236 デジタル漫画とアナログ漫画ならどっち?
文字数 1,190文字
寒さで。
印刷所へ最後のページのデータを送信中に。そして首都圏も雪の影響が直撃している中、後3時間で印刷所へデータを再送信しないと本屋さん・コンビニへの配送が間に合わないという。
「はい・・・はい・・・そうかね・・・そうさね・・・」
ファミレスで大雪除雪作業の慰労ランチ会を
「今から描くさね」
「え、絵プロ鵜ちゃん、ここで?」
「そうさね。雪の中、アパートに戻ってPCで描いてたら間に合わないさね」
絵プロ鵜は縁美にそう言ってデイパックからケント紙・鉛筆とそして・・・
「そんな物まで持ち歩いてるのかい!?」
僕は思わず大きな声を上げてしまった。
絵プロ鵜はつけペンとインク瓶をテーブルの上に置いたんだ。
「ひゃひゃひゃ。大昔の小説家みたい!」
真直ちゃんが笑いながら言うと絵プロ鵜は静かに返した。
「真直どの。プロになってからはPCで描いておるが・・・
僕らのテーブルだけ異様な世界に突入する。
「コマを切り取って作業するしかないな」
僕はそう提案した。
驚くことに絵プロ鵜は自分の描いた漫画の全ページのコマ割りも構図もキャラの表情も影の付け方も背景も詳細に頭に入っているという。
だから僕の提案通りコマごとにケント紙をカッターで切り分け、絵プロ鵜が下書きからペン入れまでを終えたコマを分担して作業を進めた。
「縁美どの、そのコマはこのスクリーントーンを貼って欲しいさね」
「はい」
「蓮見どの、もしベタがはみ出たらホワイトで修正して欲しいさね」
「わかった。はみ出ないように丁寧にするよ」
そして驚いたのは、真直ちゃんが背景のペン入れをこなしたことだ。
「真直どの。見事さね。さすが一流の職人の孫娘さね」
「ひゃひゃひゃ。土木建築科の図面引きのテスト、いつも100点だからねー」
気がつくとテーブルの周囲にギャラリーが集まってた。
「ほー。緻密な作業なんですねー」
「い、今はこういうやり方はあまりしないさね・・・」
「いや、やっぱり『芸術家』なんだ、って改めて思いましたよー」
なんだか僕らも嬉しくなった。
「できたさね!」
スマホのカメラで撮って担当さんに送信した。
「ありがとうさね!助かったさね!」
「ううん、絵プロ鵜ちゃん。わたしたちの方こそ興奮したよ!」
「うん。今までも絵プロ鵜を手伝ったことはあったけど、メジャー誌の連載バリバリの奴は初めてだからね」
そして絵プロ鵜は真剣な顔で真直ちゃんに話した。
「真直どの。某のアシスタントやってみないかね?」
「イタズラしても怒らないのならいいよー。ひゃひゃひゃ」