予感がした宗平だったが、思い付きを仕舞い込みはしない。
「王女様はエルクサムの色を知らないと言った。犯人なら知っているはずだろ?」
「やはりそういう論法か。モリ探偵師は素直すぎるきらいがある」
つづく
「今は……チェリーとマルタが戻って来るのを待って、被害者が急に取り立てを厳しくした理由について、情報をもらうのが先決だと思う。あと、当日の雨の降り具合も」
宗平の意見に、ヤーヴェが動いた。
「では、私が調べてきます。失礼してもよろしいですか」
「よろしくお願いします。僕達は三階の現場、侍従長の部屋に移動していると思います」
メインの返事によって、次の行動も決まった。
ヤーヴェが集団を離れ、メインを先頭にしてマギー王女を挟む形で、階下へ向かう。慣れない場所で歩き回るせいか、普段よりも疲れるのが早い感覚が宗平に起きていた。
(さっき、もっと飲み食いしておけばよかったかな。でも、筋肉が張っているのって、栄養を摂れば治るんだっけ? 違うような)
筋肉という単語が頭に浮かんで、自然と今回の事件の毒――エルクサムが連想された。(大きめの硬貨ぐらいって言うから、五百円玉サイズとして、そんな物を他人に飲み込ませるのは大変だろうな)
そういえば、大きさについては聞いていたが、色はまだだったと気付く。
「なあ、メインさん。王女様でもいいんだけど、教えてほしいことがまたできた」
「何かな?」
前を歩く二人ともに振り向いたが、声を発したのはメイン。
「エルクサムの色って何色だろうと思って」
「言われてみれば、教えてなかった。原則的に白だよ。もちろん、染めようと思えば好きな色に変えられるだろうし、粗悪な物は黒ずんだり黄色っぽかったりするそうだ」
「厩舎にあったのは?」
「さあ、そこまでは知らないな。マギー王女はいかがですか」
また歩き出しながらメインに問われ、王女は首を水平方向に振った。
「白だと思いますけれども、気に掛けて見たことがないので」
「動物用だとしたら、経費の節約の意味でも、粗悪な物を買い入れるのでは?」
「確かに支出の引き締めは、父が口を酸っぱくして常日頃から唱えていますが……エルクサムなんてそう頻繁に使う物でもないでしょう。城に納入する業者となれば、それなりの格も求められる訳ですし」
「なるほど。――ということだそうだけれども、満足の行く答だったかい、モリ探偵師?」
「うん。聞きたいことは聞けた。それに、今の王女様の話で、王女様の無実は証明されたんじゃないか?」
「え?」
一番驚いたのは王女自身のようだった。侍従長の部屋の前に到着し、王女は両探偵師の顔を交互に見た。
一方、メインは微笑を浮かべ、宗平の口から次の言葉が出るのを待っている風。またもや試されている予感がした宗平だったが、思い付きを仕舞い込みはしない。
「王女様はエルクサムの色を知らないと言った。犯人なら知っているはずだろ?」
「やはりそういう論法か。モリ探偵師は素直すぎるきらいがある」
つづく