252 大人と子供ならどちら?
文字数 1,281文字
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
縁美とそれだけ交わして僕は家を出た。そのままいつもとは反対方向のバスに乗って純志 の家に向かった。純志と母親が玄関に立っていた。
「行こうか」
「はい」
「あの・・・・」
「なんですか?」
「その・・・・・・よろしくお願いします・・・・・」
この母親は子供だ。
僕はこう思う。
50歳だろうが80歳だろうが為すべきことを為さないのならばそれは子供だ。
いじめを無くす。
それが親や教師や社会の大人が為すべきことなのであれば、そう努力するのが大人だろう。
「学校見学を申請します」
「えっと。誰ですか?」
「蓮見 と申します」
「・・・・だから、誰?」
純志と一緒に職員室に入り教頭に純志の母親が押印した委任状を見せる。
「ええと・・・・法的根拠は」
「あるでしょう」
厳密に言えば他の生徒の個人情報を僕に晒すことの問題もあるだろうけど、僕から学校の対応を批判されることをより恐れたようだ。
純志の担任の後に続いて純志と僕とで教室に入った。智位郎の姿が見えたけど、僕とは一切無関係として振る舞うよう打ち合わせてある。
生徒は僕と純志を見てざわざわしているけど、別の教師をいじめているらしいこの担任は何の説明もしなかった。
純志の席は一番後ろの、その列よりも更に2m後ろの壁ギリギリに「隔離」されてた。
担任がそのまま社会科の授業を始める。憲法の基本的人権の説明がなされた。
「えーと。この教室で基本的人権の無い奴はいないよな?」
担任が笑いながらそう言うと、クラスの女子・男子たちが一斉に純志を振り返って、笑った。
元々俯いてたけれども更に表情が消えていく純志。
「すみません」
僕はこの担任を「先生」と呼ぶ気は無かった。
「な、なんですか?」
「それは僕がお訊きしたい。今のは何ですか?」
「ギャグですよ。人間にはユーモアが必要しょう?」
担任の言葉に反応して一斉に笑う女子・男子たち。笑っていないのは智位郎だけだ。
僕は担任の眼を見て言った。
「マネジメントができてませんね」
「あ?」
担任は僕の眼を見返して凄んだ。
「部外者がほんの一瞬の風景を切り取って何が分かるんですか?」
「ずっと一緒にいて分からないこと自体がマネジメントの欠如だ」
「素人の見方だ」
「プロの生徒なんているんですか?」
僕はその後、純志とずっと一緒に居た。
他の授業も。
昼食の時間も。
トイレに行く時も。
さすがに不気味がって僕に話しかけてくる生徒もいない。
「は、蓮見さん・・・・」
「なんだい、純志?」
「すみません・・・・」
「純志が謝る必要なんてない」
「え?」
「純志。キミが何か悪いことをしてるかい?」
僕がそう言うと、彼はうっすら涙を浮かべた。
終業のHRになって再び担任がやって来た。僕を完全無視していたけど・・・・
「明日も来ます」
僕がそう言うと、生徒がざわりとした。
「あんた、ニート?」
担任がそう言うとクスクス笑う生徒が何人も居た。
「いいえ。勤め人です」
「仕事は?いいの?」
「よくない」
「じゃあ来るなよ。仕事行けよ」
僕は担任に言った。
「ならば早くアナタの職責を果たしてください」
「行ってきます」
縁美とそれだけ交わして僕は家を出た。そのままいつもとは反対方向のバスに乗って
「行こうか」
「はい」
「あの・・・・」
「なんですか?」
「その・・・・・・よろしくお願いします・・・・・」
この母親は子供だ。
僕はこう思う。
50歳だろうが80歳だろうが為すべきことを為さないのならばそれは子供だ。
いじめを無くす。
それが親や教師や社会の大人が為すべきことなのであれば、そう努力するのが大人だろう。
「学校見学を申請します」
「えっと。誰ですか?」
「
「・・・・だから、誰?」
純志と一緒に職員室に入り教頭に純志の母親が押印した委任状を見せる。
「ええと・・・・法的根拠は」
「あるでしょう」
厳密に言えば他の生徒の個人情報を僕に晒すことの問題もあるだろうけど、僕から学校の対応を批判されることをより恐れたようだ。
純志の担任の後に続いて純志と僕とで教室に入った。智位郎の姿が見えたけど、僕とは一切無関係として振る舞うよう打ち合わせてある。
生徒は僕と純志を見てざわざわしているけど、別の教師をいじめているらしいこの担任は何の説明もしなかった。
純志の席は一番後ろの、その列よりも更に2m後ろの壁ギリギリに「隔離」されてた。
担任がそのまま社会科の授業を始める。憲法の基本的人権の説明がなされた。
「えーと。この教室で基本的人権の無い奴はいないよな?」
担任が笑いながらそう言うと、クラスの女子・男子たちが一斉に純志を振り返って、笑った。
元々俯いてたけれども更に表情が消えていく純志。
「すみません」
僕はこの担任を「先生」と呼ぶ気は無かった。
「な、なんですか?」
「それは僕がお訊きしたい。今のは何ですか?」
「ギャグですよ。人間にはユーモアが必要しょう?」
担任の言葉に反応して一斉に笑う女子・男子たち。笑っていないのは智位郎だけだ。
僕は担任の眼を見て言った。
「マネジメントができてませんね」
「あ?」
担任は僕の眼を見返して凄んだ。
「部外者がほんの一瞬の風景を切り取って何が分かるんですか?」
「ずっと一緒にいて分からないこと自体がマネジメントの欠如だ」
「素人の見方だ」
「プロの生徒なんているんですか?」
僕はその後、純志とずっと一緒に居た。
他の授業も。
昼食の時間も。
トイレに行く時も。
さすがに不気味がって僕に話しかけてくる生徒もいない。
「は、蓮見さん・・・・」
「なんだい、純志?」
「すみません・・・・」
「純志が謝る必要なんてない」
「え?」
「純志。キミが何か悪いことをしてるかい?」
僕がそう言うと、彼はうっすら涙を浮かべた。
終業のHRになって再び担任がやって来た。僕を完全無視していたけど・・・・
「明日も来ます」
僕がそう言うと、生徒がざわりとした。
「あんた、ニート?」
担任がそう言うとクスクス笑う生徒が何人も居た。
「いいえ。勤め人です」
「仕事は?いいの?」
「よくない」
「じゃあ来るなよ。仕事行けよ」
僕は担任に言った。
「ならば早くアナタの職責を果たしてください」