156 バイクとロードバイクならどっち?

文字数 1,049文字

 以前サラトちゃんを誘ってクロスバイクで縁美(えんみ)と僕と3人でサイクリングしたことがあったけどもう別の乗り物って感じだった。

「ちょっと見て行きなよ」

 そう言って僕とサラトちゃんとでクリーニングにお邪魔したのは東京で言えば神田神保町にあるようなのビル一棟が丸々スポーツのデパートみたいな店舗だった。

 店長の井坂さんがサイクルショップの『マシン』を見せてくれた。

「わ・・・・・すごい。美しいですね・・・」

 サラトちゃんが感激してるのはロードバイク。

 カーボンフレームの曲線とエアロのリムに細いタイヤが接着された走るために削ぎ落とされた自転車だった。

「どう?ふたりとも興味は?」
「見てるだけで欲しくなります」
「そうでしょそうでしょ、蓮見(はすみ)さん。思い切って一台どう?値段は応相談だよ」
「ええと・・・・・・」

 30万円。

「・・・・高いですね・・・・」
「まあ、そうだね。ただ、乗ればそのスムースさに感動すると思うよ。どう?サラトさんは?バドミントンやってんでしょ?トレーニングにもいいと思うけど」
「そうですよね・・・憧れますね・・・」

 50万円。

「いきなりそこまで高いのは無理かもしれないけど、10万円ほど覚悟してくれれば質の高いマシンを選んであげられるよ」
「検討します」

 会社へ帰る営業用のバンの中でサラトちゃんがつぶやいた。

「ボーナスでなんとか・・・・」
「欲しくなった?」
「はい。カッコよかったです・・・」

 僕はまあ難しいけど確かにサラトちゃんなら絵になるだろう。

 多分、縁美も。

「ただいま」
「蓮見くん!」

 なんだ?
 縁美の目が輝いている。

「蓮見くん。バイクって興味ある?」
「バイク?」
「そう」
「ロードバイク?」
「それって自転車でしょ?オートバイの方」
「どうしたの?」

 スマホで愛好家のSNSを僕に見せる縁美。

「綺麗だ・・・・」

 縁美のセリフじゃない。
 僕が思わず言ってしまった。

「蓮見くんもそう思う?この赤がすごく青空に映えてるよね」

 ロードバイクの美しさとバイクの美しさとが重なるって思った。けど僕は縁美に言わざるを得ない。

「免許は?」
「そこなんだよね」

 でも僕は勝手に妄想した。

 長身の縁美が黒のライダースーツを着て赤いヘルメットから少しだけはみ出る髪を風に触れさせて赤いバイクをカーブで倒す。

 僕も昼間見たロードバイクのことを彼女に話す。

「そっか・・・でもバイクとロードバイクじゃ一緒にツーリングできないね」
「縁美」
「なに?」
「プロのロードバイクは最高速度80km出せるらしいよ」
「・・・・・・・だから?」
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