EIGHTY-THREE ハヤいのとオソいのとどちらで行く?
文字数 1,148文字
「サラトちゃんは仕事速いねー」
「いいえ、美咲 さん。抜けてるところがいっぱいです」
「そんなことないよ。迅速かつ正確だよ。ね、蓮見 っち」
「はい。僕もそう思います」
事実サラトちゃんは仕事が速い。
飲み込みも速い。
レスポンスも速い。
「蓮見せんぱい」
「?なに?サラトちゃん」
「縁美 さんはどうですか?」
意識してるんだな・・・
さて、縁美は・・・?
「縁美も速いほうだと思うよ」
「職場でですか?」
「まあ・・・家でも」
サラトちゃんの表情の変化を見て、僕は、しまった、と思った。
「お料理とか、ですか?」
「ま、まあ。料理も手早く作ってるかな」
「ほらほら。縁美ちゃんは
フォローするつもりの美咲さんが火を大きくした。
「縁美さんの手際を勉強したいです」
全く訳のわからない展開になってしまった。
「サラトちゃん。ゆっくり来て貰える時にゆっくり来て貰える感じじゃなくてごめんね」
「いいえ、縁美さん。わたしはゆっくりするのがとても苦手なので思い立ったらすぐの方がすっきりするんです」
なんだこのやりとりは。
仕事の後強引に僕にくっついてアパートにサラトちゃんが遊びに来たんだ。
「均等に分けれるおかずでよかった」
縁美が呟きながら晩ご飯のビーフシチューをそれぞれの深皿によそっていく。
「あ。縁美さんトッピングはブロッコリー派なんですね?」
「サラトちゃん家は?」
「アスパラ派です」
その会話を最後に黙々と食べる。
全員、速い。
「おいしい?」
縁美は多分、サラトちゃんに訊いた。
けれども焦った僕は先走ってしまう。
「おいしいよ」
軽く『そうじゃないでしょ』という眼差しを縁美は僕に向ける。
「ごちそうさまでした」
縁美が食器を下げようとするとサラトちゃんが立ち上がった。
「洗います」
今まで見たどの人たちよりも食器洗いが速いふたり。
「兄が車で迎えに来ますので」
仕事帰りに立ち寄るそうだ。
1時間経った。
「サラトちゃん。もしかしてお兄さん事故でも」
「いいえ。兄は事故を起こすようなことは」
2時間。
「サラトちゃん」
「多分、仕事が立て込んでるんだと思います・・・あ、やっぱりそうです」
スマホを確認している。
3時間。
「・・・泊まって行く?」
とうとう縁美が折れた。
けどそれとほぼ同時だった。
「すんませーん、遅くなりましたー!」
サラトちゃんと見た目も雰囲気も兄妹とは思えないようなゆったりとした人が部屋の入り口に立った。
「サラトの兄です」
「兄さん。遅いよ」
けれどもお兄さんは豪快に笑った。
「ははは。サラトは僕を時間引き延ばしによく使うんですよ」
「に、兄さん!」
まあ、そんな気はしてたけど。
けれども別れ際のお兄さんの一言は僕と縁美を戦慄させた。
「またゆっくりできる時に改めてゆっくりご挨拶に参りますー」
「いいえ、
「そんなことないよ。迅速かつ正確だよ。ね、
「はい。僕もそう思います」
事実サラトちゃんは仕事が速い。
飲み込みも速い。
レスポンスも速い。
「蓮見せんぱい」
「?なに?サラトちゃん」
「
意識してるんだな・・・
さて、縁美は・・・?
「縁美も速いほうだと思うよ」
「職場でですか?」
「まあ・・・家でも」
サラトちゃんの表情の変化を見て、僕は、しまった、と思った。
「お料理とか、ですか?」
「ま、まあ。料理も手早く作ってるかな」
「ほらほら。縁美ちゃんは
主婦歴
5年だから」フォローするつもりの美咲さんが火を大きくした。
「縁美さんの手際を勉強したいです」
全く訳のわからない展開になってしまった。
「サラトちゃん。ゆっくり来て貰える時にゆっくり来て貰える感じじゃなくてごめんね」
「いいえ、縁美さん。わたしはゆっくりするのがとても苦手なので思い立ったらすぐの方がすっきりするんです」
なんだこのやりとりは。
仕事の後強引に僕にくっついてアパートにサラトちゃんが遊びに来たんだ。
「均等に分けれるおかずでよかった」
縁美が呟きながら晩ご飯のビーフシチューをそれぞれの深皿によそっていく。
「あ。縁美さんトッピングはブロッコリー派なんですね?」
「サラトちゃん家は?」
「アスパラ派です」
その会話を最後に黙々と食べる。
全員、速い。
「おいしい?」
縁美は多分、サラトちゃんに訊いた。
けれども焦った僕は先走ってしまう。
「おいしいよ」
軽く『そうじゃないでしょ』という眼差しを縁美は僕に向ける。
「ごちそうさまでした」
縁美が食器を下げようとするとサラトちゃんが立ち上がった。
「洗います」
今まで見たどの人たちよりも食器洗いが速いふたり。
「兄が車で迎えに来ますので」
仕事帰りに立ち寄るそうだ。
1時間経った。
「サラトちゃん。もしかしてお兄さん事故でも」
「いいえ。兄は事故を起こすようなことは」
2時間。
「サラトちゃん」
「多分、仕事が立て込んでるんだと思います・・・あ、やっぱりそうです」
スマホを確認している。
3時間。
「・・・泊まって行く?」
とうとう縁美が折れた。
けどそれとほぼ同時だった。
「すんませーん、遅くなりましたー!」
サラトちゃんと見た目も雰囲気も兄妹とは思えないようなゆったりとした人が部屋の入り口に立った。
「サラトの兄です」
「兄さん。遅いよ」
けれどもお兄さんは豪快に笑った。
「ははは。サラトは僕を時間引き延ばしによく使うんですよ」
「に、兄さん!」
まあ、そんな気はしてたけど。
けれども別れ際のお兄さんの一言は僕と縁美を戦慄させた。
「またゆっくりできる時に改めてゆっくりご挨拶に参りますー」