190 古墳と新墳ならどっち?
文字数 1,215文字
今日迫田 さんと一緒に出た現場は神秘の場所だった。
「古墳の裏なんですね」
「そうさ。蓮見 さんはこれがなんていう形の古墳か知ってるかい」
「前方後円墳ですね」
形式上は遺跡の発掘現場を公園のようにしてあるけれども、そこはやっぱり古代の日本の神秘を司る厳かな場所だった。
古い街の住宅街に新たに新築の家を建てるお客様の玄関まわりの工事を依頼されて訪れた現場で作業を終えた僕らは迫田さんの「観ていくかい」という誘いでもって古墳のすぐ近くにある歴史資料館を訪れた。
「ずっと昔の人たちも建築、ってものをしてたんだな」
「ほんとですね」
スタッフさんがひとりしかいない静かで小さな資料館で古墳から発掘された資料がガラスケースの中に収められていた。
「すごいよね・・・・木を切ったり削ったりするにしても今のように鋸 もなければ満足な鑿も無かったろうに・・・シンプルな道具で根気よく加工していったんだろうなあ・・・・」
迫田さんの感慨深い独白のような呟きで、長い長い年月を経て石ほどにも硬くなった柱を観た。
太い。
硬い。
重厚な。
管理人さんが説明してくれた。
「この柱は祭祀に使われたと考えられています」
「祭祀、ですか?」
「はい。土に深い穴を掘ってこの大きな柱を立てて、さまざまなことを古代のひとたちは祈ったのでしょう。狩猟の成功、コミュニティの繁栄、疫病の平癒・・・・・・・」
プリミティブな、神様への祈りだったんだろう・・・・・・・
「この遺跡からはお仏像も発掘されているんですよ。ほんとうに不思議ですよね」
神様や。
仏様への、シンプルな祈り。
素朴で、ストレートで、とても古い感情の、純粋な願い。
「これだけの、大きな柱を削るためには相当見事な木を切ったんだろうね。蓮見さん」
「はい」
「俺は、だから建築っていうものが、ただの仕事だっていう風には思えないんだ」
「ただの仕事でないなら・・・・・このずっと昔のひとたちが柱を立てたようなその気持ちを込めるものっていうことですか」
「そうだよ。この柱だってただの木材じゃない。一本一本におそらくは木の精のようなものがおわして、そうしてできあがったこの柱にはおそらく神様が降り立ったんじゃないかな」
僕は迫田さんの話を決して突拍子もないことだなんて思わない。
きっと、ほんとうにそうだったんだろうと思う。
「ただいま」
「あ、おかえり、蓮見くん。一週間お疲れ様でした」
「ありがとう。縁美 もお疲れ様・・・・・・・今日は古墳の近くが現場だったよ」
「古墳?」
「うん。すごく神秘的で・・・・なんだかココロが鎮まるような感じがして」
僕は迫田さんと一緒に観た古 の大きな柱の話もした。
縁美が言った。
「ふうん・・・・・・お墓って不思議だね」
「不思議?」
「うん。死んだひとが収まる場所なのに・・・・・ずっと後の子孫を生かすんだもん」
「子孫を生かす?」
「だって。迫田さんと蓮見くんの創作意欲を掻き立てたんでしょ?」
ほんとにそうだ。
「古墳の裏なんですね」
「そうさ。
「前方後円墳ですね」
形式上は遺跡の発掘現場を公園のようにしてあるけれども、そこはやっぱり古代の日本の神秘を司る厳かな場所だった。
古い街の住宅街に新たに新築の家を建てるお客様の玄関まわりの工事を依頼されて訪れた現場で作業を終えた僕らは迫田さんの「観ていくかい」という誘いでもって古墳のすぐ近くにある歴史資料館を訪れた。
「ずっと昔の人たちも建築、ってものをしてたんだな」
「ほんとですね」
スタッフさんがひとりしかいない静かで小さな資料館で古墳から発掘された資料がガラスケースの中に収められていた。
「すごいよね・・・・木を切ったり削ったりするにしても今のように
迫田さんの感慨深い独白のような呟きで、長い長い年月を経て石ほどにも硬くなった柱を観た。
太い。
硬い。
重厚な。
管理人さんが説明してくれた。
「この柱は祭祀に使われたと考えられています」
「祭祀、ですか?」
「はい。土に深い穴を掘ってこの大きな柱を立てて、さまざまなことを古代のひとたちは祈ったのでしょう。狩猟の成功、コミュニティの繁栄、疫病の平癒・・・・・・・」
プリミティブな、神様への祈りだったんだろう・・・・・・・
「この遺跡からはお仏像も発掘されているんですよ。ほんとうに不思議ですよね」
神様や。
仏様への、シンプルな祈り。
素朴で、ストレートで、とても古い感情の、純粋な願い。
「これだけの、大きな柱を削るためには相当見事な木を切ったんだろうね。蓮見さん」
「はい」
「俺は、だから建築っていうものが、ただの仕事だっていう風には思えないんだ」
「ただの仕事でないなら・・・・・このずっと昔のひとたちが柱を立てたようなその気持ちを込めるものっていうことですか」
「そうだよ。この柱だってただの木材じゃない。一本一本におそらくは木の精のようなものがおわして、そうしてできあがったこの柱にはおそらく神様が降り立ったんじゃないかな」
僕は迫田さんの話を決して突拍子もないことだなんて思わない。
きっと、ほんとうにそうだったんだろうと思う。
「ただいま」
「あ、おかえり、蓮見くん。一週間お疲れ様でした」
「ありがとう。
「古墳?」
「うん。すごく神秘的で・・・・なんだかココロが鎮まるような感じがして」
僕は迫田さんと一緒に観た
縁美が言った。
「ふうん・・・・・・お墓って不思議だね」
「不思議?」
「うん。死んだひとが収まる場所なのに・・・・・ずっと後の子孫を生かすんだもん」
「子孫を生かす?」
「だって。迫田さんと蓮見くんの創作意欲を掻き立てたんでしょ?」
ほんとにそうだ。