THIRTEEN 金曜の夜はシネコンとミニシアターどっち?
文字数 1,068文字
超大作と小作品。
アクションとハートウォーミング。
大スターと舞台俳優。
色々挙げてみたけどなんとなく大きな映画館と小さな映画館の傾向っぽいものだと思っている。
縁美 はというと・・・
「蓮見 くん。ホラー以外ならなんでもいいよ」
晩ご飯なんでもいいよと言われるのと大して変わらない幅の広さで困ってしまった僕は、二択を迫った。
「ショッピングセンターのシネコンとアーケード通りのミニシアターとどっち?」
「えっ・・・」
ふたりでレンタルDVDを借りてアパートで観る時も頓着せずに怖いもの以外コメディからSFまで雑食で観てるから映画館の種類を縁美に選んでもらえばそれだけで否応なく選択肢をぐっと絞れるだろうと思った。
けれども縁美は全く新しい提言を僕にした。
「カフェシアター、とか」
それは僕らの街の唯一のデパートがある目抜き通りの、けれども郊外の大規模ショッピングモールよりもはるかに人通りの少なくなったエリアに新しくできた新しい形態の映画館?カフェ?だった。
一階は通常のカフェ。
二階もカフェなのだけれども、一昔前のカウチ・ポテト的なくつろぎ方のできるレザーソファや1人がけの椅子と言った輸入家具と軽いアルコールも頼めるバーラウンジのような10人足らずで観るような、それはやっぱりハウス・シアターとでも呼べるような空間だった。
「いらっしゃいませ」
『高いんじゃないの?』
『いや。映画料金プラス・ワンドリンクの価格設定だから・・・』
とスタッフの前でひそひそ話をする縁美と僕。
客は僕らの他に男女2人連れが2組。
なんだか少し隠微な雰囲気もあるけど、これが大人の世界、って言えるかもしれない。
20歳になってから、試みで何度か缶ビールをふたりでアパートで飲んだことはあったけど、こうして外でお酒を飲むのは初めてだった。
上映作品は、なんと『ラスト・タンゴ・イン・パリ』
縁美が僕に声を潜めて質問してくる。
『ちょ、ちょっと蓮見くん。あれ、何してるの?』
『・・・なんだろね』
『ねえ、あれは!?あれは!?』
『・・・・・さあ』
全編ものすごくエロティックなシーンの連続だった。
けれども、とても悲しい映画だった。
ラストシーンを待たずに僕は何度か涙を滲ませた。
縁美も途中から無言になった。
「蓮見くん。良かったね」
「うん」
ふたりして頼んだジントニックは一杯ずつだけだったけど、本当に酔いしれた気分になった。帰り道、さびれた目抜き通りを並んで・・・珍しく腕を組んで歩いた。
けれども縁美が、僕を現実に引き戻す一言を言った。
「わたしはああはなりたくない」
アクションとハートウォーミング。
大スターと舞台俳優。
色々挙げてみたけどなんとなく大きな映画館と小さな映画館の傾向っぽいものだと思っている。
「
晩ご飯なんでもいいよと言われるのと大して変わらない幅の広さで困ってしまった僕は、二択を迫った。
「ショッピングセンターのシネコンとアーケード通りのミニシアターとどっち?」
「えっ・・・」
ふたりでレンタルDVDを借りてアパートで観る時も頓着せずに怖いもの以外コメディからSFまで雑食で観てるから映画館の種類を縁美に選んでもらえばそれだけで否応なく選択肢をぐっと絞れるだろうと思った。
けれども縁美は全く新しい提言を僕にした。
「カフェシアター、とか」
それは僕らの街の唯一のデパートがある目抜き通りの、けれども郊外の大規模ショッピングモールよりもはるかに人通りの少なくなったエリアに新しくできた新しい形態の映画館?カフェ?だった。
一階は通常のカフェ。
二階もカフェなのだけれども、一昔前のカウチ・ポテト的なくつろぎ方のできるレザーソファや1人がけの椅子と言った輸入家具と軽いアルコールも頼めるバーラウンジのような10人足らずで観るような、それはやっぱりハウス・シアターとでも呼べるような空間だった。
「いらっしゃいませ」
『高いんじゃないの?』
『いや。映画料金プラス・ワンドリンクの価格設定だから・・・』
とスタッフの前でひそひそ話をする縁美と僕。
客は僕らの他に男女2人連れが2組。
なんだか少し隠微な雰囲気もあるけど、これが大人の世界、って言えるかもしれない。
20歳になってから、試みで何度か缶ビールをふたりでアパートで飲んだことはあったけど、こうして外でお酒を飲むのは初めてだった。
上映作品は、なんと『ラスト・タンゴ・イン・パリ』
縁美が僕に声を潜めて質問してくる。
『ちょ、ちょっと蓮見くん。あれ、何してるの?』
『・・・なんだろね』
『ねえ、あれは!?あれは!?』
『・・・・・さあ』
全編ものすごくエロティックなシーンの連続だった。
けれども、とても悲しい映画だった。
ラストシーンを待たずに僕は何度か涙を滲ませた。
縁美も途中から無言になった。
「蓮見くん。良かったね」
「うん」
ふたりして頼んだジントニックは一杯ずつだけだったけど、本当に酔いしれた気分になった。帰り道、さびれた目抜き通りを並んで・・・珍しく腕を組んで歩いた。
けれども縁美が、僕を現実に引き戻す一言を言った。
「わたしはああはなりたくない」