245 本家とお呼ばれならどちら?

文字数 1,036文字

 正月二日。

 縁美のスーパーの初売りは明日からなので今日まではゆっくりとできる。

 僕も縁美も本来ならば実家の神棚と仏壇に年始のご挨拶をしたいところだけど、15歳の春から断絶状態で。

 僕らをかわいそうに思ってくれたのか、なんと絵プロ鵜(えぷろう)からお誘いが掛かった。

蓮見(はすみ)どの、縁美(えんみ)どの。(それがし)の実家に一緒に行かないかね?』

 お正月らしく3人してきちんとした服装で向かった。

「いやー、正直一人で行くのはちょっと照れ臭かったさね」
「絵プロ鵜ちゃん、実家なのに?」
「そういうもんさね」

 絵プロ鵜の実家は県庁のすぐ近くにあるマンションで、今はご両親と弟の3人暮らし。絵プロ鵜が安アパートで一人暮らししてるのは漫画の制作に集中するためなんだ。

 実は僕も縁美も絵プロ鵜のご家族をよく知ってるんだけど・・・

「帰ったさね」
「まあまあまあ!」
「ようようよう!」
「姉ちゃん、お帰りー」

 僕らも挨拶した。

「ご無沙汰してます」
「あらー!蓮見くん!縁美ちゃん!」
「おおー!もう二人のうちの子も!よく来てくれたねー!」
「蓮見さん、縁美さん、姉ちゃんが大迷惑おかけしてまして」
「大迷惑とはなにかね!」

 ああ・・・・いいなあ、この感じ。久しぶりだな・・・・

 これでもか、というぐらいにもてなしていただいた。

「蓮見くんよー。今日は付き合ってもらうよー」
「あなた。あんまり飲んじゃダメですよー」
「いいじゃないか。洋太郎(ようたろう)は中学生だから飲めないし」
「お父さん。蓮見どのは無茶飲みはしないさね」
「お?なら、縁美ちゃん、どんどん行こうか?」
「おじさま。わたしも嗜む程度なので」
「うう、そうか・・・しょうがない、僕もコーラに切り替えるか・・・」

 おせちはもちろん、オードブルに串焼きにお寿司に・・・・・その後はケーキとスナック菓子各種と、オマケにプレミアム感あるコンビニアイスの数々に・・・・

「いやあ・・・我が実家ながら最高の居心地さね・・・」

 絵プロ鵜が満足この上ない幸福な顔をしていると彼女のお母さんがしみじみ言った。

「絵プロ鵜がウチにおカネを入れてくれてるから」
「お、お母さん、それは内緒さね!」
「あらあら、ごめんなさいねー」

 全員でほわあ、と幸せな気分になっていた時、絵プロ鵜のおとうさんが言った。

「さあ、じゃあ、お正月の定番やろうか」
「おじさん、なんですか?」
「蓮見くーん、お正月といえばあれだよ!人生ゲーム!」

 定番だね。

(てき)な」
「・・・・的?」
「ええとね・・・・これ!『リアルガチ大凶入りすごろく』!」
「か、帰るさね」
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