167 夕焼けと朝焼けならどっち?
文字数 1,173文字
途中下車した海で出遭った男の子と別れ線路は夕日に向かって進んだ。
「綺麗・・・」
縁美 がそう一言つぶやいた景色の辺りで今日の宿を探すことにして電車を降りた。
沈むごとに夕焼けのオレンジに群青色が混じってきて、あるWEB小説投稿ワナビが書いていたオレンジとブルーのシロップを溶かし合わせたカクテルの色を思い出した。
今度こそ本当のビジネスホテルにチェックインして。
晩ご飯はコンビニで買ってきたおにぎりとお惣菜で簡単にすませた。
旅のうちの5分の2がもう終わってしまった。
僕は明け方に目を覚まして、ビジネスホテルの狭いロビーに降りてみた。
「眠れないの?」
「うん」
縁美も降りてきて並んでソファに座る。
「蓮見 くん。絵プロ鵜 ちゃんどうしてるかな?」
「LINEしてみる?」
「ううん。『ふたりの邪魔はしないさね!』なんて出発前に言ってたから」
「はは」
彼女らしい。
僕は詮無いことを言ってみた。
「絵プロ鵜みたいに自分の好きなこと・やりたいことを職業にできたら本当に幸せだろうな」
「そこだよ蓮見くん」
軽いタッチだな。
「蓮見くんのほんとうにやりたいことって何?」
「・・・小説が好きだから・・・漠然と文学に関わる仕事がしたいとか思ったことはあったね」
「それがほんとうの気持ち?」
「えっ」
縁美は僕の右手の指の間に上から左手を重ねて彼女の細い指で僕の隙間をなぞらえて来た。
「ほんとうのほんとうのココロの奥底では何?仕事とか趣味とか人との関係とか信念とか一切抜きにして」
「ほんとうのほんとう・・・?・・・ココロの奥底・・・?」
縁美はもうひとつ付け加えたさ。
「わたしのことも抜きにして」
時間をかけなくても、自分のココロ奥深く潜ることは多分できる。
「・・・主役になりたい」
「うん」
「ちやほやされたい」
「うん」
「一番に・・・・なりたい・・・一度なったら落ちることなく・・・」
「わかったよ、蓮見くん・・・・・」
泣きたい。
だから、ほんとに泣いた。
「泣いて」
「うん」
「もっと泣いて、蓮見くん」
「うん・・・・うん」
「まだだよ、蓮見くん。まだ足りないよ。もっともっと・・・泣いて・・・・・」
縁美が僕の頭を抱えてよしよししてくれた。
15歳は大人だ。
僕と縁美はだから経済的にも社会的にも15の春から大人であり続けた
だから一番なんて子供じみたことは排除し続けた。譲ることを覚えて二番どころか三番どころか百番、最下位にすら甘んじ続けた。
譲ったことすら相手に気付かせないよう気遣って。
辛い時も一旦大人になった以上ずっと大人であることをやめないでいた・・・・・・
僕は泣いたまま、縁美は僕を泣かせたまま立ち上がってホテルの外へ出た。
「朝焼けだね」
縁美はそう言ってそのままやめないで言った。
「朝焼けは天気が悪くなるんだって。雨雲の雨、全部降らせようよ」
涙が止まらない。
「綺麗・・・」
沈むごとに夕焼けのオレンジに群青色が混じってきて、あるWEB小説投稿ワナビが書いていたオレンジとブルーのシロップを溶かし合わせたカクテルの色を思い出した。
今度こそ本当のビジネスホテルにチェックインして。
晩ご飯はコンビニで買ってきたおにぎりとお惣菜で簡単にすませた。
旅のうちの5分の2がもう終わってしまった。
僕は明け方に目を覚まして、ビジネスホテルの狭いロビーに降りてみた。
「眠れないの?」
「うん」
縁美も降りてきて並んでソファに座る。
「
「LINEしてみる?」
「ううん。『ふたりの邪魔はしないさね!』なんて出発前に言ってたから」
「はは」
彼女らしい。
僕は詮無いことを言ってみた。
「絵プロ鵜みたいに自分の好きなこと・やりたいことを職業にできたら本当に幸せだろうな」
「そこだよ蓮見くん」
軽いタッチだな。
「蓮見くんのほんとうにやりたいことって何?」
「・・・小説が好きだから・・・漠然と文学に関わる仕事がしたいとか思ったことはあったね」
「それがほんとうの気持ち?」
「えっ」
縁美は僕の右手の指の間に上から左手を重ねて彼女の細い指で僕の隙間をなぞらえて来た。
「ほんとうのほんとうのココロの奥底では何?仕事とか趣味とか人との関係とか信念とか一切抜きにして」
「ほんとうのほんとう・・・?・・・ココロの奥底・・・?」
縁美はもうひとつ付け加えたさ。
「わたしのことも抜きにして」
時間をかけなくても、自分のココロ奥深く潜ることは多分できる。
「・・・主役になりたい」
「うん」
「ちやほやされたい」
「うん」
「一番に・・・・なりたい・・・一度なったら落ちることなく・・・」
「わかったよ、蓮見くん・・・・・」
泣きたい。
だから、ほんとに泣いた。
「泣いて」
「うん」
「もっと泣いて、蓮見くん」
「うん・・・・うん」
「まだだよ、蓮見くん。まだ足りないよ。もっともっと・・・泣いて・・・・・」
縁美が僕の頭を抱えてよしよししてくれた。
15歳は大人だ。
僕と縁美はだから経済的にも社会的にも15の春から大人であり続けた
だから一番なんて子供じみたことは排除し続けた。譲ることを覚えて二番どころか三番どころか百番、最下位にすら甘んじ続けた。
譲ったことすら相手に気付かせないよう気遣って。
辛い時も一旦大人になった以上ずっと大人であることをやめないでいた・・・・・・
僕は泣いたまま、縁美は僕を泣かせたまま立ち上がってホテルの外へ出た。
「朝焼けだね」
縁美はそう言ってそのままやめないで言った。
「朝焼けは天気が悪くなるんだって。雨雲の雨、全部降らせようよ」
涙が止まらない。