272 日曜と月曜と・・・リレーで繋いでみませんか?

文字数 871文字

日曜の夜が怖いのは僕らだけじゃない。

 だったらさ・・・

「寝る前のみんなにアイス配るとか」
「溶けちゃうし小さな子は虫歯になっちゃう。却下却下」
蓮見(はすみ)くんにだけじゃなくてみんなに鼻パックのクリームをぬりぬりしてあげるとか」
縁美(えんみ)が?僕以外の男にも?」
「うん」
「却下却下!」
「嫉妬してる。じゃあ蓮見くんが考えて?」
「ええと」
「うん」
「うーんと」
「うん」
「えとえとえと・・・あっ!ハートウォーミングな超大作映画を撮る!タイトルは『癒しの野望』」
「却下あっ!」

 これじゃいつもの日曜の夜みたいに僕と縁美がじゃれあってまったりしてるだけでホンキで月曜の朝が来るのを泣きたい気持ちで堪えているひとたちを救うなど及びもつかない。

 そういえば気になったので試行的に同居を開始した『僕らの子供たち』が暮らす迫田(さこた)邸にテレビ電話してみた。

『蓮見どの縁美どの、な、なにかね!?こちらは手が離せないさね!あっ!真直(まなお)どの!』
『マクラ・ガトリング砲!ひゃひゃひゃ!』
「え、絵プロ鵜(えぷろう)ちゃん!」
『わあああっ!』
『ひゃひゃひゃ!』

 ・・・・・・切れた。

「なるほど。マクラ投げもたしかに憩うね」
「は、蓮見くん!そんな長閑なこと言ってないで、絵プロ鵜ちゃんを助けに行かないと!」

 まあマクラを投げられたところで死にも怪我もしないだろう。
 ただ、昔は若い職人さんたちを家に泊めてたから布団もマクラも迫田家には何組もあって、だから『マクラ・ガトリング砲』などという真直ちゃんの必殺技が繰り出されたわけだけど。

 僕らのアパートも、迫田家も、日曜の夜は更けていく。

 三春(みはる)ちゃんも北海道の赤ちゃんとダンナさんとテレビ電話をしているだろう。

 美咲(みさき)さんはお母さんの週末介護からもう帰ってきただろうか。

 サラトちゃんはまだ遠征中だろうか。
 勝つこともあるだろうし、負けることもあるんだろう。

 姉さんたちは東京でどうしてるだろうか。

 強い部分しか見せない父さんも、父さんの傘の下で生きている母さんも、眠れないことがあるかもしれない。

「おやすみなさい、蓮見くん」
「おやすみなさい、縁美」

 おやすみなさい。
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