第77話 現時点ではバラバラだけど
文字数 1,466文字
「ほらね」
「練習すれば大丈夫。あと、カードの固さもあるし。ちょっと貸して」
カードを見せてもらった。朱美ちゃんのは実用第一って感じのプラスチック製トランプ。使い込まれた雰囲気があるからもっと柔らかくなっていてもいいのに、力を入れてもあんまり反らない。
「だいぶ長いこと使ってなかったからかなあ。家で一度取り出してみたけど、かちかちな手触りだった」
「じゃあ、私のを試してみて。紙でできたカードで、これよりは柔らかいよ」
「……ほー、手触りが少し違うわ。吸い付く感じがしない」
第一印象を述べた朱美ちゃん、早速リフルシャッフルに再チャレンジ。マットの上で飽きほどと同じ手順で進める。
「――だめだー、一枚ずつ落ちていかないっ」
「それは慣れだから。プラスティックと紙との違い。うーん、それじゃこうしよ」
私は左右のカードが交互に重なるところまでをやった。そこからあとを、朱美ちゃんに任せる。
「……おっ」
今度はうまくいった。アーチを作ったカードの重なりが、ほろほろと少しずつ降りていき、きれいに積み上がる。
「気持ちいい~! 何ていうか、ドミノ倒しがうまくいったときみたい」
「でしょ。あとは練習あるのみ」
「このカード使ってもいい?」
「いいよ。ただ、他のみんなに説明するとき、必要になるかもしれないけど」
というわけで、朱美ちゃん以外の腕前も見て回る。
不知火さんは下調べ万全て感じで、ちゃんと紙製のトランプ、しかもマジックで定番のバイシクル柄を持ってきてる。リフルシャッフルもそこそこきれいにできた。
水原さんは、「不知火さんに言われて、紙製がいいのは聞いてたんだけど、買いに行く暇がなくって」と釈明しつつ、プラスチック製のカードで挑戦。これが意外とうまい。流れるように素早くやってのける。ただし、成功率が低いみたいで、五十パーセントくらい? だめなときは全然で、派手にカードを飛び散らかしてしまう。
つちりんは予想通り柄物のキャラクタートランプと、タロットカードに似せた占い用らしきトランプの二組を持って来ていた。後者の方が裏面からでも上下が分からない。
「占い用の物は、大事なんでしょ? マジックで使うと傷んじゃうよ」
占い師は占い用のトランプでカード遊びをすることはないと聞いた覚えがある。マジックもカード遊びに近いだろう。
「家にまだたくさんあるからいいよ。手に馴染んでいるのは、こっちの方だし」
本人がそう言うのであればと、やって見せてもらった。ヒンズーシャッフルの方は占いでやりなれているのかしら、とても早くてきれい。リフルシャッフルは一転してスピードが落ち、頼りない。一枚ずつ交互に重ねようという意識が強すぎて、慎重になってる。
「正確に左右交互にならなくても全然平気だから、もう少し思い切って」
「うん、やってみるよ」
次の陽子ちゃんには、サークルを作る前から何度かカードマジックを見せたことがあって、そのときに陽子ちゃんのカードさばきも見ている。そのときよりも上手になって、そつなくこなし、安心して見ていられた。
「だめだー、うまくいかねえ!」
森君が一番問題ありそう。黄色っぽいトランプを手に、格闘中だ。森君は私達女子から少し離れたところで練習を始めていたのだけれど、近付いてみて分かった。
「それ、ちっさくない?」
使っているトランプのサイズが、二回りぐらい小さい。漫画雑誌の付録らしい。
「小さなトランプの方がいいかと思ったんだ。ほら、手のひらで楽に隠れるし」
つづく
「練習すれば大丈夫。あと、カードの固さもあるし。ちょっと貸して」
カードを見せてもらった。朱美ちゃんのは実用第一って感じのプラスチック製トランプ。使い込まれた雰囲気があるからもっと柔らかくなっていてもいいのに、力を入れてもあんまり反らない。
「だいぶ長いこと使ってなかったからかなあ。家で一度取り出してみたけど、かちかちな手触りだった」
「じゃあ、私のを試してみて。紙でできたカードで、これよりは柔らかいよ」
「……ほー、手触りが少し違うわ。吸い付く感じがしない」
第一印象を述べた朱美ちゃん、早速リフルシャッフルに再チャレンジ。マットの上で飽きほどと同じ手順で進める。
「――だめだー、一枚ずつ落ちていかないっ」
「それは慣れだから。プラスティックと紙との違い。うーん、それじゃこうしよ」
私は左右のカードが交互に重なるところまでをやった。そこからあとを、朱美ちゃんに任せる。
「……おっ」
今度はうまくいった。アーチを作ったカードの重なりが、ほろほろと少しずつ降りていき、きれいに積み上がる。
「気持ちいい~! 何ていうか、ドミノ倒しがうまくいったときみたい」
「でしょ。あとは練習あるのみ」
「このカード使ってもいい?」
「いいよ。ただ、他のみんなに説明するとき、必要になるかもしれないけど」
というわけで、朱美ちゃん以外の腕前も見て回る。
不知火さんは下調べ万全て感じで、ちゃんと紙製のトランプ、しかもマジックで定番のバイシクル柄を持ってきてる。リフルシャッフルもそこそこきれいにできた。
水原さんは、「不知火さんに言われて、紙製がいいのは聞いてたんだけど、買いに行く暇がなくって」と釈明しつつ、プラスチック製のカードで挑戦。これが意外とうまい。流れるように素早くやってのける。ただし、成功率が低いみたいで、五十パーセントくらい? だめなときは全然で、派手にカードを飛び散らかしてしまう。
つちりんは予想通り柄物のキャラクタートランプと、タロットカードに似せた占い用らしきトランプの二組を持って来ていた。後者の方が裏面からでも上下が分からない。
「占い用の物は、大事なんでしょ? マジックで使うと傷んじゃうよ」
占い師は占い用のトランプでカード遊びをすることはないと聞いた覚えがある。マジックもカード遊びに近いだろう。
「家にまだたくさんあるからいいよ。手に馴染んでいるのは、こっちの方だし」
本人がそう言うのであればと、やって見せてもらった。ヒンズーシャッフルの方は占いでやりなれているのかしら、とても早くてきれい。リフルシャッフルは一転してスピードが落ち、頼りない。一枚ずつ交互に重ねようという意識が強すぎて、慎重になってる。
「正確に左右交互にならなくても全然平気だから、もう少し思い切って」
「うん、やってみるよ」
次の陽子ちゃんには、サークルを作る前から何度かカードマジックを見せたことがあって、そのときに陽子ちゃんのカードさばきも見ている。そのときよりも上手になって、そつなくこなし、安心して見ていられた。
「だめだー、うまくいかねえ!」
森君が一番問題ありそう。黄色っぽいトランプを手に、格闘中だ。森君は私達女子から少し離れたところで練習を始めていたのだけれど、近付いてみて分かった。
「それ、ちっさくない?」
使っているトランプのサイズが、二回りぐらい小さい。漫画雑誌の付録らしい。
「小さなトランプの方がいいかと思ったんだ。ほら、手のひらで楽に隠れるし」
つづく