TWENTY-ONE ナマとゴム・・・どっちがいいのかな?
文字数 1,184文字
僕が子供の頃、お母さんはおにぎりを素手で握ってたと思う。
愛情が直接込もるのよ、って笑ってた記憶がある。
ところで縁美はスーパーで働いてる。
「縁美ちゃん。ゴム手袋の在庫がもう少ないわよ。発注しといて」
「はい、分かりました」
わたしのお母さん、ヤンチャな人だけどお料理だけは本当に丁寧にしてたよね・・・お皿を洗う時も必ず素手で洗って・・・
『お母さん。冬場ぐらいゴム手袋して洗えばいいのに。指先がひび割れちゃってるよ』
『素手の方が汚れの取れ具合がわかるんだよ』
って。
繊細なのかガサツなのか今いちよくわかんなかったけど・・・
「おい!縁美を出せ!」
「森さん、僕がお話聞きますから」
「いーや。縁美が惣菜部門の責任者だってことぐらい俺は知ってんだよ!」
「森さん、いつもありがとうございます。縁美でございます。どうされました?」
「お前んとこで買った弁当食ったら下痢になったぞ!」
「いつお買い上げ頂きました?」
「火曜日だ」
五日前か・・・・
「森さーん。冷蔵庫に入れてたの?」
「ババアには聞いてねえ!」
「まっ・・・」
「森さん。ご体調はいかがですか?」
「ふん。昨夜薬飲んでなんとか治った。けど俺の腹はおさまらん!」
「どっちも腹じゃないの」
「やかましいババア!どうせお前が便所で手も洗わねえで弁当作ったんだろが!このばい菌が!」
「えっ。ひ、ひどい・・・」
あ、これはダメだわ。
・・・・・・仕方ないわね。
「森さん!」
「な、なんだよ縁美」
「いくらお客様でも人様に向かって『ばい菌』などと言うのはわたしは見過ごせません!」
「う・・・」
「遠藤さんに謝ってください」
「す・・・・・・・・・すまねえ・・・」
遠藤さんも立派だったわ。
「森さん。わたしゃ、お年寄りの一人暮らしがどんなに大変か知ってるのよ。その中で体調崩したらどんなに不安になるか。だからわたしゃきちんと手を洗って一回一回使い捨てのゴム手袋着けて調理してるんだよ」
「ああ・・・ああ、分かったよ。すまなかった」
「ウチのお惣菜はほとんど添加物使ってません。ですので次からはお早めに召し上がってくださいね」
「ただいま」
「あ、蓮見 くん、おかえりなさい」
「あれ?おにぎり?」
「うん。明日のお弁当にと思って。具沢山おぎにり」
縁美はラップの上にご飯と具を乗せて、それをラップごとくるむようににぎってた。
「縁美。一個だけ、そのまま握ってくれない?」
「素手で、ってこと?」
「うん」
手をきれいに洗う縁美。
炊きたてのご飯を手に乗せて塩を振って具を乗せて。
アツアツの白米を見事な手際で形よく握ってくれた。
「食べてもいい?」
「いいよ。どうぞ」
白くて、でもところどころ荒れている指先をしならせる縁美の手のひらからおにぎりを受け取る。
大きめに、かじった。
「どう?」
「うん・・・・・」
僕はちょっとだけセクハラしたくなった。
「やっぱりナマがいい」
「バカ!」
愛情が直接込もるのよ、って笑ってた記憶がある。
ところで縁美はスーパーで働いてる。
「縁美ちゃん。ゴム手袋の在庫がもう少ないわよ。発注しといて」
「はい、分かりました」
わたしのお母さん、ヤンチャな人だけどお料理だけは本当に丁寧にしてたよね・・・お皿を洗う時も必ず素手で洗って・・・
『お母さん。冬場ぐらいゴム手袋して洗えばいいのに。指先がひび割れちゃってるよ』
『素手の方が汚れの取れ具合がわかるんだよ』
って。
繊細なのかガサツなのか今いちよくわかんなかったけど・・・
「おい!縁美を出せ!」
「森さん、僕がお話聞きますから」
「いーや。縁美が惣菜部門の責任者だってことぐらい俺は知ってんだよ!」
「森さん、いつもありがとうございます。縁美でございます。どうされました?」
「お前んとこで買った弁当食ったら下痢になったぞ!」
「いつお買い上げ頂きました?」
「火曜日だ」
五日前か・・・・
「森さーん。冷蔵庫に入れてたの?」
「ババアには聞いてねえ!」
「まっ・・・」
「森さん。ご体調はいかがですか?」
「ふん。昨夜薬飲んでなんとか治った。けど俺の腹はおさまらん!」
「どっちも腹じゃないの」
「やかましいババア!どうせお前が便所で手も洗わねえで弁当作ったんだろが!このばい菌が!」
「えっ。ひ、ひどい・・・」
あ、これはダメだわ。
・・・・・・仕方ないわね。
「森さん!」
「な、なんだよ縁美」
「いくらお客様でも人様に向かって『ばい菌』などと言うのはわたしは見過ごせません!」
「う・・・」
「遠藤さんに謝ってください」
「す・・・・・・・・・すまねえ・・・」
遠藤さんも立派だったわ。
「森さん。わたしゃ、お年寄りの一人暮らしがどんなに大変か知ってるのよ。その中で体調崩したらどんなに不安になるか。だからわたしゃきちんと手を洗って一回一回使い捨てのゴム手袋着けて調理してるんだよ」
「ああ・・・ああ、分かったよ。すまなかった」
「ウチのお惣菜はほとんど添加物使ってません。ですので次からはお早めに召し上がってくださいね」
「ただいま」
「あ、
「あれ?おにぎり?」
「うん。明日のお弁当にと思って。具沢山おぎにり」
縁美はラップの上にご飯と具を乗せて、それをラップごとくるむようににぎってた。
「縁美。一個だけ、そのまま握ってくれない?」
「素手で、ってこと?」
「うん」
手をきれいに洗う縁美。
炊きたてのご飯を手に乗せて塩を振って具を乗せて。
アツアツの白米を見事な手際で形よく握ってくれた。
「食べてもいい?」
「いいよ。どうぞ」
白くて、でもところどころ荒れている指先をしならせる縁美の手のひらからおにぎりを受け取る。
大きめに、かじった。
「どう?」
「うん・・・・・」
僕はちょっとだけセクハラしたくなった。
「やっぱりナマがいい」
「バカ!」