262 ICUとI see you. ならどちら?
文字数 1,146文字
「縁美 」
「あ・・・・・おはよう、蓮見 くん」
「行かなきゃ」
真直 ちゃんからのLINEはとても簡潔だった。
『祖父が救急車で運ばれました。いま市民病院です』
日曜の朝6:30。
アパートにタクシーを呼んですぐに向かった。人手があった方がいいかもしれないので縁美も一緒に。
『蓮見さん』
僕らが病院に着いて受付から案内されて真直ちゃんを見つけて、でもそれは声が聞こえたんじゃなくって、ガラスの向こう側に立つ彼女の唇の動きと、表情だった。
『駄目でした』
朝トイレの前で膝をついている迫田 さんを真直ちゃんが見つけたのが6:00。
直ぐに119して救急車が迫田家に着いたのが6:05。
真直ちゃんが一緒に乗って市民病院に到着したのが6:10。救急車からそのままストレッチャーでICUに搬送されたのが6:12。心疾患が専門の医師がオペの段取りをつけたのが6:25。
内視鏡とカテーテルを使って梗塞を起こしている心臓裏側の動脈にステンを挿入する施術プランが決定し真直ちゃんが医師から同意を求められたのが6:27。同意したのも同6:27。
スタッフを招集し、ICUからオペ室に移動準備を始めたところで迫田 さんの血圧が急低下し心肺停止状態になったのが6:33。
AEDを使用。
5度使用。
6:41死亡。
「おじいちゃん、肩が痛いって昨日のお昼ぐらいから言ってたんです。昔怪我したところの痛みじゃなくって、心筋梗塞の症状だったんですね」
説明してくれた後、真直ちゃんは僕らに腰を折ってお辞儀した。
「蓮見さん、縁美さん、ありがとうございました」
「真直ちゃん」
「真直ちゃん」
僕と縁美は彼女の名前を一度呼ぶだけで後は何もできなくて。
ただ、セレモニーホールとの連絡を取ることしかできなかった。
病院のロビーまで来たセレモニーホールの女性スタッフは僕か縁美に訊こうとしたけど、真直ちゃんは自分が話します、と伝えてとても落ち着いてやりとりした。
家族葬とすること。
親族は全員県外で参列できるのは自分以外に居ないこと。
未成年で所得が無く、相続もどうすればよいか分からないので祖父の預金を直ぐには使えないこと。
だから葬儀費用の支払いについては一旦保留したいこと。
スタッフが席を離れてから今度は僕が真直ちゃんに訊いた。
「ご両親、居なかったんだ」
「うん」
「おばあ様も」
「うん。祖母はわたしが小学校の時に亡くなって。両親は中1の時に無呼吸症候群を起こしたトラックが対向車線を飛び出して来て正面衝突で」
作業場に居る時間がほとんどだったしご両親は仕事があるので姿を見なくて当然だろうと思い込んでた。
真直ちゃんが僕と縁美に向かって泣きそうな顔で言った。
「一緒に居て」
僕はうん、と頷いて、縁美は彼女をくるむようにして抱いてあげた。
「あ・・・・・おはよう、
「行かなきゃ」
『祖父が救急車で運ばれました。いま市民病院です』
日曜の朝6:30。
アパートにタクシーを呼んですぐに向かった。人手があった方がいいかもしれないので縁美も一緒に。
『蓮見さん』
僕らが病院に着いて受付から案内されて真直ちゃんを見つけて、でもそれは声が聞こえたんじゃなくって、ガラスの向こう側に立つ彼女の唇の動きと、表情だった。
『駄目でした』
朝トイレの前で膝をついている
直ぐに119して救急車が迫田家に着いたのが6:05。
真直ちゃんが一緒に乗って市民病院に到着したのが6:10。救急車からそのままストレッチャーでICUに搬送されたのが6:12。心疾患が専門の医師がオペの段取りをつけたのが6:25。
内視鏡とカテーテルを使って梗塞を起こしている心臓裏側の動脈にステンを挿入する施術プランが決定し真直ちゃんが医師から同意を求められたのが6:27。同意したのも同6:27。
スタッフを招集し、ICUからオペ室に移動準備を始めたところで
AEDを使用。
5度使用。
6:41死亡。
「おじいちゃん、肩が痛いって昨日のお昼ぐらいから言ってたんです。昔怪我したところの痛みじゃなくって、心筋梗塞の症状だったんですね」
説明してくれた後、真直ちゃんは僕らに腰を折ってお辞儀した。
「蓮見さん、縁美さん、ありがとうございました」
「真直ちゃん」
「真直ちゃん」
僕と縁美は彼女の名前を一度呼ぶだけで後は何もできなくて。
ただ、セレモニーホールとの連絡を取ることしかできなかった。
病院のロビーまで来たセレモニーホールの女性スタッフは僕か縁美に訊こうとしたけど、真直ちゃんは自分が話します、と伝えてとても落ち着いてやりとりした。
家族葬とすること。
親族は全員県外で参列できるのは自分以外に居ないこと。
未成年で所得が無く、相続もどうすればよいか分からないので祖父の預金を直ぐには使えないこと。
だから葬儀費用の支払いについては一旦保留したいこと。
スタッフが席を離れてから今度は僕が真直ちゃんに訊いた。
「ご両親、居なかったんだ」
「うん」
「おばあ様も」
「うん。祖母はわたしが小学校の時に亡くなって。両親は中1の時に無呼吸症候群を起こしたトラックが対向車線を飛び出して来て正面衝突で」
作業場に居る時間がほとんどだったしご両親は仕事があるので姿を見なくて当然だろうと思い込んでた。
真直ちゃんが僕と縁美に向かって泣きそうな顔で言った。
「一緒に居て」
僕はうん、と頷いて、縁美は彼女をくるむようにして抱いてあげた。