SEVENTY-ONE 「おめでとう」と「残念」ならどちらが嬉しい?
文字数 1,210文字
めでたくないけどおめでとう。
回文じゃないよ。
皮肉でもない。
「蓮見 くん。これ、当たっちゃった」
「うん。困ったな・・・」
土曜の朝。
宅急便が届いたんだけど、その大きさに僕も縁美 も困惑してた。
縁美の長いリーチでぐるっと囲ったその円周ぐらいの大きさなんだ。
「ごめんね、蓮見くん。わたしの職場の付き合いのせいで」
「ううん。しょうがないよ。だってそのお客さんって毎日買いに来てくれるんでしょ?」
「うん。ほんとにその人はご厚意で応募してくれたんだろうけど・・・」
相手が縁美のスーパーの常連さんで70歳を過ぎたご高齢なので無碍にするのも気が引けて、結局その応募用紙に縁美は名前を書いた。
生命保険会社のゆるキャラぬいぐるみプレゼントの応募。
「保険の外交員さんなんだ」
「うん。このお年で現役なんだって」
「このゆるキャラの名前は?」
「ユフォー」
ユーフォーではなくユフォー。
縁美の返事に僕は呆れたり笑ったりするのじゃなく、寂しさすら感じた。
形は典型的なアダムスキー型のUFO。
その丸いドームの部分にふたつの点の目が、ちょん、ちょん、とくっついているだけ。
「あ。蓮見くん」
「なに」
「よく見たらツリ目だよ」
えっ。
「ほんとだ・・・胡麻の尖った方を斜め下に向けた感じで・・・怒ってるのかな?」
「多分。でも蓮見くん。この子、何に怒ってるんだろうね?」
この子って・・・
まあ、ちょっとだけかわいらしい風貌かな、とは思うけど。
「そうだね・・・地球侵略のスケジュールが疫病のせいで遅延してることかな」
「あっ、でも、疫病がこのユフォーの侵略計画の取っ掛かりかもしれないよ」
「うーん。じゃあ、侵略しようとしてみたけど意外につまらない星だったから怒ってるとか」
「地球が?」
「そう。つまらない星」
「違うと思うよ」
「どうして?」
「だって、地球はつまらなくないもの」
ワールドワイドやらグローバルどころか大宇宙を駆け巡るような縁美のスケールの大きなコメントに僕も大胆な仮説を立てた。
「実は・・・ユフォーは宇宙の安寧を司る神秘的な存在で、怒りの表情を示すことで全宇宙の生命体に対して警告を発しているんだ」
「警告?」
「そう。戦争やテロなんかで同族同士殺し合ってることを戒めるために」
「わ。深いね。きっとそうだよ」
「え・・・ほんとにそう思う?」
「うん。さすが蓮見くん」
縁美はスーパーの公式LINEで登録してくれているそのお客さんに、プレゼントが当選したことのお礼を送信した。
「あ。返信来たよ。『おめでとう!』だって」
「うん」
「じゃあ、感想も伝えておくね。『怒った表情がかわいいです』」
しばらくして返信が入った。
縁美の表情が翳 る。
「・・・タレ目なんだって」
「えっ」
「ほんとはタレ目なんだって・・・ぬいぐるみの製造業者へのオーダーミスで間違ってツリ目みたいに目をくっつけたぬいぐるみが混じってるんだって」
「はあ」
最後の返信が入った。
『残念だったね』
回文じゃないよ。
皮肉でもない。
「
「うん。困ったな・・・」
土曜の朝。
宅急便が届いたんだけど、その大きさに僕も
縁美の長いリーチでぐるっと囲ったその円周ぐらいの大きさなんだ。
「ごめんね、蓮見くん。わたしの職場の付き合いのせいで」
「ううん。しょうがないよ。だってそのお客さんって毎日買いに来てくれるんでしょ?」
「うん。ほんとにその人はご厚意で応募してくれたんだろうけど・・・」
相手が縁美のスーパーの常連さんで70歳を過ぎたご高齢なので無碍にするのも気が引けて、結局その応募用紙に縁美は名前を書いた。
生命保険会社のゆるキャラぬいぐるみプレゼントの応募。
「保険の外交員さんなんだ」
「うん。このお年で現役なんだって」
「このゆるキャラの名前は?」
「ユフォー」
ユーフォーではなくユフォー。
縁美の返事に僕は呆れたり笑ったりするのじゃなく、寂しさすら感じた。
形は典型的なアダムスキー型のUFO。
その丸いドームの部分にふたつの点の目が、ちょん、ちょん、とくっついているだけ。
「あ。蓮見くん」
「なに」
「よく見たらツリ目だよ」
えっ。
「ほんとだ・・・胡麻の尖った方を斜め下に向けた感じで・・・怒ってるのかな?」
「多分。でも蓮見くん。この子、何に怒ってるんだろうね?」
この子って・・・
まあ、ちょっとだけかわいらしい風貌かな、とは思うけど。
「そうだね・・・地球侵略のスケジュールが疫病のせいで遅延してることかな」
「あっ、でも、疫病がこのユフォーの侵略計画の取っ掛かりかもしれないよ」
「うーん。じゃあ、侵略しようとしてみたけど意外につまらない星だったから怒ってるとか」
「地球が?」
「そう。つまらない星」
「違うと思うよ」
「どうして?」
「だって、地球はつまらなくないもの」
ワールドワイドやらグローバルどころか大宇宙を駆け巡るような縁美のスケールの大きなコメントに僕も大胆な仮説を立てた。
「実は・・・ユフォーは宇宙の安寧を司る神秘的な存在で、怒りの表情を示すことで全宇宙の生命体に対して警告を発しているんだ」
「警告?」
「そう。戦争やテロなんかで同族同士殺し合ってることを戒めるために」
「わ。深いね。きっとそうだよ」
「え・・・ほんとにそう思う?」
「うん。さすが蓮見くん」
縁美はスーパーの公式LINEで登録してくれているそのお客さんに、プレゼントが当選したことのお礼を送信した。
「あ。返信来たよ。『おめでとう!』だって」
「うん」
「じゃあ、感想も伝えておくね。『怒った表情がかわいいです』」
しばらくして返信が入った。
縁美の表情が
「・・・タレ目なんだって」
「えっ」
「ほんとはタレ目なんだって・・・ぬいぐるみの製造業者へのオーダーミスで間違ってツリ目みたいに目をくっつけたぬいぐるみが混じってるんだって」
「はあ」
最後の返信が入った。
『残念だったね』