第108話 記録された魔法
文字数 1,280文字
脳内でそこまで考えていた。だからメインの話も当然、同じように展開してくるんだと信じ込んでいた。
だが、実際には少々違って、思いも寄らないアイテムが登場してきた。
「そして私が先んじて聞き込んだところでは、さすが王宮と言うべきか、建物の周辺にも防魔の仕組みが設けられていた。城壁内で魔法を使えば、逐一ログが取られる。つまり、どんな魔法が使われたかの記録が全部残るんだ」
(役割で言えば防犯カメラみたいな物か?)
意外とハイテクっぽい代物があることに驚きつつ、宗平は思った。
(実際に犯罪を食い止めるのは難しけれども、起こった犯罪の捜査の役に立つという意味では、防犯カメラに近い。でも防犯カメラは町に――この世界じゃなく、俺が元々いた世界の町にはたくさんあるけど、この世界の防魔ログ機?は違うみたいだ。『さすが王宮』って形容するからには、一般家庭やそこいらの町角にはないって意味なんだろ)
「魔法ロガーは、いつ誰がどのような魔法を行使したのか、おおよそのところを逐一記録してくれる装置で、外部からの干渉は受けない。つまり、魔法その他の手段で、記録を書き加えたり削除したりといった改竄は不可能と保証されている。
その記録によると、犯行推定時刻に城の敷地内で魔法を使った者はちょうど十名、回数にして三十五回」
「夜遅い割に、意外と多いな」
宗平の無意識の内の呟きを、メインが拾う。
「僕も今回初めて内情を知ったんだが、夜でもそれなりに職務はあるようだよ。たとえば、女王が夜行性の犬を飼っておられる。世話係が犬を運動させるのが二十二時からの一時間と決められており、その前後、犬の首輪の着脱を行うときに魔法を使う規則になっている」
「え?」
たかが犬の首輪に魔法? ケルベロスかよ!という疑問が沸いた。
「誤解のないように言うが、運動のために付ける首輪があるそうだ。どんな運動を何分やったか記録が残る。要は、犬の世話係がさぼっていないかチェックするための道具ということかな」
何だ、そういうことか。
「話を本筋に戻すよ。今言った犬の世話のように、当時使われていて当たり前の魔法の記録を全部省くと、残ったのは三名、三つの魔法だった。チェリー、次のを出してくれるかい?」
「了解です」
メインの求めに応じ、チェリーが新たな布を宙に浮かせる。今度は画像ではなく、文字だった。
宗平はそれを見た途端、不思議な感覚を味わった。
(日本語じゃないように見える。なのに、意味は分かるぞ? 何でだ?)
考えても理屈が分かるはずがなく、いつまでも不思議がっていても仕方がない。宗平はその箇条書きの言葉に目を走らせた。
「三名の名前と簡単な属性、魔法をいつ使っていたかについて書き記してみた」
◎イルゲン・フィリポ 馭者。ギャンブル好き。0時台に壁を作る魔法
◎ジュディ・カークラン マティ・ウッズ政務官の秘書。かつて被害者と恋仲だった。水を操る魔法を0時台に
◎マギー・セイクリッド 王女。人の体内の異物を同じ重さの物体と交換できる魔法を二十三時台に
つづく
だが、実際には少々違って、思いも寄らないアイテムが登場してきた。
「そして私が先んじて聞き込んだところでは、さすが王宮と言うべきか、建物の周辺にも防魔の仕組みが設けられていた。城壁内で魔法を使えば、逐一ログが取られる。つまり、どんな魔法が使われたかの記録が全部残るんだ」
(役割で言えば防犯カメラみたいな物か?)
意外とハイテクっぽい代物があることに驚きつつ、宗平は思った。
(実際に犯罪を食い止めるのは難しけれども、起こった犯罪の捜査の役に立つという意味では、防犯カメラに近い。でも防犯カメラは町に――この世界じゃなく、俺が元々いた世界の町にはたくさんあるけど、この世界の防魔ログ機?は違うみたいだ。『さすが王宮』って形容するからには、一般家庭やそこいらの町角にはないって意味なんだろ)
「魔法ロガーは、いつ誰がどのような魔法を行使したのか、おおよそのところを逐一記録してくれる装置で、外部からの干渉は受けない。つまり、魔法その他の手段で、記録を書き加えたり削除したりといった改竄は不可能と保証されている。
その記録によると、犯行推定時刻に城の敷地内で魔法を使った者はちょうど十名、回数にして三十五回」
「夜遅い割に、意外と多いな」
宗平の無意識の内の呟きを、メインが拾う。
「僕も今回初めて内情を知ったんだが、夜でもそれなりに職務はあるようだよ。たとえば、女王が夜行性の犬を飼っておられる。世話係が犬を運動させるのが二十二時からの一時間と決められており、その前後、犬の首輪の着脱を行うときに魔法を使う規則になっている」
「え?」
たかが犬の首輪に魔法? ケルベロスかよ!という疑問が沸いた。
「誤解のないように言うが、運動のために付ける首輪があるそうだ。どんな運動を何分やったか記録が残る。要は、犬の世話係がさぼっていないかチェックするための道具ということかな」
何だ、そういうことか。
「話を本筋に戻すよ。今言った犬の世話のように、当時使われていて当たり前の魔法の記録を全部省くと、残ったのは三名、三つの魔法だった。チェリー、次のを出してくれるかい?」
「了解です」
メインの求めに応じ、チェリーが新たな布を宙に浮かせる。今度は画像ではなく、文字だった。
宗平はそれを見た途端、不思議な感覚を味わった。
(日本語じゃないように見える。なのに、意味は分かるぞ? 何でだ?)
考えても理屈が分かるはずがなく、いつまでも不思議がっていても仕方がない。宗平はその箇条書きの言葉に目を走らせた。
「三名の名前と簡単な属性、魔法をいつ使っていたかについて書き記してみた」
◎イルゲン・フィリポ 馭者。ギャンブル好き。0時台に壁を作る魔法
◎ジュディ・カークラン マティ・ウッズ政務官の秘書。かつて被害者と恋仲だった。水を操る魔法を0時台に
◎マギー・セイクリッド 王女。人の体内の異物を同じ重さの物体と交換できる魔法を二十三時台に
つづく