250 ブリーチとプリーチならどちら?
文字数 1,274文字
「ウチの孫だよ。毛染めして欲しいんだと」
「はい?」
土曜の朝、早朝ランが中止になったと思ったら大家さんから極めて慎重に扱うべき預かり物をした。
「わたしは縁美 」
「僕は蓮見 」
「智位郎 ・・・・・」
中一男子に縁美は訊いた。
「智位郎くん、髪を染めたいの?」
「違うよ。ブリーチだよ。ばあちゃんが間違えたんだよ」
「ブリーチってなんのことか知ってる?」
「知ってるよ。脱色でしょ?」
縁美は更に質問を続けた。
「何色になると思う?」
「茶色とか黄色とか。黒い色素を抜くんでしょ?」
「分かってるんだね。どうしてブリーチしたいの?」
「カッコいいから。バンド、知らない?ニルヴァーナって言う3ピースバンド。そのアルバムにブリーチ、ってあるんだ」
「中学で禁止はされてないの?」
「されてるけど、やりたいんだ」
縁美はしつこかった。
「ほんとうの理由を教えて」
「俺が嘘ついてるっての?」
「智位郎くんはブリーチするようなタイプに見えない」
「なんだよそれ。縁美さんは中学卒業して美容師になったんでしょ?まさかファッションにそんな偏見持ってるとは思わなかった」
「ごめん、わたしはブリーチになんの偏見も持ってない。智位郎くんは思想的裏付けがあって初めてブリーチするタイプに見えるってだけ」
思想的裏付け・・・・・・
すごいな、縁美。
「説教すんのか!?」
「そうだよ!」
縁美はその後まくしたてた。
「自分の本質を変える訳でもないのに髪の色だけ変えるなんて納得できない!たとえば石に齧り付いてでもやり遂げたいことがあるから願掛けで右のもみあげだけ伸ばし続けるお客さんがいたけどそういうんならやってあげるよ!」
「友達がいじめられてるんだ!」
「えっ」
今度は智位郎がまくし立てる番だった。
「幼稚園の頃からずっと一緒の純志 が俺以外のクラスの奴らから毎日いたぶられてるんだ!俺が一度やめろよって言ったら、『ならお前にやるぞ』って言われて結局何もできてないんだ!」
「智位郎くん・・・・・」
「だからブリーチして全員ビビらしていじめをやめさせるんだ!」
「無理だな」
僕は言わざるを得なかった。
「髪の色変えたぐらいで変わるんだったら僕は今までに10回は髪の色変えるさ。それより智位郎」
「な、なんだよ」
「明日日曜だろ?その純志って子を連れてここに遊びに来いよ」
「えっ」
「そうだよ。蓮見くんの言う通りだよ。わたしもその純志くんに会ってみたい」
「・・・・・会ったってどうにもならないよ・・・」
「僕と縁美だけじゃ無理かもしれないけど、すごいのが何人か居るから。揃えとくよ」
僕らは明日の約束をした。
「智位郎くん。ファッションとしてもブリーチはお勧めしないよ」
「縁美さん?どうしてそこまでこだわるの?」
「蓮見くんはまだ持ってるんでしょ・・・見せてあげて」
「いいの?縁美?」
「か、かまわないよ」
僕はスマホの古いフォルダを開いて写真を表示した。
「え!?これって!?」
「わ、わたしだよ・・・・」
縁美15歳。
美容師になりたてでブリーチした時の写真。
「髪の色が・・・」
「なによ」
「玉ねぎの皮みたい!」
「・・・・・・うるさいな」
「はい?」
土曜の朝、早朝ランが中止になったと思ったら大家さんから極めて慎重に扱うべき預かり物をした。
「わたしは
「僕は
「
中一男子に縁美は訊いた。
「智位郎くん、髪を染めたいの?」
「違うよ。ブリーチだよ。ばあちゃんが間違えたんだよ」
「ブリーチってなんのことか知ってる?」
「知ってるよ。脱色でしょ?」
縁美は更に質問を続けた。
「何色になると思う?」
「茶色とか黄色とか。黒い色素を抜くんでしょ?」
「分かってるんだね。どうしてブリーチしたいの?」
「カッコいいから。バンド、知らない?ニルヴァーナって言う3ピースバンド。そのアルバムにブリーチ、ってあるんだ」
「中学で禁止はされてないの?」
「されてるけど、やりたいんだ」
縁美はしつこかった。
「ほんとうの理由を教えて」
「俺が嘘ついてるっての?」
「智位郎くんはブリーチするようなタイプに見えない」
「なんだよそれ。縁美さんは中学卒業して美容師になったんでしょ?まさかファッションにそんな偏見持ってるとは思わなかった」
「ごめん、わたしはブリーチになんの偏見も持ってない。智位郎くんは思想的裏付けがあって初めてブリーチするタイプに見えるってだけ」
思想的裏付け・・・・・・
すごいな、縁美。
「説教すんのか!?」
「そうだよ!」
縁美はその後まくしたてた。
「自分の本質を変える訳でもないのに髪の色だけ変えるなんて納得できない!たとえば石に齧り付いてでもやり遂げたいことがあるから願掛けで右のもみあげだけ伸ばし続けるお客さんがいたけどそういうんならやってあげるよ!」
「友達がいじめられてるんだ!」
「えっ」
今度は智位郎がまくし立てる番だった。
「幼稚園の頃からずっと一緒の
「智位郎くん・・・・・」
「だからブリーチして全員ビビらしていじめをやめさせるんだ!」
「無理だな」
僕は言わざるを得なかった。
「髪の色変えたぐらいで変わるんだったら僕は今までに10回は髪の色変えるさ。それより智位郎」
「な、なんだよ」
「明日日曜だろ?その純志って子を連れてここに遊びに来いよ」
「えっ」
「そうだよ。蓮見くんの言う通りだよ。わたしもその純志くんに会ってみたい」
「・・・・・会ったってどうにもならないよ・・・」
「僕と縁美だけじゃ無理かもしれないけど、すごいのが何人か居るから。揃えとくよ」
僕らは明日の約束をした。
「智位郎くん。ファッションとしてもブリーチはお勧めしないよ」
「縁美さん?どうしてそこまでこだわるの?」
「蓮見くんはまだ持ってるんでしょ・・・見せてあげて」
「いいの?縁美?」
「か、かまわないよ」
僕はスマホの古いフォルダを開いて写真を表示した。
「え!?これって!?」
「わ、わたしだよ・・・・」
縁美15歳。
美容師になりたてでブリーチした時の写真。
「髪の色が・・・」
「なによ」
「玉ねぎの皮みたい!」
「・・・・・・うるさいな」