第101話 アピールタイムから絞り込み

文字数 1,333文字

 期待を膨らませる。が、やはり気掛かりな点は二、三浮かぶ。
(サークルの女子が言ってたっけ、土屋さんはファッションとして占いをやってるって。占いをファッションて表す意味がいまいち分かんねーけど、混じりっけなしの本物ではないってことか? それにもし仮に凄い占いの力があるのなら、事件の真相なんかとっくに見抜いて、王様に申し出ればいじゃん。そうしてないってことは、今いるこの世界にだって、そこまで絶対確実な占いはないんだな)
 マジックサークルの他の女子三名も候補者の中にいた。
「選ぶのにどのくらい時間もらえるのか知んねえけど、質問してもいいのかな? 何ができるのかとか」
「無論です。何故今までやらないのかなと不思議に感じていました」
 シーラが淡々と答える。真っ先に教えてくれよ!
「じゃ、時間は?」
「あと半時間で結論を出してください」
「えーっと、じゃあ、みんなのセールスポイントを教えて欲しい。何か魔法が使えるのなら、それも一緒にアピールして」
 十三人に向かって求める宗平。焦りで、表情には変な笑みが浮かんでいた。

 十三人全員のアピールを聞いた上で、これは役に立ってくれるかもと感じた者をチェックしていった。お引き取り願った中には、自分の身内そっくりの三人も含まれていて、ちなみに宗平の母親似の女性は、「人の欠点を見付けるのが得意」だった。
 そんなこんなで残ったのが四名。いずれも学生……というか、奇術サークルの女子メンバーから佐倉と不知火を除けた四人のそっくりさん達だ。

 つちりんに似たソイール・ロチェスターは趣味が占い。魔法も使えるというからどんな物かと思ったら、「指先に特化した、極々細かな仕返しができます」と来た。具体的に聞くと、「相手の指を十本とも逆むけにするとか、爪を割れやすくするとか」という。何かちまっとしていて役立つのか怪しいが、とりあえず残した。

 金田朱美に瓜二つのベルミオン・ゴールドバーグは、名前から連想される通り裕福な家の娘で、財力をアピールしていた。魔法は使えない。金持ちなのに何で探偵師助手に名乗りを上げたのか不思議だったが、王族とのコネを強めたい思惑があると明言された。元から王族と知り合いで、財力もあるというのは重宝する場面がありそうだ。

 ベレー帽を被ったミーナ・モットーは水原玲にそっくりで、宗平の目には文学少女というよりは漫画家志望に見えた。羽根ペンを携行していたからだが、こちらの世界では筆記道具は羽根ペンが主流らしい。セールスポイントは、色んなトリックを思い付くのが得意。魔法は使えないが、記憶力が抜群によい。自己申告であり、試す時間がなかったが事実なら役立つはず。

 最後の一人、木之元陽子似のマルタ・ソラールは、眼鏡を掛けていて、シーラ達を含めた他の五人よりもさらに大人びて見えた。彼女の売りは、チェリー・ブラムストークとは幼馴染みで、チェリーの趣味嗜好から弱点までよく知っているという。また、使える魔法があるがその中身については採用してくれたら教えると、駆け引きしてきた。
(おいおい、こんなことしてまでなりたいものなのか助手って? そんだけ得なことが何かあるんじゃないか)

 つづく
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登場人物紹介

佐倉萌莉《さくらもり》。小学五年生。愛称はサクラ。マジック大好き。普段はどちらかと言えば引っ込み思案。

木之元陽子《きのもとようこ》。サクラの同級生。元気印で耳年増。

不知火遥《しらぬいはるか》。同級生。本好きで寡黙。大人びて少しミステリアスなところも。

佐倉秀明《さくらしゅうめい》。高校一年生。マジックが趣味。萌莉の従兄弟で憧れ。

相田克行《あいだかつゆき》。五年五組の担任。ぼさーっとしていて、よく言えば没頭型学者風、悪く言えば居候タイプ。やる気があるのかないのか。

金田朱美《かねだあけみ》。クラスは違うがサクラの友達。宝探しが夢。

土屋善恵《つちやよしえ》。同じくサクラの友達。愛称つちりん。オカルト好きだけど現実的な面もある。

水原玲《みずはられい》。サクラの同級生。推理小説好きが高じて文芸部に。

森宗平《もりそうへい》。サクラの同級生。クイズ・パズルマニア。

内藤肇《ないとうはじめ》。サクラの同級生でクラス委員長。女子からの人気高し。

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