168 ホントとホントじゃないならどっち?
文字数 1,378文字
「蓮見 くん、泣き顔かわいかったよ」
嘘でも嬉しい。
「ほんとだよ」
それも嘘でも嬉しい。
3日目の電車は途中で単線になって、さらに電車ですらなくなった。
「蓮見くん。ディーゼル車なんてね」
終点は無人駅。
ホームからそのまま出られた。
はっきり言って何もない街。街も無人かと思ってたら子供の声が聞こえてきた。
小さな公園で大きい女の子とちょっと大きい男の子、それから中ぐらいの男の子と、最後のひとりはずっとちっこい、幼稚園か小学生かっていう男の子でバドミントンのダブルスをしている。
兄弟かな?
審判はお父さんなんだろう、ラインも無い芝生なのに『イン!』『アウト!』ってやってる。
「こんにちは」
僕と縁美 はベンチに腰掛けているお母さん?に声をかけた。
「ご兄弟ですか?」
「ええそうよ。4人兄弟」
「一番下のお子さん、小さいのにお姉ちゃんとお兄ちゃんたちに食らいついて・・・かわいいですね」
「ええ・・・歳が離れてるの」
観光地でも無いこの街に来た理由を訊かれて僕らは大まかな事情を話した。
「そう・・・恋人同士なのね。羨ましい・・・」
「なかなか職探しも難しくて」
「でもふたりで彼氏さんのやりたいことを見つける旅なんでしょ?」
「はい」
「羨ましい・・・・・・・・・・・この場所に来ることってもう無いよね」
「はい?・・・・ええ多分」
「なら、話してもいいかな」
なんだろ。
「一番下の子はね。養子なのよ」
「えっ」
なぜ?
ストレートにそう訊いて、実は僕たちが物理的に子供を授からないふたりだとも言った。
僕はしつこく訊いた。
「失礼ですけど子宝にも恵まれて一姫二太郎だったのに・・・どうしてですか?」
僕は納得がいかない。
「あのね。一番下の子はね、ダンナの兄貴の子供。そのお嫁さん・・・つまりわたしの義姉はね、お産の出血がものすごくてあの子を産んでその日の内に死んだのよ。だからわたしたちが養子にしたの。上3人は当然分かってるけど下の子にはまだ伝えてないわ」
「でもほんとの兄弟みたいです」
「上の子たちには本当に頭が下がる。特に三番目の子なんか、下の子がわがまま言って『ほんとの子じゃ無いくせに!』とか口から出そうになったことが何度もあるはず。でも出してない」
「・・・偉いですね・・・」
「その辺が教育、ってやつでね。『言って悲しませるのと言わずに兄貴として注意するのとどっちがいい?』って都度訊いたのよ。下の子が居ないところでね。『兄貴の方がいい』って」
縁美が涙ぐんでる。
「むしろわたしの方が子供じみてたかな。『舅姑と同居もしてるのにその上どうしてお義兄 さんとお義姉 さんの子までわたしが育てなきゃならないの!』ってね」
笑うお母さんも偉い。
「君たちに大事なこと教えてあげるよ」
お父さんもベンチに座った。
「腹が減ったら正しいことも分別つかなくなる・・・上の子たちがお姉さんお兄さんらしくしてるのは僕らの生活にある程度余裕があるからだよ」
「わ。説教くさ」
「でもほんとのことだろう」
「まあそうね。アナタもわたしもそれなりに頑張って貯金もしてたからね・・・・でもわたしの僻 む気持ちも分かってよね」
お父さんの代わりに僕が答えた。
「わかります」
「えっ」
「お母さんの僻む気持ち、わかります」
「?」
お母さんの不思議そうな顔の横で縁美がつぶやいた。
「蓮見くん・・・・・・」
僕にはわかるんだ。
嘘でも嬉しい。
「ほんとだよ」
それも嘘でも嬉しい。
3日目の電車は途中で単線になって、さらに電車ですらなくなった。
「蓮見くん。ディーゼル車なんてね」
終点は無人駅。
ホームからそのまま出られた。
はっきり言って何もない街。街も無人かと思ってたら子供の声が聞こえてきた。
小さな公園で大きい女の子とちょっと大きい男の子、それから中ぐらいの男の子と、最後のひとりはずっとちっこい、幼稚園か小学生かっていう男の子でバドミントンのダブルスをしている。
兄弟かな?
審判はお父さんなんだろう、ラインも無い芝生なのに『イン!』『アウト!』ってやってる。
「こんにちは」
僕と
「ご兄弟ですか?」
「ええそうよ。4人兄弟」
「一番下のお子さん、小さいのにお姉ちゃんとお兄ちゃんたちに食らいついて・・・かわいいですね」
「ええ・・・歳が離れてるの」
観光地でも無いこの街に来た理由を訊かれて僕らは大まかな事情を話した。
「そう・・・恋人同士なのね。羨ましい・・・」
「なかなか職探しも難しくて」
「でもふたりで彼氏さんのやりたいことを見つける旅なんでしょ?」
「はい」
「羨ましい・・・・・・・・・・・この場所に来ることってもう無いよね」
「はい?・・・・ええ多分」
「なら、話してもいいかな」
なんだろ。
「一番下の子はね。養子なのよ」
「えっ」
なぜ?
ストレートにそう訊いて、実は僕たちが物理的に子供を授からないふたりだとも言った。
僕はしつこく訊いた。
「失礼ですけど子宝にも恵まれて一姫二太郎だったのに・・・どうしてですか?」
僕は納得がいかない。
「あのね。一番下の子はね、ダンナの兄貴の子供。そのお嫁さん・・・つまりわたしの義姉はね、お産の出血がものすごくてあの子を産んでその日の内に死んだのよ。だからわたしたちが養子にしたの。上3人は当然分かってるけど下の子にはまだ伝えてないわ」
「でもほんとの兄弟みたいです」
「上の子たちには本当に頭が下がる。特に三番目の子なんか、下の子がわがまま言って『ほんとの子じゃ無いくせに!』とか口から出そうになったことが何度もあるはず。でも出してない」
「・・・偉いですね・・・」
「その辺が教育、ってやつでね。『言って悲しませるのと言わずに兄貴として注意するのとどっちがいい?』って都度訊いたのよ。下の子が居ないところでね。『兄貴の方がいい』って」
縁美が涙ぐんでる。
「むしろわたしの方が子供じみてたかな。『舅姑と同居もしてるのにその上どうしてお
笑うお母さんも偉い。
「君たちに大事なこと教えてあげるよ」
お父さんもベンチに座った。
「腹が減ったら正しいことも分別つかなくなる・・・上の子たちがお姉さんお兄さんらしくしてるのは僕らの生活にある程度余裕があるからだよ」
「わ。説教くさ」
「でもほんとのことだろう」
「まあそうね。アナタもわたしもそれなりに頑張って貯金もしてたからね・・・・でもわたしの
お父さんの代わりに僕が答えた。
「わかります」
「えっ」
「お母さんの僻む気持ち、わかります」
「?」
お母さんの不思議そうな顔の横で縁美がつぶやいた。
「蓮見くん・・・・・・」
僕にはわかるんだ。