ONE HUNDRED NINE ローファーとデッキシューズならどっち?
文字数 1,141文字
サラトちゃんがおしゃれをしている。
いわゆるビジネス・スキルと若手リーダー育成を兼ねた研修に今日から一週間通うんだ。中卒のサラトちゃんへのこれは社長の気配りだ。
「いいねいいね。キマッてるね」
「美咲 さん、ありがとうございます」
僕は何気なくサラトちゃんの足元を見て言った。
「そのローファー、かわいいね」
「えっ・・・」
言葉に詰まるサラトちゃん。
もしかして何かセクハラまがいの発言だったろうか?
「蓮見 せんぱい、ありがとうございます・・・・わたしのファッションを『かわいい』なんて言われたことがなかったので」
「ああ・・・・・・」
なるほど。
カッコいい、って言われるばっかりだったかもな。
「見て分かると思いますけどこのローファー、サイズが・・・」
大きい。
「背が高いのでヒールはやめてますけど、なんだか安全靴みたいで恥ずかしいです」
かわいそうに。
僕は具体的に褒めてあげることにした。
「似合ってるよ。紺もスーツの色と合ってるし蝶々みたいな形のリボンもかわいいよ」
「ありがとうございます」
普段は笑顔もクールなサラトちゃんが、隣の席の女の子みたいに笑ってる。
「シューズか・・・・・」
僕はサラトちゃんの普段のファッションが結構いいなって思ってた。
アスリートらしく速乾性のザラッとしたウェアに滑り止めのラバーチップが付されたくるぶしまでの短いソックス、濃いブルーのランニング・シューズ。
凛々しい、っていう形容がこれほど似合う15歳はそうそういないだろう。
帰りの電車の中で対 にするわけじゃないけど縁美のファッションを思い浮かべてみた。
縁美はサラトちゃんよりも更に背が高い。本人はひたすら秘匿してるけど。
一番よく着てるのはシンプルな白のTシャツ。それにブルー・ジーン。
アメリカの女の子がリーバイスをはくときは丈の長いTシャツを着るっていう。下着をつけないまま履いて、その代わりにTシャツをお尻の辺りまでジーンズの中に滑り込ませて下着の代わりにするとか・・・・・
実際そんなアメリカン・ガールがいるのかどうかは分からないし縁美は下着をつけないなんてことは絶対にないけど。
でも、そういうファッションが納得できてしまうフォルムなんだ、縁美は。
シューズは赤のデッキ・シューズ。
縁美いわく、スーパーのバック・ヤードでは「スリッピーでない靴」というポリシーらしい。
ファッションと実用を併せ持つ彼女。
縁美はイケてる、って僕は思う。
「ただいま」
「お帰りなさい、蓮見くん」
「ねえ、縁美の一番気に入ってる靴ってどれ」
「え」
目を一瞬おおきくしたけど、縁美はシューズボックスの奥から取り出した箱を開けた。
え。
「これなんだよね、実は」
赤地に黒のリボンがついた、ヒールの高いパンプスだった。
いわゆるビジネス・スキルと若手リーダー育成を兼ねた研修に今日から一週間通うんだ。中卒のサラトちゃんへのこれは社長の気配りだ。
「いいねいいね。キマッてるね」
「
僕は何気なくサラトちゃんの足元を見て言った。
「そのローファー、かわいいね」
「えっ・・・」
言葉に詰まるサラトちゃん。
もしかして何かセクハラまがいの発言だったろうか?
「
「ああ・・・・・・」
なるほど。
カッコいい、って言われるばっかりだったかもな。
「見て分かると思いますけどこのローファー、サイズが・・・」
大きい。
「背が高いのでヒールはやめてますけど、なんだか安全靴みたいで恥ずかしいです」
かわいそうに。
僕は具体的に褒めてあげることにした。
「似合ってるよ。紺もスーツの色と合ってるし蝶々みたいな形のリボンもかわいいよ」
「ありがとうございます」
普段は笑顔もクールなサラトちゃんが、隣の席の女の子みたいに笑ってる。
「シューズか・・・・・」
僕はサラトちゃんの普段のファッションが結構いいなって思ってた。
アスリートらしく速乾性のザラッとしたウェアに滑り止めのラバーチップが付されたくるぶしまでの短いソックス、濃いブルーのランニング・シューズ。
凛々しい、っていう形容がこれほど似合う15歳はそうそういないだろう。
帰りの電車の中で
縁美はサラトちゃんよりも更に背が高い。本人はひたすら秘匿してるけど。
一番よく着てるのはシンプルな白のTシャツ。それにブルー・ジーン。
アメリカの女の子がリーバイスをはくときは丈の長いTシャツを着るっていう。下着をつけないまま履いて、その代わりにTシャツをお尻の辺りまでジーンズの中に滑り込ませて下着の代わりにするとか・・・・・
実際そんなアメリカン・ガールがいるのかどうかは分からないし縁美は下着をつけないなんてことは絶対にないけど。
でも、そういうファッションが納得できてしまうフォルムなんだ、縁美は。
シューズは赤のデッキ・シューズ。
縁美いわく、スーパーのバック・ヤードでは「スリッピーでない靴」というポリシーらしい。
ファッションと実用を併せ持つ彼女。
縁美はイケてる、って僕は思う。
「ただいま」
「お帰りなさい、蓮見くん」
「ねえ、縁美の一番気に入ってる靴ってどれ」
「え」
目を一瞬おおきくしたけど、縁美はシューズボックスの奥から取り出した箱を開けた。
え。
「これなんだよね、実は」
赤地に黒のリボンがついた、ヒールの高いパンプスだった。