FORTY-THREE 新人は標準?破格?
文字数 1,294文字
「大型新人の加入だ」
超絶零細企業である僕らのビルメンテナンス会社。
三春 ちゃんの抜けた穴を社長は極めて迅速に埋めてくれた。
いや。
長大な杭を撃ち込んだという表現が適切だろう。
「サラトです」
体を折り曲げるぐらいに深くお辞儀をした彼女の髪型はヴェリィ・ショートだけど身長は縁美 ぐらいにヴェリィ・トールだ。
社長がみんなに紹介した。
「彼女は中卒だ」
僕と縁美と同じか・・・
美咲さんが質問した。
「サラトちゃん。何かスポーツやってたの?」
「はい。バドミントンやってました」
「彼女はすごいんだぞー。全中でシングルス個人で3位だ」
「え。社長、それって全国の中学生で3位ってこと?すごい!」
「ありがとうございます。やっとかっとで入賞できた、って感じでしたけど」
「もひとつ訊いていい?」
「はい。いいですよ。ええと・・・」
「美咲 よ。サラトちゃん。身長は?」
「175cmです」
「おおー。高い!それに手足長いねー」
「はい。リーチは180cmあります」
どちらかというと小柄な選手の多い日本人の中で彼女は大型新人として期待のホープだったらしい。
「スカウトとかすごかったんじゃない?どうして高校行ってバドミントン続けようって思わなかったの?」
「続けてますよ」
彼女はこう語った。
高校へ行ったつもりで三年間、ウチの会社で働いてお金を貯めてインドネシアにバドミントン留学するのだと。
「この会社は夜勤の仕事も受注して大変だと聞きましたけどその分集中的に貯蓄できると考えました」
三年で辞める前提か・・・
でも、とても大人っぽい考え方だし、何より大胆だ。
初対面で彼女の人格がビシビシ伝わってくる。
美咲さんが僕に振ってきた。
「蓮見 っち。縁美ちゃんは身長は?」
「それが・・・教えてくれないんです」
「蓮見せんぱいの彼女さんですか?」
「うん。まあ」
「身長内緒なんですね。かわいいひとですね」
なるほど。
そういう発想か。
サラトちゃんは今日はこれから社長のビジネスマナー研修を受ける。
その前に僕にこう言った。
「蓮見せんぱい。わたしの写真撮っていただけませんか?」
「え」
「ダメですか?」
ほぼ命令ぐらいの圧力だった。
アパートに帰るとメジャー付きのポスターの隣に縁美が立っていた。
大慌てでポスターから離れる縁美。
「おかえりなさい、蓮見くん」
「ただいま。縁美。今日新人の女の子が入ったよ」
「わあ・・・よかったね。どんな子?」
観せるのが一番手っ取り早い。
僕は彼女の写真を観せた。
「わ。宣戦布告だね」
「え?」
「あれ?蓮見くん、気付かなかったの?彼女のこの表情。わたしをライバル視してるね」
「会ったこともない縁美を?」
「はあ・・・蓮見くんは人のココロをとても思慮してくれるのに女ゴコロになった途端に鈍くなるんだもんなあ」
「・・・ごめん」
「ううん。それもまたあなたのいい所。でも蓮見くんはどういうわけか背の高い女の子に好かれるみたいね」
「え?」
そんな属性が、僕に?
そして僕は余計なことを言った。
「そういえば彼女、175cmだって」
「ふうん」
不意に縁美が片方の口角だけ引き上げる。
「わたしの方が高いわ」
え。
えっ!?
超絶零細企業である僕らのビルメンテナンス会社。
いや。
長大な杭を撃ち込んだという表現が適切だろう。
「サラトです」
体を折り曲げるぐらいに深くお辞儀をした彼女の髪型はヴェリィ・ショートだけど身長は
社長がみんなに紹介した。
「彼女は中卒だ」
僕と縁美と同じか・・・
美咲さんが質問した。
「サラトちゃん。何かスポーツやってたの?」
「はい。バドミントンやってました」
「彼女はすごいんだぞー。全中でシングルス個人で3位だ」
「え。社長、それって全国の中学生で3位ってこと?すごい!」
「ありがとうございます。やっとかっとで入賞できた、って感じでしたけど」
「もひとつ訊いていい?」
「はい。いいですよ。ええと・・・」
「
「175cmです」
「おおー。高い!それに手足長いねー」
「はい。リーチは180cmあります」
どちらかというと小柄な選手の多い日本人の中で彼女は大型新人として期待のホープだったらしい。
「スカウトとかすごかったんじゃない?どうして高校行ってバドミントン続けようって思わなかったの?」
「続けてますよ」
彼女はこう語った。
高校へ行ったつもりで三年間、ウチの会社で働いてお金を貯めてインドネシアにバドミントン留学するのだと。
「この会社は夜勤の仕事も受注して大変だと聞きましたけどその分集中的に貯蓄できると考えました」
三年で辞める前提か・・・
でも、とても大人っぽい考え方だし、何より大胆だ。
初対面で彼女の人格がビシビシ伝わってくる。
美咲さんが僕に振ってきた。
「
「それが・・・教えてくれないんです」
「蓮見せんぱいの彼女さんですか?」
「うん。まあ」
「身長内緒なんですね。かわいいひとですね」
なるほど。
そういう発想か。
サラトちゃんは今日はこれから社長のビジネスマナー研修を受ける。
その前に僕にこう言った。
「蓮見せんぱい。わたしの写真撮っていただけませんか?」
「え」
「ダメですか?」
ほぼ命令ぐらいの圧力だった。
アパートに帰るとメジャー付きのポスターの隣に縁美が立っていた。
大慌てでポスターから離れる縁美。
「おかえりなさい、蓮見くん」
「ただいま。縁美。今日新人の女の子が入ったよ」
「わあ・・・よかったね。どんな子?」
観せるのが一番手っ取り早い。
僕は彼女の写真を観せた。
「わ。宣戦布告だね」
「え?」
「あれ?蓮見くん、気付かなかったの?彼女のこの表情。わたしをライバル視してるね」
「会ったこともない縁美を?」
「はあ・・・蓮見くんは人のココロをとても思慮してくれるのに女ゴコロになった途端に鈍くなるんだもんなあ」
「・・・ごめん」
「ううん。それもまたあなたのいい所。でも蓮見くんはどういうわけか背の高い女の子に好かれるみたいね」
「え?」
そんな属性が、僕に?
そして僕は余計なことを言った。
「そういえば彼女、175cmだって」
「ふうん」
不意に縁美が片方の口角だけ引き上げる。
「わたしの方が高いわ」
え。
えっ!?