SIXTY-NINE 丸まる愛と伸びる愛・・・どう?

文字数 485文字

 69

 あらゆる意味で人間の興味を惹き直接的には芸術的センスを表現することのできる象徴的な数字であり・・・そしてエロティックな記号としての役割も果たす。

 遅くアパートに帰ると、座布団を三枚並べて敷いた上に、縁美(えんみ)が丸まって眠っていた。

 我が家にはお客さん用に座布団の予備がある。
 どうでもいい情報だけど。

「縁美」

 疲れたのだろう。
 縁美も仕事から帰って通勤着のTシャツとデニムのまま、子猫のように丸まって眠ってしまったんだろう。

 僕の声に反応しなかったので、そのまま僕も座布団にお邪魔した。

「狭い」

 座布団から落っこちないように一緒に丸まってみようとすると、顔を向き合っては無理で、互い違いになるように69の形にならざるを得ない。

 ただし、悲しいことに僕たちの位置取りは点対称にはならない。

 理由は、縁美の方が背が高いから。
 更には縁美はとても脚が長いから。

 ただし僕の自尊心をつなぎとめるために僕は完全には丸っこくはならなくて、僕の目の前には縁美のジーンズのちょうど両膝の頭が見える位置になるように上半身は少し伸ばした。

 僕は、思わずブライアン・アダムスの曲を歌った。

 
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