ONE HUNDRED FOURTEEN キズとアザならどっち?
文字数 1,179文字
サラトちゃんが怪我をした。
「うわー。大丈夫?」
「すみません美咲 さん。社会人失格です」
昨夜残業で遅くなって、でもストイックなサラトちゃんは帰宅ランをして帰ったんだけど・・・
「照明の無い橋の上で無灯火の自転車と接触して」
「転んだんだ」
「はい・・・・・」
アスファルトとコンクリートのつなぎ目の突起にシューズの爪先を引っ掛けて、スピードもトップに近かったので完全に足を掬われたような状態で手もつけずに転んだという。
きれいにパックリと開いたキズで骨まで見えるぐらい深かったけど膝なので痛みはそれほど無く歩けたそうだ。
そのままスマホで検索して近くにあった総合病院の救急に自力で行ったらしい。
「局部麻酔して洗浄して10針縫いました」
「化膿は?」
「一応今日仕事が終わったら家の近くの整形に行って化膿止めの処方と抜糸の段取りを打ち合わせるよう救急の先生から指示を受けました」
抜糸までいけばなんとか膝は曲げられるようになるらしい。
けれども美咲さんは冷静に対応した。
「残念だけどそれまでは現場仕事は戦力外通告よ」
「申し訳ありません」
腰を90°よりも深く曲げるサラトちゃん。
厳しいけど、僕らは代わりがきかず日々待ったなしの零細企業の社員なんだ。
美咲さん・僕・サラトちゃんの3人でこの後の仕事の役割分担を急遽打ち合わせた。
夜、なんとなく僕自身も切ないような悲しいような寂しいような気分でアパートに着いた。
すぐに異変に気付いた。
「縁美 。そのほっぺた・・・」
「あ、うん。ちょっと」
「どうしたの?」
「ええと・・・・・・・・ほら、最近連勤で生活が不規則だったから、肌荒れかな?」
「なに言ってるの!?」
僕は縁美に少しきつい口調で訊いた。
決して彼女を子供扱いするわけじゃない。
いや。
これは小学生の子供だろうと社会で独り立ちしてる大人だろうと、親であったりパートナーであったりする立場の人間の勤めだ。
「そのアザの理由を僕はきちんと知る必要がある」
「・・・うん」
「そして、キミを守る義務がある」
「・・・・・蓮見 くん、あのね・・・・」
縁美の話は常軌を逸してると思った。
「ウチのスーパーの鮮魚部が居酒屋さんへ卸す魚のデリバリーをミスって。そのお店との取引はわたしが営業かけて始めてく下さったものだったからわたしが謝罪に行ったんだけどお許し頂けなくて」
「それで殴られたの?」
「うん」
「バッグで?」
「うん。殴る、っていうか、そのひとが振り回したはずみで当たっちゃった、って感じで」
「でも、男のくせに女性の頬をぶつなんて!」
「違うよ」
「えっ」
「相手も女性。30歳ぐらいかな。ほんとに仕事のできる方で。お怒りは当然だから」
「でも」
縁美は笑った。
「殴られて結果オーライ!そのひとの方がびっくりしちゃってごめんね、ごめんね、ってすぐにいい感じになったから」
縁美・・・・・・・・・
「うわー。大丈夫?」
「すみません
昨夜残業で遅くなって、でもストイックなサラトちゃんは帰宅ランをして帰ったんだけど・・・
「照明の無い橋の上で無灯火の自転車と接触して」
「転んだんだ」
「はい・・・・・」
アスファルトとコンクリートのつなぎ目の突起にシューズの爪先を引っ掛けて、スピードもトップに近かったので完全に足を掬われたような状態で手もつけずに転んだという。
きれいにパックリと開いたキズで骨まで見えるぐらい深かったけど膝なので痛みはそれほど無く歩けたそうだ。
そのままスマホで検索して近くにあった総合病院の救急に自力で行ったらしい。
「局部麻酔して洗浄して10針縫いました」
「化膿は?」
「一応今日仕事が終わったら家の近くの整形に行って化膿止めの処方と抜糸の段取りを打ち合わせるよう救急の先生から指示を受けました」
抜糸までいけばなんとか膝は曲げられるようになるらしい。
けれども美咲さんは冷静に対応した。
「残念だけどそれまでは現場仕事は戦力外通告よ」
「申し訳ありません」
腰を90°よりも深く曲げるサラトちゃん。
厳しいけど、僕らは代わりがきかず日々待ったなしの零細企業の社員なんだ。
美咲さん・僕・サラトちゃんの3人でこの後の仕事の役割分担を急遽打ち合わせた。
夜、なんとなく僕自身も切ないような悲しいような寂しいような気分でアパートに着いた。
すぐに異変に気付いた。
「
「あ、うん。ちょっと」
「どうしたの?」
「ええと・・・・・・・・ほら、最近連勤で生活が不規則だったから、肌荒れかな?」
「なに言ってるの!?」
僕は縁美に少しきつい口調で訊いた。
決して彼女を子供扱いするわけじゃない。
いや。
これは小学生の子供だろうと社会で独り立ちしてる大人だろうと、親であったりパートナーであったりする立場の人間の勤めだ。
「そのアザの理由を僕はきちんと知る必要がある」
「・・・うん」
「そして、キミを守る義務がある」
「・・・・・
縁美の話は常軌を逸してると思った。
「ウチのスーパーの鮮魚部が居酒屋さんへ卸す魚のデリバリーをミスって。そのお店との取引はわたしが営業かけて始めてく下さったものだったからわたしが謝罪に行ったんだけどお許し頂けなくて」
「それで殴られたの?」
「うん」
「バッグで?」
「うん。殴る、っていうか、そのひとが振り回したはずみで当たっちゃった、って感じで」
「でも、男のくせに女性の頬をぶつなんて!」
「違うよ」
「えっ」
「相手も女性。30歳ぐらいかな。ほんとに仕事のできる方で。お怒りは当然だから」
「でも」
縁美は笑った。
「殴られて結果オーライ!そのひとの方がびっくりしちゃってごめんね、ごめんね、ってすぐにいい感じになったから」
縁美・・・・・・・・・