SEVENTY-THREE 励ましと慰めならどちらを?
文字数 1,281文字
日曜の夜を乗り越えることが僕らの生活のひとつのしきたりにはなってる。
けれども僕も縁美 も仕事に関しては慣れてきてるし職場での人間関係も良好なので日曜の夜は穏やかに・・・むしろふたりのゆっくりしたひとときとして楽しめているぐらいだ。
「蓮見 くん、お風呂行こ?」
サンダル履きで銭湯まで歩く。
「いい風だね」
「うん」
縁美がサンダルを履く時、僕はつい彼女の足元を見てしまう。
歩くたびに綺麗な爪先が、くん、としなって、連動して滑らかな踵がソールから離れるのがとっても情緒があるんだ。
それに・・・少しだけ、胸がドキドキする。
風呂上がり、番台を出てコインランドリーの丸椅子に座って縁美を待った。
「こんばんは」
僕はもうひとり、乾燥機の前で待っている大学生っぽい男の人になんとなく挨拶した。
「ああ・・・こんばんは」
その人はタバコを吸っている。
「ひとり?」
「いいえ」
「じゃあ一緒に出て来ないってことは女湯だ。彼女?」
「まあ、そうです」
「いいね。俺は先月、別れたんだよ」
「そうなんですか」
しばらく、無言。
「彼女は、美人?」
「・・・僕にとっては美人です」
「おいおい。そんな言い方だと彼女に叱られるぞ?はっきり言えよ」
「背が高くて、美人です」
少し、言葉の荒い人だな。
「ふうん。美人なんだ。同棲?」
「・・・・・・そうですけど」
「この近く?」
「・・・・・・」
「警戒するなよ。吸う?」
「いいえ」
「ふ・・・」
ピー・・・ピー・・・
「終わりましたよ」
「ああ。そうだな」
「・・・帰らないんですか?」
「せっかくだから彼女、見せてよ」
「嫌です」
「そう言うなよ」
ダメだな。変だ、この人は・・・
「おい、どこ行くんだよ」
「出口で待ってそのまま帰ります」
「じゃあ、俺も」
おい。
「なんなんですか、あなたは。あなたが僕の彼女を観る必要なんてないでしょ!」
「怒鳴るなよ。美人なんだろ?男なら見たいって思うじゃないか」
あ。
「えと・・・こんばんは」
「おー。彼女?」
「・・・蓮見くん、この人は?」
「知らないよ」
「キミが蓮見って言うんだ。へー。彼女、ほんとに美人だ。背、高いねー」
「帰るよ」
「お?賢いねー。彼女の名前、呼ばないねー」
無視だ。
「俺も行こっと」
こいつ!
「なんなんですか、あなたは!さっきから蓮見くんに無礼な態度で!」
縁美・・・
「彼女ー、ごめんね。怒んないでよー」
「もういいです」
え。
「ちょちょ、スマホ出して・・・なにしてんの彼女」
「もしもし・・・はい・・・事故じゃなくて事件です。ストーカーです」
「お、おい!」
「やめてあげなよ」
「・・・・・蓮見くんがそう言うなら」
縁美は警察に、ストーカーはちょうど逃げて行ったって適当に伝えて電話を切った。
「行こう、蓮見くん」
「こ、こわいんだよ!」
この男 ・・・泣いてる、のか?
「彼女と一緒に暮らしてた時は日曜の夜も、辛いんなら仕事休んでもいいよ、って彼女が声かけて慰めてくれてたから・・・」
情緒が、少し・・・
「じゃあ、わたしもあなたに言ってあげます」
「な、慰めてくれるかい・・・」
「いいえ」
?
「明日からまた仕事です。サボらずに行ってください」
けれども僕も
「
サンダル履きで銭湯まで歩く。
「いい風だね」
「うん」
縁美がサンダルを履く時、僕はつい彼女の足元を見てしまう。
歩くたびに綺麗な爪先が、くん、としなって、連動して滑らかな踵がソールから離れるのがとっても情緒があるんだ。
それに・・・少しだけ、胸がドキドキする。
風呂上がり、番台を出てコインランドリーの丸椅子に座って縁美を待った。
「こんばんは」
僕はもうひとり、乾燥機の前で待っている大学生っぽい男の人になんとなく挨拶した。
「ああ・・・こんばんは」
その人はタバコを吸っている。
「ひとり?」
「いいえ」
「じゃあ一緒に出て来ないってことは女湯だ。彼女?」
「まあ、そうです」
「いいね。俺は先月、別れたんだよ」
「そうなんですか」
しばらく、無言。
「彼女は、美人?」
「・・・僕にとっては美人です」
「おいおい。そんな言い方だと彼女に叱られるぞ?はっきり言えよ」
「背が高くて、美人です」
少し、言葉の荒い人だな。
「ふうん。美人なんだ。同棲?」
「・・・・・・そうですけど」
「この近く?」
「・・・・・・」
「警戒するなよ。吸う?」
「いいえ」
「ふ・・・」
ピー・・・ピー・・・
「終わりましたよ」
「ああ。そうだな」
「・・・帰らないんですか?」
「せっかくだから彼女、見せてよ」
「嫌です」
「そう言うなよ」
ダメだな。変だ、この人は・・・
「おい、どこ行くんだよ」
「出口で待ってそのまま帰ります」
「じゃあ、俺も」
おい。
「なんなんですか、あなたは。あなたが僕の彼女を観る必要なんてないでしょ!」
「怒鳴るなよ。美人なんだろ?男なら見たいって思うじゃないか」
あ。
「えと・・・こんばんは」
「おー。彼女?」
「・・・蓮見くん、この人は?」
「知らないよ」
「キミが蓮見って言うんだ。へー。彼女、ほんとに美人だ。背、高いねー」
「帰るよ」
「お?賢いねー。彼女の名前、呼ばないねー」
無視だ。
「俺も行こっと」
こいつ!
「なんなんですか、あなたは!さっきから蓮見くんに無礼な態度で!」
縁美・・・
「彼女ー、ごめんね。怒んないでよー」
「もういいです」
え。
「ちょちょ、スマホ出して・・・なにしてんの彼女」
「もしもし・・・はい・・・事故じゃなくて事件です。ストーカーです」
「お、おい!」
「やめてあげなよ」
「・・・・・蓮見くんがそう言うなら」
縁美は警察に、ストーカーはちょうど逃げて行ったって適当に伝えて電話を切った。
「行こう、蓮見くん」
「こ、こわいんだよ!」
この
「彼女と一緒に暮らしてた時は日曜の夜も、辛いんなら仕事休んでもいいよ、って彼女が声かけて慰めてくれてたから・・・」
情緒が、少し・・・
「じゃあ、わたしもあなたに言ってあげます」
「な、慰めてくれるかい・・・」
「いいえ」
?
「明日からまた仕事です。サボらずに行ってください」