ONE HUNDRED ONE お見舞いならメロンとレモンどっち?
文字数 1,169文字
夏風邪をひいてしまった。
熱は昨夜の内に大体下がったんだけどまだ体が重いので今日一日仕事は休みをもらった。
「蓮見 くん、ほんとにひとりで大丈夫?」
「うん。もうふらふらしないし。縁美 は心配しないで仕事行ってきて
」
「じゃあ無理せずゆっくり寝ててね。お昼は冷蔵庫に入れてあるからね」
「うん。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
クーラーはかけたままでほんの少し窓の隙間を開けて外の風を流し入れて、布団に仰向けに寝ていると、中学二年生の夏休みに入る直前に寝込んだ時のことを思い出した。
父親も母親も仕事に出ていたし僕も熱で起き出せない状態だったので昼間は誰も出ることができなかったんだろう、通知表と夏休みの課題一式を夜になってから届けてくれたクラスの子が居た。
母親が受け取ったんだけど、その女子は名前も言わずに帰って行ったという。
当たり前だけど、プリントを届けに来て男子の部屋まで持って入って来るというシチュエーションは現実にはあり得ない。それどころか個人情報の管理が厳しいきょうび生徒が届けに来ることさえ稀だろう。
通知表は『親展』と書いた封筒に入れてあったので、それが対策のつもりだったんだろう。
母親にその女子の特徴を聞いたけど、さあ、って答えただけだった。
縁美が用意してくれていたお昼を食べて午後から少し眠った。
眼が覚めると、まだ日差しがあるけれども夜の7:00少し前だった。
「ただいま」
縁美だ。
「こんばんは」
これは・・・
「サラトちゃん」
「蓮見せんぱい、大丈夫ですか?」
「どうしたの?」
「縁美さんにせんぱいをお見舞いしたいってLINEして途中で合流して連れてきてもらったんです」
立方体の箱を手に持っていた。
「メロンです」
駅に着いてからサラトちゃんが買ってきたという。
1/4に切ってスイカと同じ要領で皮にそって包丁を入れ、ブロック状に切り出してくれた。
3人でいただく。
縁美が言った。
「やっぱりお見舞いはメロンだよね・・・」
「え。そうですね・・・今どきフルーツショップの個店が珍しかったものですから、なんとなくですけど」
「そうだよね、サラトちゃん。やっぱりメロンだよね」
縁美とサラトちゃんが一緒にキッチンに立ってなべ焼きうどんを作ってくれて三人で晩御飯を食べた。僕もなんとか起き出せたのでテーブルに座って。
「風邪になべ焼きは鉄板」
「クーラーの中でなべ焼きって贅沢ですよね」
サラトちゃんが帰った後、熱いお湯に固く絞ったおしぼりで、縁美が僕の首筋を拭ってくれた。
「蓮見くん。覚えてない?」
「え。なに?」
「中学の時のお見舞い」
「お見舞い?」
「レモンピールのジャム」
あっ。
そう言えば。
夜中に麦茶を飲もうと思って冷蔵庫を開けたら手の平に乗るぐらいの透明で黄金色のかわいいビンが入ってた。
なんで母親は言わなかったんだろ。
熱は昨夜の内に大体下がったんだけどまだ体が重いので今日一日仕事は休みをもらった。
「
「うん。もうふらふらしないし。
」
「じゃあ無理せずゆっくり寝ててね。お昼は冷蔵庫に入れてあるからね」
「うん。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
クーラーはかけたままでほんの少し窓の隙間を開けて外の風を流し入れて、布団に仰向けに寝ていると、中学二年生の夏休みに入る直前に寝込んだ時のことを思い出した。
父親も母親も仕事に出ていたし僕も熱で起き出せない状態だったので昼間は誰も出ることができなかったんだろう、通知表と夏休みの課題一式を夜になってから届けてくれたクラスの子が居た。
母親が受け取ったんだけど、その女子は名前も言わずに帰って行ったという。
当たり前だけど、プリントを届けに来て男子の部屋まで持って入って来るというシチュエーションは現実にはあり得ない。それどころか個人情報の管理が厳しいきょうび生徒が届けに来ることさえ稀だろう。
通知表は『親展』と書いた封筒に入れてあったので、それが対策のつもりだったんだろう。
母親にその女子の特徴を聞いたけど、さあ、って答えただけだった。
縁美が用意してくれていたお昼を食べて午後から少し眠った。
眼が覚めると、まだ日差しがあるけれども夜の7:00少し前だった。
「ただいま」
縁美だ。
「こんばんは」
これは・・・
「サラトちゃん」
「蓮見せんぱい、大丈夫ですか?」
「どうしたの?」
「縁美さんにせんぱいをお見舞いしたいってLINEして途中で合流して連れてきてもらったんです」
立方体の箱を手に持っていた。
「メロンです」
駅に着いてからサラトちゃんが買ってきたという。
1/4に切ってスイカと同じ要領で皮にそって包丁を入れ、ブロック状に切り出してくれた。
3人でいただく。
縁美が言った。
「やっぱりお見舞いはメロンだよね・・・」
「え。そうですね・・・今どきフルーツショップの個店が珍しかったものですから、なんとなくですけど」
「そうだよね、サラトちゃん。やっぱりメロンだよね」
縁美とサラトちゃんが一緒にキッチンに立ってなべ焼きうどんを作ってくれて三人で晩御飯を食べた。僕もなんとか起き出せたのでテーブルに座って。
「風邪になべ焼きは鉄板」
「クーラーの中でなべ焼きって贅沢ですよね」
サラトちゃんが帰った後、熱いお湯に固く絞ったおしぼりで、縁美が僕の首筋を拭ってくれた。
「蓮見くん。覚えてない?」
「え。なに?」
「中学の時のお見舞い」
「お見舞い?」
「レモンピールのジャム」
あっ。
そう言えば。
夜中に麦茶を飲もうと思って冷蔵庫を開けたら手の平に乗るぐらいの透明で黄金色のかわいいビンが入ってた。
なんで母親は言わなかったんだろ。