171 駅弁と物産展ならどっち?

文字数 971文字

 旅も4日目。

 明日には僕らの街まで戻り着く前提で今日は移動した。方角としては戻りつつも通っていない県や市や街を通過しながら。

 時間節約のために三食コンビニごはんの持ち込みにしようとも思ったけど、

「寂しすぎるよ蓮見(はすみ)くん」

 縁美(えんみ)の一言で考え直した。

 駅弁を買おう。

 けれども。

「駅弁・・・意外と売ってないね」

 ローカルな駅ならばコンビニがまさしくKIOSK代わりだし、KIOSKがあったとしても地方の名物ではなくサンドイッチやおにぎりといった軽食が主流になってる。

「リミッターを外そう」

 僕の提案に縁美も乗った。

「蓮見くん・・・・この団子、極めて甘いね」
「だからこっちのみたらしの方も買ったんだ」
「でも蓮見くん。みたらしも醤油の後には甘味が残るよ?」
「じゃあこの梅干しを練り込んだ羊羹は?」

 腹持ちの良さそうな餅や団子や饅頭も食事の範疇に無理やり入れた。

 けれどもさすがに朝昼と結局は甘いものばかりで頭痛がしそうになっていたところに5〜6人の紙袋をぶら下げた年配女性たちが電車に乗ってきた。

「いやー、大漁大漁!」

 急行の通過待ちでしばらく停車していたので思わず縁美が訊いた。

「それって物産展ですね!?」
「そうよー。ほら、北海道はもちろん、九州も関西も総舐めよー」

 迷わず下車した。

「あのデパートだね」

 見ると併設された立体駐車場の前に車がぐるりと渋滞している。

 僕らはデパートの中に入ってエスカレーターで催事場に向かった。

「はぁいはぁい!本場大阪のお好み焼きでございまぁす!」
「よぉよぉ!こっちは近畿のたこ焼きだよっ!」

 なんかヘンだ。

 僕ははっぴを着たデパートのスタッフさんに訊いた。

「あの・・・・海鮮弁当とか牛の時雨煮弁当とか・・・おかずになるような名物とか無いんですか?」
「お客様申し訳ございません。お昼前にほとんど売り切れてしまったんですよー」

 そこまでの人気か!

「後はおやつっぽい軽食だとか・・・・まあ、お菓子ですかね」

 縁美が僕に訊いてきた。

「どうしよう?蓮見くん」
「・・・・じゃあせめてこの地方の名物にしようか」

 本来は現地民が他県の名物を楽しむ場であるところ、僕らは敢えて地元民の普段食べているものを物色した。

「地元の物産ってどれですか?」

 一番ガラガラの地元ブースの売り子さんに声をかけた。

「甘酒です」

 食べ物ですらなかった。
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