EIGHTY-FIVE クラブとディスコならノリはどっち?
文字数 1,113文字
「店の名前は?」
「ディスコ」
縁美 が美容師の修行をしていた頃の先輩がディスコを開店したという。
ディスコという名前の。
金曜夜に縁美と待ち合わせて一応僕らの地方一番の繁華街に繰り出した。
「あー、縁美ー。久しぶりー」
「ノリリせんぱい。開店おめでとうございます」
「ありがとー。こちら彼氏さんだね?ノリリ、って言いますー」
「蓮見 です」
開店してまだ数日で最初の週末だという。そもそものコンセプトをノリリさんは語ってくれた。
「クラブって概念がそもそもわかんないんだよねー。ならばコテコテのディスコならはっきりしてるかなー、と思って」
結果、客層はかなり年齢が高いようだ。
「ノリリちゃーん、アバかけてアバ」
「ステッペン・ウルフだろう」
「古いなあ。デッド・オア・アライブで踊れないと最先端じゃねえぞ」
中途半端にそれぞれの曲が分かってしまう僕は『温故知新』という言葉を思い浮かべた。
「みんなー!最初の曲はこれでしょうが!」
ノリリさんが流したのはプリンスの「Let’s go crazy」
最高のノリなんだけど、踊るひとたちを見ると全員が微妙なセンスだった。
「蓮見くん。踊ろうよ」
「う、うん・・・」
踊るのは歌うのと同じほど苦手だ。
いざとなると苦手分野でも恥じらいなくこなす縁美がうらやましい。
「蓮見くん。センスないね」
「ごめん」
「わたしが教えてあげるよ」
ノリリさんが僕の前にひょい、っと立った。
背、低いな。
「ほら、彼氏。この曲を作ったプリンスはねえ、ダンスも超一流だったんだよー」
ものすごいステップを踏んで僕に体をぶつけて来た。
まるでプリンス・ファミリーの女性シンガーたちのように腰をグラインドさせるセクシーなダンスを僕に体を密着させて踊るノリリさん。
僕も次第にダンスそのものの高揚感でステップをどんどん展開させて行ってた。
「蓮見くん!」
声に振り向くと、縁美が『人』って漢字を極めて真っ直ぐにしたような形状で長い細い脚をしっかりと開いて立っていた。
振り向いた僕の両手を、ぐっ、と掴む。
「く・・・」
僕の体重をぶら下げる縁美が踏ん張る。
「えい!」
シンプルな、かわいい掛け声が上から降って来て、僕は縁美の股の下を、スライドするように潜った。
自分の意思で見る余裕などないけれども滑る瞬間に今日は踊るために短いスカートを履いているそのアングルをつい見上げてしまった。
Ah, Oh
向こうへ僕の両足が抜けた反動で振り子のように戻す縁美。
「えい!」
また同じかわいらしい掛け声。
しゅるん、と縁美に腕ごと引っ張り上げられて、すとん、と正面で向き合う僕と彼女。
「蓮見くんは、わたしと踊るの!」
客が全員、大声で僕らを冷やかした。
「ディスコ」
ディスコという名前の。
金曜夜に縁美と待ち合わせて一応僕らの地方一番の繁華街に繰り出した。
「あー、縁美ー。久しぶりー」
「ノリリせんぱい。開店おめでとうございます」
「ありがとー。こちら彼氏さんだね?ノリリ、って言いますー」
「
開店してまだ数日で最初の週末だという。そもそものコンセプトをノリリさんは語ってくれた。
「クラブって概念がそもそもわかんないんだよねー。ならばコテコテのディスコならはっきりしてるかなー、と思って」
結果、客層はかなり年齢が高いようだ。
「ノリリちゃーん、アバかけてアバ」
「ステッペン・ウルフだろう」
「古いなあ。デッド・オア・アライブで踊れないと最先端じゃねえぞ」
中途半端にそれぞれの曲が分かってしまう僕は『温故知新』という言葉を思い浮かべた。
「みんなー!最初の曲はこれでしょうが!」
ノリリさんが流したのはプリンスの「Let’s go crazy」
最高のノリなんだけど、踊るひとたちを見ると全員が微妙なセンスだった。
「蓮見くん。踊ろうよ」
「う、うん・・・」
踊るのは歌うのと同じほど苦手だ。
いざとなると苦手分野でも恥じらいなくこなす縁美がうらやましい。
「蓮見くん。センスないね」
「ごめん」
「わたしが教えてあげるよ」
ノリリさんが僕の前にひょい、っと立った。
背、低いな。
「ほら、彼氏。この曲を作ったプリンスはねえ、ダンスも超一流だったんだよー」
ものすごいステップを踏んで僕に体をぶつけて来た。
まるでプリンス・ファミリーの女性シンガーたちのように腰をグラインドさせるセクシーなダンスを僕に体を密着させて踊るノリリさん。
僕も次第にダンスそのものの高揚感でステップをどんどん展開させて行ってた。
「蓮見くん!」
声に振り向くと、縁美が『人』って漢字を極めて真っ直ぐにしたような形状で長い細い脚をしっかりと開いて立っていた。
振り向いた僕の両手を、ぐっ、と掴む。
「く・・・」
僕の体重をぶら下げる縁美が踏ん張る。
「えい!」
シンプルな、かわいい掛け声が上から降って来て、僕は縁美の股の下を、スライドするように潜った。
自分の意思で見る余裕などないけれども滑る瞬間に今日は踊るために短いスカートを履いているそのアングルをつい見上げてしまった。
Ah, Oh
向こうへ僕の両足が抜けた反動で振り子のように戻す縁美。
「えい!」
また同じかわいらしい掛け声。
しゅるん、と縁美に腕ごと引っ張り上げられて、すとん、と正面で向き合う僕と彼女。
「蓮見くんは、わたしと踊るの!」
客が全員、大声で僕らを冷やかした。