140 女の子と男の子ならどっち?
文字数 1,266文字
少し遅く起きて日曜の朝ごはんをふたりで楽しんで。
今週は冷凍してあった食材を利用してスピード重視で作り置き惣菜を一気に仕上げた。
お昼前には一通りできあがって、僕と縁美 は外へ出かけた。
行き先は公園。近くの総合病院の敷地前にある公園全体が坂の途中に作られた、中央には噴水のある公園。
「蓮見 くん。見て」
「うん」
縁美が指さしたのは若い母親に抱かれて頬擦りしてもらっている、ようやく首がすわったぐらいの赤ちゃん。
「男の子かな?女の子かな?」
「うーん・・・・・・女の子、かな?」
わからない時は女の子と答えておけば間違いない。正解ならば『かわいいですもんね』だし、不正解で男の子ならば『やさしい顔してますね』という風に返せば親たちも喜ぶ。
「あ」
女の子で正解みたいだ。
合流した父親が赤ちゃんながらふさふさした彼女の髪に黄色くて小さな花をとめてあげている。
普段僕と縁美は人前で手を繋ぐことはほとんどないんだけど、この幸福な雰囲気にいてもたってもいられなくて、手を触れ合わせて、握り合った。
いわゆる恋人つなぎ、ってつなぎ方で。
坂を下って歩く僕らの前に、やっぱり手を繋いだペアが坂を登ってきた。
「かわいい!」
小声で感嘆符をつけて僕にささやく縁美。
父親と手を繋いで歩く男の子だった。
やさしい顔だけどはっきりと男の子、ってわかった。
「蓮見くん。あの子、まだ多分1歳ぐらいだよね。きっと歩けるようになったのがすごく嬉しいんだね」
縁美の指摘どおり男の子は小さな運動靴を履いてとたとたと小走りするようにして歩いている。
顔がニッコニコだ!
途中つまづいて転びそうになっても大丈夫。お父さんが、ぐい、って握った手の筋肉を盛り上がらせて支える。
男の子は倒れる前に足を一歩踏み出す、って感じで、前へ前へ進むのが本当に嬉しそうだ。
「男の子もかわいいよね・・・・・でもさっきの女の子もかわいかったし・・・・蓮見くん」
「うん」
「どっちがいい?」
なんて難しい質問を・・・・・
しかも僕らがやろうとしていることに関してはそういう選択がもしかしたら可能かもしれないんだ。
『犬や猫じゃないんだぞ』
僕の父親は養子縁組を検討している僕らに世の中は甘いもんじゃないぞ、という趣旨での皮肉を言ったつもりだったろうけど、実際に女の子と男の子のどちらを迎えるかはある程度僕らの意思でもってやることになるんだろう。だから僕はこう答えた。
「僕らに縁のある子なら、どちらでも」
「縁」
「そう。縁。あ」
「なに、蓮見くん」
「君の名前の通りだよ」
「わたしの?名前?」
「縁が美しいんであって、その子がどういう子かって言うよりも僕らがその子にとってどういう親になれるか、っていう風に考えようよ」
「そうだね」
一度言って縁美はまた言った。
「ほんとだね」
僕はもうひとつ付け加えた。
「だから、赤ちゃんとも限らない。・・・・たとえば3歳とか5歳とかの少し大きな子と縁があるかも」
「うん。でも蓮見くん」
「えっ」
「3歳・5歳なんてかわいい盛りだよ。いいとこ取りかも!」
ふたりで笑い合った。
今週は冷凍してあった食材を利用してスピード重視で作り置き惣菜を一気に仕上げた。
お昼前には一通りできあがって、僕と
行き先は公園。近くの総合病院の敷地前にある公園全体が坂の途中に作られた、中央には噴水のある公園。
「
「うん」
縁美が指さしたのは若い母親に抱かれて頬擦りしてもらっている、ようやく首がすわったぐらいの赤ちゃん。
「男の子かな?女の子かな?」
「うーん・・・・・・女の子、かな?」
わからない時は女の子と答えておけば間違いない。正解ならば『かわいいですもんね』だし、不正解で男の子ならば『やさしい顔してますね』という風に返せば親たちも喜ぶ。
「あ」
女の子で正解みたいだ。
合流した父親が赤ちゃんながらふさふさした彼女の髪に黄色くて小さな花をとめてあげている。
普段僕と縁美は人前で手を繋ぐことはほとんどないんだけど、この幸福な雰囲気にいてもたってもいられなくて、手を触れ合わせて、握り合った。
いわゆる恋人つなぎ、ってつなぎ方で。
坂を下って歩く僕らの前に、やっぱり手を繋いだペアが坂を登ってきた。
「かわいい!」
小声で感嘆符をつけて僕にささやく縁美。
父親と手を繋いで歩く男の子だった。
やさしい顔だけどはっきりと男の子、ってわかった。
「蓮見くん。あの子、まだ多分1歳ぐらいだよね。きっと歩けるようになったのがすごく嬉しいんだね」
縁美の指摘どおり男の子は小さな運動靴を履いてとたとたと小走りするようにして歩いている。
顔がニッコニコだ!
途中つまづいて転びそうになっても大丈夫。お父さんが、ぐい、って握った手の筋肉を盛り上がらせて支える。
男の子は倒れる前に足を一歩踏み出す、って感じで、前へ前へ進むのが本当に嬉しそうだ。
「男の子もかわいいよね・・・・・でもさっきの女の子もかわいかったし・・・・蓮見くん」
「うん」
「どっちがいい?」
なんて難しい質問を・・・・・
しかも僕らがやろうとしていることに関してはそういう選択がもしかしたら可能かもしれないんだ。
『犬や猫じゃないんだぞ』
僕の父親は養子縁組を検討している僕らに世の中は甘いもんじゃないぞ、という趣旨での皮肉を言ったつもりだったろうけど、実際に女の子と男の子のどちらを迎えるかはある程度僕らの意思でもってやることになるんだろう。だから僕はこう答えた。
「僕らに縁のある子なら、どちらでも」
「縁」
「そう。縁。あ」
「なに、蓮見くん」
「君の名前の通りだよ」
「わたしの?名前?」
「縁が美しいんであって、その子がどういう子かって言うよりも僕らがその子にとってどういう親になれるか、っていう風に考えようよ」
「そうだね」
一度言って縁美はまた言った。
「ほんとだね」
僕はもうひとつ付け加えた。
「だから、赤ちゃんとも限らない。・・・・たとえば3歳とか5歳とかの少し大きな子と縁があるかも」
「うん。でも蓮見くん」
「えっ」
「3歳・5歳なんてかわいい盛りだよ。いいとこ取りかも!」
ふたりで笑い合った。