第142話 己が役割を知れ
文字数 1,619文字
舞台は中世の西洋風? 魔法が存在している世界で、森君はモリアーティという名前の人物になっており、年齢も少し上になっている。ひょんなことから探偵師という役割に就き、お城で起きた殺人事件を解くことを課せられる。序盤、森君を導くのは不知火さんそっくりのシーラ。
「不知火だからシーラ? 駄洒落中の駄洒落ですね」
もっと捻ってほしかったのか、不満げに呟いた不知火さんでした。
シーラは空を飛ぶ魔法が使えて、林からお城まで森君と一緒に移動。さらにお城の中を途中まで案内し、メインというもう一人の探偵師と引き合わせる。見た目はシュウさんに似ているらしい。
で。
「何で私がシュウさんの助手なのよ。手品好きっていう設定はいいとして」
思わず聞いた。すると森君、びっくりしたみたいで、目を丸くして、「えっ、不満なのか?」と聞き返してくる。
不満だなんてとんでもない。嬉しいけれども……どうしてそれを森君が夢の中で思い描いたのよ?ってこと。
公平を期するために、森君も助手を選ぶ。その過程を聞いて、みんながやいのやいの言い出した。
「何を考えていたのですか、森君は」
詰問調で不知火さんが真っ先に声を上げた。
「え? え? 俺、何か変なこと言ったか」
「どうしてマルタ――私に似たマルタを選んだのかってことを、まず聞いてるんだよ」
続いて聞いた陽子ちゃん、いつの間にかその場で立ち上がり、腕組みをしている。
「えっと、それは……水を凍らせる魔法を使えるってことで、何かの役に立つんじゃないかなと」
「それだけ? 分かんないなあ」
腕組みを解き、お手上げのポーズを小さくした陽子ちゃん。元の椅子にすとんと腰を下ろした彼女に代わって、再び不知火山さんが口を開く。
「殺人事件という犯罪の捜査に当たるのに、助手の魔法能力が水を凍らせるだなんて、理解できません。犯人と格闘でも行うつもりだったのですか」
「い、いや。一番魔法っぽいかなって思っただけ」
「……」
呆れて仕舞ったのか、不知火さんは口をしばらくぽかんとさせ、そのまま黙ってしまった。
「あ~あ、やっちゃったね。考えるまでもなく、そこは一択だったでしょうが」
今度は朱美ちゃんが森君を責める。森君は額に汗を浮かべながら聞き返すのが精一杯。何だかかわいそうに見えてきた。
「一択って、だ、誰だよ」
「ミーナ・モットーに決まってるじゃん」
「ミーナって、水原さん? 何でだ?」
森君が勢いよく水原さんの方を振り向く。水原さんの方はそういう結論になるのが当然と自覚していたのか、静かに首を縦に振った。
隣に座る不知火さんが詳しい解説を始める
「これから殺人事件の捜査をするんでしょう? そしてあなたは探偵師。言い換えれば名探偵の役割を背負うんですよね。となると、助手はすなわちワトソン。記述者です。候補に挙がった顔ぶれの内、ワトソン役が務まるのはミーナをおいて他にありませんでしょう」
「そんだけ? だったら――」
「まだです。ミステリで鍛えられている水原さんの能力を頼るべきだったんです。恐らくですが、もし仮にミーナを選んでいれば、より適切な助言が受けられて、解決も早かったんじゃないかと想像します」
「私は外れ、選択ミスなのだよ、ふふふふ」
陽子ちゃんが芝居めかして言った。
「何だよ外れとか選択ミスとか。俺の見た夢って、ロールプレイングゲームだったのか?」
「うーん、ゲームじゃないにしても、役割を演じることが求められているっていう意味なら、ロールプレイングと呼べるんじゃない?」
「少なくともそのつもりで行動していれば、こつや感覚はじきに掴めたかもしれませんね」
陽子ちゃんに続き、不知火さんが評した。森君は疲れたようにがっくりと項垂れて、「ロールプレイングゲームはあんまり得意じゃないんだよなー、俺。友達に付き合う程度で」と愚痴をこぼすことしきりだった。
つづく
「不知火だからシーラ? 駄洒落中の駄洒落ですね」
もっと捻ってほしかったのか、不満げに呟いた不知火さんでした。
シーラは空を飛ぶ魔法が使えて、林からお城まで森君と一緒に移動。さらにお城の中を途中まで案内し、メインというもう一人の探偵師と引き合わせる。見た目はシュウさんに似ているらしい。
で。
「何で私がシュウさんの助手なのよ。手品好きっていう設定はいいとして」
思わず聞いた。すると森君、びっくりしたみたいで、目を丸くして、「えっ、不満なのか?」と聞き返してくる。
不満だなんてとんでもない。嬉しいけれども……どうしてそれを森君が夢の中で思い描いたのよ?ってこと。
公平を期するために、森君も助手を選ぶ。その過程を聞いて、みんながやいのやいの言い出した。
「何を考えていたのですか、森君は」
詰問調で不知火さんが真っ先に声を上げた。
「え? え? 俺、何か変なこと言ったか」
「どうしてマルタ――私に似たマルタを選んだのかってことを、まず聞いてるんだよ」
続いて聞いた陽子ちゃん、いつの間にかその場で立ち上がり、腕組みをしている。
「えっと、それは……水を凍らせる魔法を使えるってことで、何かの役に立つんじゃないかなと」
「それだけ? 分かんないなあ」
腕組みを解き、お手上げのポーズを小さくした陽子ちゃん。元の椅子にすとんと腰を下ろした彼女に代わって、再び不知火山さんが口を開く。
「殺人事件という犯罪の捜査に当たるのに、助手の魔法能力が水を凍らせるだなんて、理解できません。犯人と格闘でも行うつもりだったのですか」
「い、いや。一番魔法っぽいかなって思っただけ」
「……」
呆れて仕舞ったのか、不知火さんは口をしばらくぽかんとさせ、そのまま黙ってしまった。
「あ~あ、やっちゃったね。考えるまでもなく、そこは一択だったでしょうが」
今度は朱美ちゃんが森君を責める。森君は額に汗を浮かべながら聞き返すのが精一杯。何だかかわいそうに見えてきた。
「一択って、だ、誰だよ」
「ミーナ・モットーに決まってるじゃん」
「ミーナって、水原さん? 何でだ?」
森君が勢いよく水原さんの方を振り向く。水原さんの方はそういう結論になるのが当然と自覚していたのか、静かに首を縦に振った。
隣に座る不知火さんが詳しい解説を始める
「これから殺人事件の捜査をするんでしょう? そしてあなたは探偵師。言い換えれば名探偵の役割を背負うんですよね。となると、助手はすなわちワトソン。記述者です。候補に挙がった顔ぶれの内、ワトソン役が務まるのはミーナをおいて他にありませんでしょう」
「そんだけ? だったら――」
「まだです。ミステリで鍛えられている水原さんの能力を頼るべきだったんです。恐らくですが、もし仮にミーナを選んでいれば、より適切な助言が受けられて、解決も早かったんじゃないかと想像します」
「私は外れ、選択ミスなのだよ、ふふふふ」
陽子ちゃんが芝居めかして言った。
「何だよ外れとか選択ミスとか。俺の見た夢って、ロールプレイングゲームだったのか?」
「うーん、ゲームじゃないにしても、役割を演じることが求められているっていう意味なら、ロールプレイングと呼べるんじゃない?」
「少なくともそのつもりで行動していれば、こつや感覚はじきに掴めたかもしれませんね」
陽子ちゃんに続き、不知火さんが評した。森君は疲れたようにがっくりと項垂れて、「ロールプレイングゲームはあんまり得意じゃないんだよなー、俺。友達に付き合う程度で」と愚痴をこぼすことしきりだった。
つづく