253 さよならとバイバイならどっち?
文字数 1,282文字
『蓮見 さん、気兼ね無く人助けしてきなよ』
「迫田 さん。本当にすみません」
『ははは。蓮見さんのそういう人柄も含めて俺は採用したんだから。それに真直 が高校休んで仕事手伝ってくれるから。なあに、義務教育じゃないんだから一週間ほどドーンと休んだところで構わないだろうよ。な?真直?』
『休めてうれし〜!ひゃひゃひゃ!』
真直ちゃん・・・・・・・
今日も僕は同じように純志 に付き添って中学に『登校』している。
『キモいよねー』
『あんな大人にはなりたくねー』
まあ普通の反応だろう。
僕という変人への『健全なる嫌悪感』を持つ普通の子たちが、普通に純志をいじめてるってことなんだろう。
でも僕には分かってるんだ。
まだ12歳か13歳のこの子たちはいずれ普通で無くなる。
体が成長してもしかしたら誰かを好きになってもしかしたら結婚してもしかしたら子や孫ができてもしかしたら長生きして・・・・・・そうしたら今度は『もしかしたら』じゃなくて確実にシワが増えて。
確実に細胞のひとつひとつが力を削がれて。
確実に脳細胞が死滅して行って。
確実に年齢を重ねて。
その時に醜く腰が折れ曲がっていたら、常に下を向いて歩かざるを得ない純志と同じで普通じゃなくなってるってことでいいのか?
もし認知症になっていたら、殴られても殴り返さない純志を『足りない』扱いしてるみたいに普通じゃなくなってるってことでいいのか?
午後最後の授業の前に僕と純志は職員室の来客用パーテーションに呼ばれた。
行ってみると、純志の母親が居た。
「あ。蓮見さん・・・・・」
「どうされたんですか?」
「あの・・・・・今、校長先生と教頭先生とも話しました。純志は転校させます」
なぜ。
「私もそれがいいと思いますね。実態調査も重要なことですがとにかく純志くんの安全が最優先ですからね」
これがトップの言うことか。
「私も努力したんですが、力不足で。親御さんのご判断を尊重しましょう」
アンタ、それでも担任か。マネジャーか。
僕は訊いた。
純志に。
「いいのかい」
「・・・・・蓮見さん」
「うん」
「
「・・・・・・・そうか」
転校を決めて、純志はこのまま母親と一緒に帰宅する。そしてもうこの学校には来ずに来週転校することになった。
「蓮見さん。本当にありがとうございました」
「いいえ。僕の方こそお母さんに恥をかかせてしまって・・・・でもよくご両親で判断されましたね」
「・・・・・夫には了解をとっていません」
「えっ・・・・・」
「夫はやっぱりまだ『親戚に恥ずかしい』と世間体から離れられません。もし夫が反対したら、離婚しようと思います。わたし一人で純志をなんとか育てようと思います」
僕は、もしかしたら純志から父親を奪うことになるんだろうか・・・・・
「純志!」
智位郎が校門まで駆けて来た。
「智位郎ちゃん・・・・ごめんね」
「いいんだ。純志。次の学校行ったら、今度こそ楽しくやれよ」
「うん」
「もし、次の学校で純志がいじめられたら、今度は俺が行くよ」
「えっ」
「蓮見さんみたいにさあ・・・・・」
「
『ははは。蓮見さんのそういう人柄も含めて俺は採用したんだから。それに
『休めてうれし〜!ひゃひゃひゃ!』
真直ちゃん・・・・・・・
今日も僕は同じように
『キモいよねー』
『あんな大人にはなりたくねー』
まあ普通の反応だろう。
僕という変人への『健全なる嫌悪感』を持つ普通の子たちが、普通に純志をいじめてるってことなんだろう。
でも僕には分かってるんだ。
まだ12歳か13歳のこの子たちはいずれ普通で無くなる。
体が成長してもしかしたら誰かを好きになってもしかしたら結婚してもしかしたら子や孫ができてもしかしたら長生きして・・・・・・そうしたら今度は『もしかしたら』じゃなくて確実にシワが増えて。
確実に細胞のひとつひとつが力を削がれて。
確実に脳細胞が死滅して行って。
確実に年齢を重ねて。
その時に醜く腰が折れ曲がっていたら、常に下を向いて歩かざるを得ない純志と同じで普通じゃなくなってるってことでいいのか?
もし認知症になっていたら、殴られても殴り返さない純志を『足りない』扱いしてるみたいに普通じゃなくなってるってことでいいのか?
午後最後の授業の前に僕と純志は職員室の来客用パーテーションに呼ばれた。
行ってみると、純志の母親が居た。
「あ。蓮見さん・・・・・」
「どうされたんですか?」
「あの・・・・・今、校長先生と教頭先生とも話しました。純志は転校させます」
なぜ。
「私もそれがいいと思いますね。実態調査も重要なことですがとにかく純志くんの安全が最優先ですからね」
これがトップの言うことか。
「私も努力したんですが、力不足で。親御さんのご判断を尊重しましょう」
アンタ、それでも担任か。マネジャーか。
僕は訊いた。
純志に。
「いいのかい」
「・・・・・蓮見さん」
「うん」
「
あいつら
と2度と会わなくて済むんだったら、僕は今すぐ転校したい」「・・・・・・・そうか」
転校を決めて、純志はこのまま母親と一緒に帰宅する。そしてもうこの学校には来ずに来週転校することになった。
「蓮見さん。本当にありがとうございました」
「いいえ。僕の方こそお母さんに恥をかかせてしまって・・・・でもよくご両親で判断されましたね」
「・・・・・夫には了解をとっていません」
「えっ・・・・・」
「夫はやっぱりまだ『親戚に恥ずかしい』と世間体から離れられません。もし夫が反対したら、離婚しようと思います。わたし一人で純志をなんとか育てようと思います」
僕は、もしかしたら純志から父親を奪うことになるんだろうか・・・・・
「純志!」
智位郎が校門まで駆けて来た。
「智位郎ちゃん・・・・ごめんね」
「いいんだ。純志。次の学校行ったら、今度こそ楽しくやれよ」
「うん」
「もし、次の学校で純志がいじめられたら、今度は俺が行くよ」
「えっ」
「蓮見さんみたいにさあ・・・・・」