SEVENTY-FOUR 盆踊りとHIP-HOP同じ踊るのどちらが阿呆?
文字数 1,161文字
こういうダブルブッキングが生じるとは思わなかった。
「蓮見 せんぱい。明後日ですので」
「サラトちゃんは?」
「踊ります」
ほんとだろうか。
いや、でも。
「縁美 。明後日、サラトちゃんが地元のHIP-HOPコンテストに出場するんだって。確かにバドミントンのフットワークとか見てたら激しいダンスとかと共通するかもしれないよね」
「蓮見くん。明後日、盆踊りだよ」
「え」
「毎年恒例の」
「まさか」
時期が早すぎる。
「ほら。今年は色々あって夏が短いからこうなったの。この間大家さんが回覧板回してたでしょ?」
完全に忘れていた。
「でも、いいんじゃないかな」
「ダブルブッキングだよ」
「ほら、蓮見くん。去年、盆踊りをハシゴする人の話があったでしょ」
「まさか」
「HIP-HOPと盆踊りをハシゴすればいいよ」
当日。
「うわ・・・」
「すごいね、蓮見くん・・・」
いわゆる地元若い衆のドタバタしたダンス大会を予想してたんだけど・・・衣装も曲もMCも・・・そしてダンスそのものも相当練習しているのだろう。デパートの隣にある全天候型のイベントスペースに組まれたステージでどのユニットもクールに熱く踊った。
「次、わたしたちです」
そう言ってサラトちゃんが紹介したのは一緒に踊るという女子ふたり。
「従姉妹なんですよ」
「こんにちは。観に来てくださってありがとうございます」
3人の選曲は、RUN DMCの『It’s tricky』
サラトちゃんの従姉妹たちの内のひとりがズバ抜けててフロントで激しいステップを踏む。けれどもサイドのふたりも目立ってる。
「サラトちゃん、かっこいいわね」
縁美は素直に感想を口にする。
長身で四肢が伸び切っているようなサラトちゃんのフォルムがtrrrr!という巻き舌のライムに合わせてしなると同時に遠心力と指先までの連動した動きで会場にため息をつかせている。
けれども僕と縁美はコンテストの結果を見届けるまでの時間はなく、ふたりしてダブルヘッダーの二回戦へと向かった。
盆踊りの会場はその昔は野犬が出たという竹藪の続く細い急坂を登ったところ。
お寺の境内のすぐ手前に、ぼこっ、と窪地になった不思議な広場がある。
一応小学校の校区で区切られたエリアが集結しての盆踊り大会だ。
「今日は踊りの師匠連中が一同に模範演舞をするから」
大家のおばさんいわく、夢の競演なのだという。
「縁美。今年は」
「浴衣じゃないよ」
白の無地のTシャツにブルージーン。
でも、足元は。
「下駄?」
「そう。これだけは借りたの」
ふだん僕に気を使ってか決してヒールを履かない縁美が履いているのは女性用の黒い下駄。
花模様の鼻緒に、足の指がかわいらしくフィットしている。
「一応、ペディキュア、塗ってみました」
恥ずかしそうに言うそれは、無色で透明な、縁美らしいおしゃれだった。
「
「サラトちゃんは?」
「踊ります」
ほんとだろうか。
いや、でも。
「
「蓮見くん。明後日、盆踊りだよ」
「え」
「毎年恒例の」
「まさか」
時期が早すぎる。
「ほら。今年は色々あって夏が短いからこうなったの。この間大家さんが回覧板回してたでしょ?」
完全に忘れていた。
「でも、いいんじゃないかな」
「ダブルブッキングだよ」
「ほら、蓮見くん。去年、盆踊りをハシゴする人の話があったでしょ」
「まさか」
「HIP-HOPと盆踊りをハシゴすればいいよ」
当日。
「うわ・・・」
「すごいね、蓮見くん・・・」
いわゆる地元若い衆のドタバタしたダンス大会を予想してたんだけど・・・衣装も曲もMCも・・・そしてダンスそのものも相当練習しているのだろう。デパートの隣にある全天候型のイベントスペースに組まれたステージでどのユニットもクールに熱く踊った。
「次、わたしたちです」
そう言ってサラトちゃんが紹介したのは一緒に踊るという女子ふたり。
「従姉妹なんですよ」
「こんにちは。観に来てくださってありがとうございます」
3人の選曲は、RUN DMCの『It’s tricky』
サラトちゃんの従姉妹たちの内のひとりがズバ抜けててフロントで激しいステップを踏む。けれどもサイドのふたりも目立ってる。
「サラトちゃん、かっこいいわね」
縁美は素直に感想を口にする。
長身で四肢が伸び切っているようなサラトちゃんのフォルムがtrrrr!という巻き舌のライムに合わせてしなると同時に遠心力と指先までの連動した動きで会場にため息をつかせている。
けれども僕と縁美はコンテストの結果を見届けるまでの時間はなく、ふたりしてダブルヘッダーの二回戦へと向かった。
盆踊りの会場はその昔は野犬が出たという竹藪の続く細い急坂を登ったところ。
お寺の境内のすぐ手前に、ぼこっ、と窪地になった不思議な広場がある。
一応小学校の校区で区切られたエリアが集結しての盆踊り大会だ。
「今日は踊りの師匠連中が一同に模範演舞をするから」
大家のおばさんいわく、夢の競演なのだという。
「縁美。今年は」
「浴衣じゃないよ」
白の無地のTシャツにブルージーン。
でも、足元は。
「下駄?」
「そう。これだけは借りたの」
ふだん僕に気を使ってか決してヒールを履かない縁美が履いているのは女性用の黒い下駄。
花模様の鼻緒に、足の指がかわいらしくフィットしている。
「一応、ペディキュア、塗ってみました」
恥ずかしそうに言うそれは、無色で透明な、縁美らしいおしゃれだった。