ONE HUNDRED TWENTY ビョーキと健康ならどっち?

文字数 1,125文字

「うう・・・頭が・・・」

 美咲(みさき)さんが頭痛持ちだというのは知ってたけど今日のはちょっとひどい。

「大丈夫ですか?少し休憩しましょうか?」
「ごめんね、蓮見(はすみ)っち」

 サラトちゃんは膝の曲げ伸ばしができるようになるまでデスクワークなので今日も僕と美咲さんで現場に出てる。
 今日はカフェも併設している和菓子屋さんの持ちビルを、定休日に合わせてワックスがけだ。店舗内は立ち合いが必要だったりと色々制約があるので今日のところはエレベーターや階段部分を。

 なかなかの重作業のところ、美咲さんの頭痛が出た。

「うーん、イタタタ」
「大丈夫ですか?僕のタオルでよければ下に敷いて横になります?」
「大丈夫・・・いつものやつだから」
「でも今までこんなに痛そうにしてたことなかったですよ」
「2人だけの作業が続いたからちょっと無理がきてるかな」

 痛みの周期があるらしく、徐々におさまってきたようだ。

「ふう・・・もう大丈夫っぽい」
「美咲さん。お茶でよければ」
「ありがと」

 なんとなく病気談義になった。

「蓮見っちは持病は?」
「病気じゃないですけど、左肩にずっと違和感がありますね」
「あ。そういえばたまに後ろに体ひねる時なんかためらってるよね」
「そうなんですよ。車で運転席から後部座席の荷物を取ろうとひねってたりすると・・・痛いんですよね」
「いつから?」
「多分中学校の時に騎馬戦で崩れた時からですね」
「うわ。じゃあ、ずっとじゃない?」
「ええ。まあ、だましだましやってきてるって感じで」
「そっか。そういえば縁美(えんみ)ちゃんは?」
「え」
「知らないの?持病」
「インフルエンザとかそういうの以外で寝込んだことが多分ないですから」
「だめだよー。彼女のビョーキぐらい知っとかないと」
「確かにそうですね」
「そうだね。縁美ちゃんなら・・・」

 病気予想?

「肩こり、かな?」
「いや、それはないですよ」
「どうして?」
「胸に、荷重が、ないので」
「うわ!」
「えっ」
「言ってやろ!」
「じょ、冗談ですよ。やめてください」
「いーや。蓮見っちがこんなセクハラ男子とは」
「サ、サラトちゃんはどうでしょうね」
「ん?サラトちゃん?・・・まあ、今は怪我してるけど健康優良児でしょ、あの子は」
「そうだとは思いますけど」
「帰ったら訊いてみようか」
「悪趣味ですよ」

 でも僕もなんだか興味がある。
 なんていうか、病気ってそのひとの属性の中でもこう・・・生々しいというか。
 今思い出したけど、中学の時に縁美が風邪をひいてマスクで学校に来た時。

 結構ときめいた。

「サラトちゃんはどっか体で具合の悪いところとかある?弱い部分っていうか」
「えっ。弱い部分ですか?」

 ちょっと考え込んだ後、答えてくれた。

「右手だとリンゴを潰せるのに左手だと無理なんですよね」
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