159 大輪の花と小さき花と・・・どっち?

文字数 1,143文字

 春頃に僕と縁美(えんみ)とで海辺の浜大根(はまだいこん)の花を持ち帰って鉢植えにしてたけど・・・・つまりは大根なので根っこが巨大になってしまって鉢には収まらなくなって大家さんに頼んで花壇に植え替えた。

 一応そのまま育っている。おいしく頂けるのかどうかは未知数だけど。

「お祝いの花、夕方の開店に届くように手配しておいてね」
「はい」

 サラトちゃんが社長から指示を受けていつも会社で使わせて頂いてる花屋さんにオーダーを入れた。

『いくらのスタンド花にされますか?』
「・・・円のを」
『かしこまりました』

 サラトちゃんはオーダーが終わった後でもなんだかずっと気にしてる。

「どうしたの?朝からずっと」
蓮見(はすみ)せんぱい。この間新装開店に合わせて全面クリーニングさせて頂いた天ぷら屋さんへのお花なんですけど・・・値段で選んでどんなお花が行くのか心配で・・・・・」
「大丈夫だよサラトちゃん。あの花屋さんはセンスいいし何より贈る相手を僕たち当事者の気持ちになって思いやって選んでくれるから」
「はい・・・・・でも」
「サラトちゃん!大丈夫!その花屋さんのサービスがあるから!」
「こんにちは。いつもありがとうございます」

 美咲(みさき)さんがそう言った時、丁度花屋さんの奥さんが秋のラインナップを載せたお店オリジナルのミニコミ誌のような冊子をお持ちくださった。

「それから、こちらどうぞ」

 そう言ってipadの画像をサラトちゃんに見せてくれた。

「わあ」

 それは今日午前中に配送したばかりの天ぷら屋さんの入り口に飾られた花だった。

「華やかですね・・・・!」
「ありがとうございます。お客様も」
「え」
「とても華やかでかわいらしいですよ」
「あ・・・・・・ありがとうございます・・・・・」

 奥さんはサラトちゃんのことを本当にそう思ったんだろう。決して営業トークではなく、だからこそサラトちゃんは奥さんの言葉に感激して恥じらっている。

 けれどもしっかり営業活動もして行った。

「これ、皆さん一輪ずつどうぞ」

 やたら小さな黄色いバケツに少し水を入れて、社員の人数分の幾種類かの花を挿して手に持っている。

「ふふ。ウチの幼稚園の子供のバケツ借りて来ちゃったんです。どうぞお選びください」

 みんな思い思いのものをすっ、と選んでいく。

 僕の番になった。

「じゃあ・・・・これを」
「それでよろしいですか?」
「はい」
「ふふ。爽やかですね」

 奥さんに言われたひとことが殊の外嬉しかったのと。

 早く見せてあげたいって気持ちが重なった。

「ただいま」
「あ、蓮見くん、おかえりなさい・・・・・・・あれ?」

 僕は縁美にその白い、可憐な一輪の花を手渡した。

「スプレーマム!」
「菊だから仏花っぽいかもしれないけど・・・」
「ううん!かわいい!ありがとう蓮見くん!」

 花言葉は、清らかな愛・・・・・・・





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