SEVENTY-SEVEN 恋バナなら若さと円熟どっち?

文字数 1,168文字

 興味がないと言えば嘘になる。

「恋バナしよ、恋バナ!」

 美咲(みさき)さんが清掃作業の出先でお昼に入ったカフェではしゃいだ。

「今さら蓮見(はすみ)っちと縁美(えんみ)ちゃんのイチャエピソード聞いてもしょうがないからサラトちゃん」
「わたしですか?」

 聞いてみたい。
 つい先日まで中学生だった彼女の恋を。

「残念ですけど初恋もまだなので」
「うわ。新鮮!」

 美咲さんはそこで引き下がるかと思いきや食い下がった。

「そこをなんとか!」

 記憶を辿るサラトちゃん。

「バドミントンの全国大会が終わった後の夏休みの終わり頃なんですけど・・・」
「お、いいねー」
「わたしは受験は考えてなかったんですけど学生の本分は勉強ですので図書館で中学三年間の総まとめをやってたんです」

 なんと真面目な・・・

「閉館時間になって一階のエントランスから出ようとしたら突然ゲリラ豪雨で。自転車で傘も持って無かったのでそのまま雨宿りしたんです」
「うんうん」
「そしたら隣から声をかけられて。『サラトさんも傘ないの?』って」
「おお!で?で?」

 美咲さんがはしゃぎ続ける。

「クラスの男子だったんですよね。成績が学年で常に5本の指に入る子でした」
「いいね、いいね。因みにサラトちゃんは成績は?」
「わたしは頑張っても10番以内がやっとでしたけど」

 あれ?
 ・・・どっかで聴いたシチュエーションだな・・・

「サラトちゃんもすごいんだねー。で?その男の子はなんて?」
「特に・・・雑談してたら雨が上がって。それでさよなら、って別れましたけど」
「いやいやいや!その男の子、なんか言ったでしょ!?」
「そういえば・・・虹がきれいだね、って言いましたね」

 虹か。

「サラトちゃん、それって何かの暗喩じゃないの?月が綺麗ですね、的な」
「わかりませんけど、それっきりです」
「卒業後も会ってないの?」
「はい。会う必要性を感じませんので」
「なぜ?」
「今は、蓮見せんぱいが居ますから」

 ・・・・・・・・・

「美咲さんの番ですよ」
「まあ、そうだよね」

 美咲さんはさらっと受けたけどサラトちゃんも勇気あるな。
 僕だったらなかなか美咲さんにこんなストレートには言えないけどな。

 当然、興味はある。

「まあ、恋、っていうか。わたしバツイチだしね」
「えっ」
「なになに蓮見っち」
「初めて聞きました」
「そっか、言ってなかったっけ。まあ別れたのは5年前だけどね・・・ってまさしく蓮見っちと縁美ちゃんの愛が芽生えた頃か」
「美咲さんのお話を」
「あ、ああ、ごめんごめん」

 サラトちゃんの圧がすごい。

「ほんとは子供欲しかったよねー。子供が居れば旦那とはまだ続いてたかもしれない」

 そうか。
 やっぱりそういうもんなのかな・・・
 僕と、縁美は・・・・・

「蓮見せんぱい」
「なに?サラトちゃん」
「15歳の初恋って遅すぎますか?」

 じっと僕を見つめる彼女。

 何が綺麗、って言えばいいんだ。
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