ＴＨＩＲＴＹ－ＥＩＧＨＴ　無口とお喋りとどっちがお好き？

「ようよう！蓮見(はすみ)！会えて嬉しいぜ！どうしてんだよ最近はよ？お前が中学出てすぐ働くって知ったHRの時はびっくりしたぜ。で、どうよ？仕事はうまく行ってんの？」
「うん」
「それで縁美(えんみ)ちゃんとはどうよ？すっげえクールな子だったよなあ。まあちょっと怖いぐらいだったけど背が高くてさ。俺、実は密かに狙ってたんだ。なーんてな。はははは。まさか蓮見と縁美ちゃんが同棲してるとはなー。うらやましいぜ、コノヤロー。なあなあ、ほんとに中学卒業してすぐ一緒に暮らし始めたんだろ？どうなんだよ？結婚とかしないのか？」
「うーん」
「お？なんか脈ありな感じだな？さっさと結婚しちまって縁美ちゃんを安心させてやれよー。なあなあそれよりもさ、あの担任の里(さと)？あのあと校長になって今じゃ教育委員会のお偉いさんらしいぜ？あいつお前をまるでアウトサイダーみたいに言いやがってよ？でもかっこよかったよなあ。お前ももちろんだけど、縁美ちゃんがさ、『蓮見くんに謝罪してください』だぜ？あの時からふたりの愛は始まってたんじゃねえのか？どうなんだよ？」
「うん。うーん？」

「あらー縁美ちゃん。最近レジに出てなかったから心配してたのよー？どう？景気は？」
「あ。種田さん、いらっしゃいませ。ちょっとバックヤードの作業が多かったものですから」
「あらあらそうなの？縁美ちゃんが表に出てないと寂しいわー。そういえば縁美ちゃんが仕入れてくれてるお豆腐おいしいわねー。こだわりの豆腐っていうの？味がしっかりしてて。オリーブオイルと岩塩かけて食べるのも教えてもらってダンナにも好評なのよー。そういえば縁美ちゃん、今どき仲人とか流行らないって思うかもしれないけど、ウチらの人脈舐めて貰っちゃ困るわよー。随時紹介できそうな男のリストを10人ぐらいは持ってるのよー。ほらこうやって最近はスマホに紹介用の写真を入れててね。この男なんかどう？ほら・・・・・いーい男でしょぉー？どうかしら？ちょっと年は行ってるんだけどね。当ててみて？」
「えーと・・・・・アラフォー、ぐらいですか？」
「65歳よ。若く見えるでしょぉー？」
「・・・・・・・・・はい・・・・・」
「じゃあこっちの男はどう？これはねー、なんとねー、医者なのよ！こっちもまあ年齢行ってて70ちょい手前ね。まあ自分で開業してるから定年はないしスタッフもベテランの還暦過ぎた看護師さんが2人揃ってるから縁美ちゃんは先生の奥様で玉の輿よ？そういえば縁美ちゃんは彼氏とかいないんでしょぉー？」
「いいえ」
「いいえ？ってことはいるの！？まあまあまあまあ、これは失礼したわねー。ごめんなさいねー。ならどう？ダンナとアタシとでふたりの仲人してあげてもいいわよ？その代わり2人の友達とか知り合いでまだ結婚してない子がいたら紹介してちょうだい？アタシの婚活ネットワークに加えさせてもらってお節介おばさんの本領発揮するわよー。どうかしら、縁美ちゃん？」
「そうですね」

「ただいま」
「おかえりなさい」
「縁美・・・今日はなんだか疲れたよ」
「あ、蓮見くんも？わたしもなんだか疲れた」
「ああ・・・この家は静かで落ち着くよ」
「ほんとだね。蓮見くん」