229 遭難と救助ならどちら?
文字数 1,178文字
『県内の鉄道全線が運休見込み。早目のご帰宅を』
ネットニュースでもSNSでも速報が出されている。
県内全域が暴風雪に晒されている。
「蓮見 さん。今日はもう無理だ。上がろう」
「はい」
作業場でエクステリアの建材を加工してたけれど迫田 さんが午後早々にそう言ってくれて僕もバスでアパートに帰ることにした。
作業場を出ようとすると、真直 ちゃんからメールが入った。
『助けて!』
外は細かな雪が吹き荒れていて、見ている瞬間にアスファルトの黒が完全に消え去って行く。
『どうしたの?大丈夫?』と返信するけど全く応答がない。
大袈裟にしたくなかったけど高校に電話してみたら1時間ほど前に生徒全員を下校させたと担任から言われた。
「僕、ちょっと通学路を辿ってみます。今日はバスで高校に行ったんですよね?」
「うん。あの子のことだからまたタチの悪いイタズラかもしれないが・・・」
「それに越したことはないですけど、心配ですから」
「すまない。俺も近所を探してみるよ」
高齢の迫田さんに無理はさせられない。
僕はバス停を歩いて辿りながら高校の方に向かって歩いた。
「見えない・・・」
昨日縁美 と一緒に買ったダウンパーカーを着込んでいなかったら凍えて歩くことすらできなかったろう。スキー帽を耳までかぶり、ネック・ウォーマーを口元まで引き上げて前へ進む。
吹雪、っていうのは横殴りじゃない。
車で走るとよく分かるが、常にフロントグラスに対して真正面から雪がぶつかってきて、スレスレでグラスをなぞってルーフに吹き上がっていくような感覚になる。
つまり部分部分で一方向じゃなく四方にうねっているんだ。
「あ」
居た!
それは古いバス停で、風雨をしのぐために三方を囲ったちょっとした駅舎みたいな造りだった。
制服のスカートがコートで覆われてその下から細い足首とブーツが雪で殴られている。
「真直ちゃん!」
「は・・・・・・」
彼女は僕の方を見て。
ハンカチで顔を覆った。
「ハーックション!」
え。
「うー!遅いよー、蓮見さーん!」
「なんでこんなところで」
「バスが全然来ないから途中まで歩こうと思ったらあっという間に雪ダルマになっちゃってぇ」
「誰が」
「わたしが。ひゃひゃひゃ」
笑ってるフリしてるけど・・・・・
「泣いてたでしょ」
「え!誰が!」
「真直ちゃんが」
「まさかぁ。クシャミで鼻水と同時に涙が出ただけさぁ」
まあいいけど。
「少し弱まってきたね」
まあ僕が来たところで安否確認の連絡を迫田さんにして真直ちゃんにカイロをあげて遅れながらも運行再開したバスを一緒に待つしかできないんだけど。
「まだかな」
僕がバスが来ないか見ようと立ち上がったそのダウンパーカーの背中を。
真直ちゃんに押された。
「ま、真直ちゃん!?何すんの!?」
顔面から新雪に突っ込んだ僕。
「蓮見さんも雪ダルマだー!ひゃひゃひゃ!」
真直ぉ!!
ネットニュースでもSNSでも速報が出されている。
県内全域が暴風雪に晒されている。
「
「はい」
作業場でエクステリアの建材を加工してたけれど
作業場を出ようとすると、
『助けて!』
外は細かな雪が吹き荒れていて、見ている瞬間にアスファルトの黒が完全に消え去って行く。
『どうしたの?大丈夫?』と返信するけど全く応答がない。
大袈裟にしたくなかったけど高校に電話してみたら1時間ほど前に生徒全員を下校させたと担任から言われた。
「僕、ちょっと通学路を辿ってみます。今日はバスで高校に行ったんですよね?」
「うん。あの子のことだからまたタチの悪いイタズラかもしれないが・・・」
「それに越したことはないですけど、心配ですから」
「すまない。俺も近所を探してみるよ」
高齢の迫田さんに無理はさせられない。
僕はバス停を歩いて辿りながら高校の方に向かって歩いた。
「見えない・・・」
昨日
吹雪、っていうのは横殴りじゃない。
車で走るとよく分かるが、常にフロントグラスに対して真正面から雪がぶつかってきて、スレスレでグラスをなぞってルーフに吹き上がっていくような感覚になる。
つまり部分部分で一方向じゃなく四方にうねっているんだ。
「あ」
居た!
それは古いバス停で、風雨をしのぐために三方を囲ったちょっとした駅舎みたいな造りだった。
制服のスカートがコートで覆われてその下から細い足首とブーツが雪で殴られている。
「真直ちゃん!」
「は・・・・・・」
彼女は僕の方を見て。
ハンカチで顔を覆った。
「ハーックション!」
え。
「うー!遅いよー、蓮見さーん!」
「なんでこんなところで」
「バスが全然来ないから途中まで歩こうと思ったらあっという間に雪ダルマになっちゃってぇ」
「誰が」
「わたしが。ひゃひゃひゃ」
笑ってるフリしてるけど・・・・・
「泣いてたでしょ」
「え!誰が!」
「真直ちゃんが」
「まさかぁ。クシャミで鼻水と同時に涙が出ただけさぁ」
まあいいけど。
「少し弱まってきたね」
まあ僕が来たところで安否確認の連絡を迫田さんにして真直ちゃんにカイロをあげて遅れながらも運行再開したバスを一緒に待つしかできないんだけど。
「まだかな」
僕がバスが来ないか見ようと立ち上がったそのダウンパーカーの背中を。
真直ちゃんに押された。
「ま、真直ちゃん!?何すんの!?」
顔面から新雪に突っ込んだ僕。
「蓮見さんも雪ダルマだー!ひゃひゃひゃ!」
真直ぉ!!