ONE HUNDRED 闇鍋はラブコメ?恋愛?どっち!?

文字数 1,266文字

絵プロ鵜(えぷろう)ちゃん、連載100回おめでとー!」

 縁美(えんみ)の号令でパーティーが始まった。

 なぜか会場は僕らのアパート。

 参加者は主賓の絵プロ鵜、美咲(みさき)さん、サラトちゃん、縁美、僕、そして。

「いやー。私までお邪魔してしまって」

 サラトちゃんのお兄さんのガクトさん。

 計6人で宴のメインディシュを囲んだ。

 いや、ディッシュじゃないな。

 鍋って英語でなんて言うんだ。

「どうして闇鍋(ヤミナベ)なの!?」

 美咲さんが主賓権限で闇鍋をオーダーした絵プロ鵜に詰め寄る。

(それがし)のマンガのネタにしたいからさね」
「でも絵プロ鵜ちゃんの連載漫画って恋愛漫画でしょ?」
「いかにも」
「闇鍋ってラブコメじゃないの?」
「美咲どの。ラブコメと恋愛の境界は主人公の性格によって決まるのさね」
「うーん・・・じゃあ、蓮見(はすみ)っちと縁美ちゃんはどっち?」
「ギャグかもしれぬ」

 冗談を言っているつもりの絵プロ鵜に僕は小声で質問した。

『なんで絵プロ鵜が「ガクトさんを是非呼べ」って言ったんだよ』
『恋のライバルが居た方がネタが膨らむので』

 本編の闇鍋が始まった。

「では皆さん、ご持参の食材が入った袋を持ってテーブルの周りに立ってください」

 縁美が見事な誘導手腕を見せる。

「そのまま目を閉じて・・・閉じましたか?ではテーブルのへりをつかんでランダムに移動します」

 具材だけでなく、暗黒の密室で男女6人が、誰が隣り合わせかも分からずに闇鍋をする。

 ちょっとだけエロティックだ。

「・・・席につきましたね。一応鍋の出汁は鶏ガラベースなので何にでも合うはずです」

 カセットコンロで煮える出汁の音以外、しん、とする室内。

「では、投入!」

 縁美の合図で入れはじめる。

 ぽちょ

 とぷん

 ぴちょ

 ガゴ

「な、なに?今の音?」
「ご静粛に」

 縁美が冷静沈着にナレーションする。

「衛生面を考慮して10分煮ます。ルールはご存知の通り。闇の中で一度箸にしたものは必ず食べないといけません」

 10分経過。

「では、箸を」

「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・?」
「!・・・・・」
「???」
「!!!!!!」

「殻つきのゆで卵!?」
「温泉たまごでござる。煮てちょうど固茹でになるのさね」
「絵プロ鵜!」
「そ、某は絵プロ鵜ではござらぬ」

 そして、誰か僕の空いてる左手を、握ってきた・・・

 サラトちゃんか?

 それから、縁美の声が。

「ちょ・・・やめて」

 なんだ。
 誰だ。
 なにしてるんだ。

「いやっ」

 僕は立ち上がった。
 暗闇だって僕らの部屋だ。明かりの位置は分かる。

「な、なに!?蓮見くん!?」

 明かりが点くと縁美のお鉢に絵プロ鵜が無理やりナマコを入れているところだった。

 そしてさっきから僕の手を握っていたのは。

「どうしてガクトさんが」
「いやー。お約束でしょ?」

 つい、本音を口に出してしまった。

「てっきりガクトさんが縁美のこと・・・」

 サラトちゃんがあっさり言う。

「兄は結婚してて子供も居ますよ。ウチで同居してるって言いませんでしたっけ?」

 ああ・・・そう言えば・・・

 絵プロ鵜が黙想してると思ったら突然目を開けた。

「なら、不倫で!」

 帰ってくれ。
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