175 ただいまとおかえりならどちら?
文字数 987文字
ようやく僕らの街に着いた。
帰ってきた。
たった5日間だけど、本当に長いこと留守にしてた感じがする。
「あっ!」
「えっ!?」
駅のロータリーのところで縁美 が大きな声を上げた。
「この菊の花、背丈が伸びてる!」
花壇に咲いている花の出発前の状態を覚えていたらしい。
やっぱり鋭い。
「当たり前だよ蓮見 くん。蓮見くんが帰りの電車でわたしのうなじとほっぺたを撫でたことだって分かるぐらい鋭いから」
「気づいてたの!?」
荷物といっても何着かの服と大家さんや職場のひとたちに買ってきたお土産ぐらいだからアパートまではいつも通り歩いて帰った。
「ただいまー・・・・」
誰もいないってわかってるアパートの部屋の中に向かって僕と縁美は声を掛けた。
灯りを点ける。
「ああ〜あ!」
縁美がいつも布団を敷いてる畳の上に、ぱたん、と仰向けになる。
すらりとした脚が、いつもよりも長く細く美しく見える。
「ふうううぅぅ・・・」
僕も縁美の隣に仰向けに倒れる。
「くすくすくす」
「縁美。なにその笑い方」
「だって。電車の中で触ってくるなんて、いちゃいちゃしたかったんでしょ?」
「別に」
「いいよ。しても」
した。
でもなんていうか、ほんとに体が疲れて乳酸が溜まってる感じだから、向き合って抱き合って互いの背中に手を回してぐりぐりぐりと指圧するみたいな艶やかさも何もないただのじゃれあいみたいになった。
それからちょっと行儀がわるいけど、ふたりともゴロゴロと寝転がったまま移動してそれぞれのパジャマを引っ張り出して来て・・・・・
「さすがにこのままで布団は出せないね」
「立とうか」
「しょうがない」
布団を敷いて。
お腹が空かないぐらいに疲れてたからそのまま布団に入って眠る態勢をとった。
「蓮見くん」
「なに」
「おかえりなさい」
「?アパートには一緒に入ったじゃない?」
「そうじゃなくて・・・わたしっていう現実にもう帰って来てくれないかと思ったから」
「なにそれ」
「だって旅に出る前はやっぱり蓮見くん落ち込んでて・・・なんだかそのまま魂が軽くなっちゃって、どこへなりと飛んで行くみたいな気がしたから」
実際、武部 さんのカウンセリングを受けようと思ってたところだったからね・・・・・
「だからお帰りなさい、蓮見くん」
「・・・ただいま、縁美」
「ねえ蓮見くん」
「うん」
「今度は船旅がいいな」
ただいま。
おかえり。
おやすみ・・・・・・
帰ってきた。
たった5日間だけど、本当に長いこと留守にしてた感じがする。
「あっ!」
「えっ!?」
駅のロータリーのところで
「この菊の花、背丈が伸びてる!」
花壇に咲いている花の出発前の状態を覚えていたらしい。
やっぱり鋭い。
「当たり前だよ
「気づいてたの!?」
荷物といっても何着かの服と大家さんや職場のひとたちに買ってきたお土産ぐらいだからアパートまではいつも通り歩いて帰った。
「ただいまー・・・・」
誰もいないってわかってるアパートの部屋の中に向かって僕と縁美は声を掛けた。
灯りを点ける。
「ああ〜あ!」
縁美がいつも布団を敷いてる畳の上に、ぱたん、と仰向けになる。
すらりとした脚が、いつもよりも長く細く美しく見える。
「ふうううぅぅ・・・」
僕も縁美の隣に仰向けに倒れる。
「くすくすくす」
「縁美。なにその笑い方」
「だって。電車の中で触ってくるなんて、いちゃいちゃしたかったんでしょ?」
「別に」
「いいよ。しても」
した。
でもなんていうか、ほんとに体が疲れて乳酸が溜まってる感じだから、向き合って抱き合って互いの背中に手を回してぐりぐりぐりと指圧するみたいな艶やかさも何もないただのじゃれあいみたいになった。
それからちょっと行儀がわるいけど、ふたりともゴロゴロと寝転がったまま移動してそれぞれのパジャマを引っ張り出して来て・・・・・
「さすがにこのままで布団は出せないね」
「立とうか」
「しょうがない」
布団を敷いて。
お腹が空かないぐらいに疲れてたからそのまま布団に入って眠る態勢をとった。
「蓮見くん」
「なに」
「おかえりなさい」
「?アパートには一緒に入ったじゃない?」
「そうじゃなくて・・・わたしっていう現実にもう帰って来てくれないかと思ったから」
「なにそれ」
「だって旅に出る前はやっぱり蓮見くん落ち込んでて・・・なんだかそのまま魂が軽くなっちゃって、どこへなりと飛んで行くみたいな気がしたから」
実際、
「だからお帰りなさい、蓮見くん」
「・・・ただいま、縁美」
「ねえ蓮見くん」
「うん」
「今度は船旅がいいな」
ただいま。
おかえり。
おやすみ・・・・・・