150 行くの行かないのどっちなの!?

文字数 1,129文字

「行こうかな」

 そう呟いて朝の駅から横断歩道まで歩いた。歩行者用信号が青になると僕はもう一度つぶやいた。

「行かないでおこうかな」

 会社に入るとサラトちゃんが現場出動用の道具をバッグに詰め込んでた。
 エスパーみたいにココロを読まれた。

「行った方がいいですよ、蓮見(はすみ)せんぱい」
「知ってたんだ、サラトちゃん」
「はい。せんぱいのことならなんでも」

 後押しされるわけじゃないけど、夜家に帰ってから迷いに迷いながら縁美(えんみ)に話した。

「中学の同窓会の案内来てたよね」
「うん。実家からなんのコメントもつけずに転送されてたよね、お互い」
「行かない?」
「行かない」

 即答だった。

「嫌?」
「いや」

 縁美のこの反応は想像はできてたけど、僕は粘ってみた。

「顔だけ出してみない?縁美」
「蓮見くんはどうして行きたいの?」
「それは・・・・・・」

 それは・・・・・・・

「縁美を見せびらかしたくて」
「ええ?」
「縁美と僕が社会人としてやってる姿を見せたくて」
「・・・・・・バカにされるだけだよ」
「させないよ」
「・・・・・・蓮見くんひとりで行って」
「縁美・・・・・・」

 絵プロ鵜(えぷろう)にLINEした。

 蓮見:絵プロ鵜は行く?
 絵プ:蓮見どの。なぜに行こうという発想になるのかね?

 どうしようか。

 ほんとにひとりで行こうか。

 あ。

 そうだ・・・・・・・

「縁美。金田さんって覚えてる?」
「ええと・・・・・3組の子だったかな」
「そう。新名さんは?」
「バスケ部の子だったかな」
「うん。最初バスケ部で色々あったみたいで辞めて家庭科部に入ってた子。笠原は?」
「生徒会の男の子だよね。蓮見くん」
「うん。そう」

 縁美は正解を言った。

「全員、いじめられてた子だよね」

 学年が250人ほど居て、その内見ただけでいじめられてるって分かる子が10人は居た。僕と縁美はいじめられていた訳じゃないけど、迫害されてた、って意味ではシンパシーを抱いてる。

 絵プロ鵜だってそうだ。

 絵プロ鵜は登校してから下校するまで授業以外の時間のすべてを自席で漫画描いてた。描いてない時はノートにプロットやアイディア出しをずっとしてた。

 修学旅行すら

「漫画を描かなきゃならないさね」

 と辞退した。

 変人扱いだった。

 絵プロ鵜の絵は僕はとても丁寧で魅力があると思ってたけど、くだらない男子女子の奴らは彼女が少しエロティックな描写の作品を描いていたのをその部分だけ抜き出して決めつけた。

「変態」

「蓮見くん。絵プロ鵜ちゃんも巻き込むの?」
「僕は縁美も絵プロ鵜も15歳の時から大人だったって思ってる。スタート地点がそもそもみんなより遥かに先だった。だからその差を僕らがどこまで広げたかを確認しに行きたいんだ」
「蓮見くん」
「なに」
「すごい自信」
「だって。当然だよね?」
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